複数のチームから関心が向く角田には「ベストな選択肢を掴んでほしい」/渡辺康治HRC社長インタビュー(2)

 2024年のF1日本GPは、金曜日のフリー走行にRBから岩佐歩夢が出走し、初日から話題を呼んだ。土曜日の予選では角田裕毅がQ3に進出し、日曜日は熾烈な争いを制して10位に入賞しホームレースで初めてポイントを獲得。日本人ドライバーに注目の集まる週末となった。

 この週末に鈴鹿サーキットを訪れたHRC(ホンダ・レーシング)の渡辺康治社長は、岩佐や角田の活躍を評価し、さらに角田に関しては、将来的に「ベストな選択肢を掴んでほしい」とエールを送る。そしてアストンマーティンとの新たな協力が始まる2026年に向けた準備についても語った。

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──今年のF1日本GPを大いに盛り上げたのは、角田裕毅(RB)選手でしたね。

渡辺康治HRC社長(以下、渡辺社長):4年目に入って、いままで以上にすごく落ち着きが出てきた印象です。無線でのコミュニケーションだけでなく、普通の会話でも落ち着いている。本当に変わりました。そこがいい結果に繋がっていると思います。

──ホンダがパートナーを組むチーム以外からも注目されていると聞きます。

渡辺社長:いろんなチームから興味を持っていただいていることは、嬉しい限りです。彼には以前から「ずっとホンダとともにいなければならないということはない」と言っているように、私はホンダ出身のドライバーがどんな形であれ、高みを目指してステップアップし、頂点へ上り詰めていく姿を見たいと思っています。そのためのバックアップはするつもりです。したがって、2025年限りでレッドブルファミリーとのパートナーシップが切れても、彼がRBにとどまっても、レッドブルに移籍してもホンダとしては問題はないし、むしろ嬉しいことです。そのうえで、2026年からパートナーを組むアストンマーティンに来るチャンスがあれば、もちろんウェルカムです。いろいろ選択肢のなかでベストなものをつかんでほしいです。

2024年F1第4戦日本GP 10位に入賞した角田裕毅(RB)

──2026年以降のホンダ・レーシング(HRC)の欧州での拠点に関するリリースも出されました。

渡辺社長:今回HRC UKのリリースを行った主な目的は、求人を開始するためです。これからそのための準備を行い、できれば今年の6月に採用を開始したいです。当然、採用するにあたっては他社からの移籍も考えられ、ガーデニング休暇もあるので、できるたけ早く進めたいです。HRC UKの場所はまだ決まっていませんが、以前あったファクトリーも選択肢のひとつです。

──今年からレッドブルのバッテリーが『RBPT』となっています。

渡辺社長:バッテリーがRBPTとなっているのは、ホンダが製造したセルをRBPTで組み立てているからです。知的財産権は譲渡していません。

2024年F1第4戦日本GP 貝原典也副社長(本田技研工業/写真左)、 渡辺康治社長(HRC/写真中央)、青山真二副社長(本田技研工業/写真右)

──RBPTにいるスタッフは、元ホンダの現地採用したスタッフですよね?

渡辺社長:2015年にF1に復帰するにあたり、ESS(エナジーストア=バッテリー)の開発を行うためのプロのスタッフはホンダが現地採用し、ホンダがパワーユニットマニュファクチャラーとしてのF1参戦を2021年限りで終了してからは、彼らはレッドブル・パワートレインズ(RBPT)に移籍しました。したがって、彼らにはホンダと同じレベルでESSを開発するノウハウはあります。ただ、2026年以降のバッテリーはまったく別物です。

──その別物のバッテリーの開発は、HRC Sakuraで行っているわけですね。

渡辺社長:ホンダは、2026年以降のバッテリーの開発はイギリスではなく、HRC Sakuraですべて行うので、今回我々が現地採用する数はかなり減ると思います。したがって、HRC UKの規模も第4期とは異なるでしょう。30人くらいの規模でまずは求人をスタートさせることになります。彼らの仕事はパワーユニットのメンテナンスが主な仕事になります。

──その業務を指揮するのは誰ですか。

渡辺社長:今HRC Sakuraにいる山嵜智博(やまざき・ともひろ)というのが、駐在で行くことになっています。副社長という立場でHRC UKの運営を行い、スタッフの採用なども行っていくことになります。

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