ジャカルタ 日本の電車はくぶつかん

文と写真・小嶋真人

ジャカルタを走る日本の電車をご紹介しましょう。塗装が変わって見慣れない姿になってしまっているので、元の電車の写真も掲載しています。カッコ内の数字は日本の路線図に対応しています。日本のどの路線を走っていた電車か、すぐにわかります。(2014年6月現在)

三田線 東京都交通局6000形(①)

三田線の開業以来の車両

埼玉県の秩父鉄道で、ほぼ原形(6両編成が3両編成に変更)のまま走っている

都営地下鉄・三田線の開業以来の車両として活躍してきたが、1999年に引退。2000年に東京都から無償譲渡された72両がジャカルタ入りし、活躍を始めた。冷房車が好評で、三田線時代では実現しなかった8両編成を実施(三田線は6両編成)。中間車を改造した先頭車もある。塗装はインドネシア国鉄カラーである青色地に黄色帯。

在籍数:4両編成1本、6両編成7本、8両編成3本、合計70両

東西線 東京地下鉄5000系(②)

1966年製など最古参の車両

イスティクラル・モスクをバックに

トンネルを抜けて、地上の東西線中野駅へ到着(日本)

東京地下鉄・東西線の自動列車制御装置(ATC)化によって置き換えられた5000系は、日本の政府開発援助(ODA)により、2006年にインドネシア国鉄に譲渡された。運転開始当初は10両編成だったが、消費電力が多く、変電所がしばしば停電してしまったため、現在は8両編成で運用されている。一部に1966年製の車両があるなど、最古参の車両となっている。上と同じく、インドネシア国鉄カラーの青色地に黄色帯。

在籍数:8両編成3本、保留中間車6両、合計30両

東西線 東京地下鉄05系(②)

ワイドドア車両の導入で、引退

新車に見えるが、すでに20年選手

スカイブルーの帯(日本)

朝の混雑が激しい東京地下鉄・東西線で列車遅延対策として、ドア幅を広げて乗り降りをしやすくしたワイドドア車両15000系を2010~2011年に導入した。余剰になった05系を、ジャカルタ首都圏の通勤輸送部門を子会社化したKCJ社(PT.KAI Commuter Jabodetabek)に譲渡した。デザインは新しく感じるが、すでに日本で20年余り使用されている。両数も多く、主力車両として活躍している。KCJで導入した車両なので、KCJカラーの赤色地に黄色帯に変更されている。

在籍数:8両編成8本、保留中間車16両、合計80両

東葉高速鉄道 東葉高速鉄道1000系(③)

5000系とほぼ同じ仕様

塗装変更後。2014年撮影

雨の中野駅で出発を待つ(日本)。ジャカルタに行っても、しばらくこのままの塗装で使用されていた

東葉高速鉄道は東京地下鉄・東西線に乗り入れており、開業時に東京地下鉄(当時は営団地下鉄)から譲渡された車両が1000系だった。東京地下鉄5000系とほぼ同じ仕様。このうち10両編成3本がODAで譲渡された。東葉高速鉄道時代の赤色とオレンジ色の派手な帯は現地でも受け入れられたようで、日本からの中古車両では唯一、現役当時のカラーリングのまま運行していた。現在はインドネシア国鉄カラーに変更。

在籍数:8両編成3本、保留中間車6両、合計30両

千代田線 東京地下鉄6000系(④)

5000系の後輩、7000系の兄

マンガライ駅を出発

常磐線ではJR203系と一緒に仕事をしていた(日本)

製造後20~40年が経過した東京地下鉄・千代田線6000系を新型車両の16000系で置き換えており、置き換えられた6000系の一部がKCJに譲渡された。千代田線の開業時には6000系の開発が間に合わず、先輩の5000系が代理を務めたという経緯がある。さらに7000系とは共通設計の兄弟形式だ。先輩、後輩、兄弟の車両たちがジャカルタで再会することとなった。

在籍数:8両編成7本、保留中間車14両、合計70両

有楽町線 東京地下鉄7000系(⑤)

副都心線の開業で引退

実は、赤色をトッピングしただけ。2012年、マンガライ駅で撮影

元は黄色帯(日本)

2008年に開業した東京地下鉄・副都心線は有楽町線と一部区間(和光市~小竹向原)を共用しているため、有楽町線と副都心線は同じ車両が運用されている。副都心線用の開業分として新造した10000系のほか、従来の有楽町線用の7000系の一部がワンマン・自動列車運転装置(ATO)の改造工事を行って、現在も使用されている。それ以外は10000系を追加製造して置き換えることになり、未改造の7000系4編成が2010年、KCJに譲渡された。

在籍数:4編成32両、保留中間車8両、合計40両

武蔵野線 JR東日本103系(⑥)

鋼鉄車両という問題点

2012年の訪問時、塗装を変更している最中だったが、2014年も塗装を変更中だった

武蔵野線時代(日本)。上写真は同じ車両番号。塗装を変更中

日本の中古冷房電車の有用性を認め、インドネシア国鉄が購入した初の形式となる。武蔵野線で活躍していた8両編成を4両編成化した4本を2004年に購入した。武蔵野線時代のオレンジ色のままで営業していたが、ジャカルタの日差しの強さで色が退色したため、2012年、白色地に緑色とだいだい色というJR東海・中央東線に似た塗装に変更した。現在は赤地に黄色帯の「Commuter(KCJ)カラー」化された。鋼製車のために板金保守が煩雑といった問題があり、1度の輸入で終わった。現在はデポック車庫で検査整備中。4両編成4本から部品を集めて4両編成2本になる予定だ。日本では国鉄時代に大量生産され、現在でもJR西日本の大阪近郊エリアや山陽本線で活躍している。

在籍数:4両編成4本、合計16両(4両編成2本に整備中)

東急田園都市線・大井町線 東急8000系(⑦⑧)

ステンレス製の車体

2012年撮影

10年前の東急東横線での姿。この区間は地下化されてしまった。桜木町行きも、みなとみらい線直通化で駅が廃止になり、現在は元町中華街行き(日本)

鋼鉄車で保守が煩雑だったJR103系の教訓を活かし、2005年にインドネシア国鉄が購入したのは、錆(さび)により車体が腐食しないステンレス製車体の東急8000系だった。東急東横線や大井町線で使用されていたが、新車の置き換えなどにより、すでに廃車が進んでいた。8000系を購入した後、後継形式の8500系が購入できたため、8000系は8両編成3本のみの購入となった。現在の塗装はインドネシア国鉄カラーの青色地に黄色。

在籍数:8両編成3本、合計24両

東急田園都市線・大井町線 東急8500系(⑦⑧)

KCJが初めて購入

赤色と黄色帯はKCJ購入分

一部は東急田園都市線・大井町線で今も活躍中(日本)

東急8000系が好評だったため、後継形式の8500系もインドネシア国鉄が2006年から購入を始めた。同形式は日本国内でも人気が高く、地方鉄道からの購入希望が多かったため、2009年までにインドネシア国鉄が購入したのは8両編成8本。中でも、2009年に購入した8613F編成は KCJ初の購入車両になった。KCJ保有車は、派手な赤色地に黄色帯。青色と黄色帯はインドネシア鉄道の購入分。

在籍数:8両編成8本、合計64両

常磐線 JR東日本203系(⑨)

6000系とジャカルタで再会

イスティクラル・モスクを背景に。2014年撮影

この編成はフィリピンへ行った(日本)

東京地下鉄・千代田線に直通運転するJR東日本・常磐線(各駅停車)で使用されていた。2011年、JR東日本から103系以来7年ぶりに譲渡された。同車両はフィリピン国鉄にも譲渡されたが、非電化であるため、ディーゼル機関車に牽引されて客車として使用されている。エメラルドグリーン色の帯からKCJカラー(赤色地に黄色帯)に変更。東京地下鉄6000系とは同じ路線と区間で直通運転していたので、ジャカルタで再会することになった。

在籍数:5編成40両、保留中間車10両、合計50両

埼京線・川越線 JR東日本205系(⑩⑪)

これから一大勢力を築く

これから一大勢力を築きジャカルタの顔になる

ジャカルタに行くことが決まった横浜線205系

KCJ念願の車両と言えるのがJR205系。以前、山手線から205系が撤退する時に譲渡できないかを打診してきたほど。当時はほかの路線用に改造し転用する計画であったために譲渡されることはなかったが、2013年、埼京線205系がE233系ですべて置き換えられることに決まったため、180両が譲渡された。こうして、ジャカルタの中央線・ボゴール線の一部で、10両編成での運用が始まった。現地での改造後、運用可能な本数は順次、増えていく予定だ。また、横浜線205系、8両編成22本のジャカルタへの輸出がすでに決まっている。全部で356両が輸出されることになり、ジャカルタの電車区間の大半が205系になる予定だ。

在籍数:10両編成18本、合計180両(さらに8両編成22本、合計176両が輸出予定)

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