パレスチナの国連加盟決議案、アメリカが拒否権発動 ラファ攻撃めぐり懸念表明も

国連安全保障理事会は18日、パレスチナの国連への正式加盟の勧告を求める決議案について採決した。常任理事国のアメリカが拒否権を発動したため、決議案は否決された。

パレスチナは2012年から国連で「オブザーバー国家」としての資格を持っているが、採決には参加できない。

決議案には、フランスや日本、韓国など12カ国が賛成した。反対したのはアメリカだけだった。また、イギリスとスイスが棄権した。

反対するのがアメリカのみという事態は、アメリカがなるべく避けたかったものだった。投票に先立ち、アメリカが他の理事国を味方につけようと、水面下で激しいロビー活動を展開してたとの報道もある。

アメリカのロバート・ウッド副大使は拒否権行使について、米政府は引き続き「2国家解決」を強く支持しているが、国連におけるパレスチナ国家の地位変更は、イスラエルとの交渉による和解の一環としてのみ実現すべきだと、反対理由を説明した。

「2国家解決」とは、パレスチナとイスラエルのそれぞれの国家が隣り合って共存する案。

パレスチナ自治政府のリヤド・マンスール国連大使は、パレスチナの人々の自決権は当然そなわっている「自然権」だと述べた。

「パレスチナの人々はいなくならない。我々は消えない。パレスチナの人々を埋没あせることはできない。パレスチナの人々は歴史的事実だ。どんな大国にも、どんな暴政にも、その存在を消し去ることはできない歴史だ」と、マンスール大使は述べた。

イスラエルのギラド・エルダン国連大使は、アメリカが「偽善と政局に直面しながらも、真実と道徳のために立ち上がった」ことに感謝した。一方、決議案に賛成した他の国々について、「パレスチナのテロのほうびとして、パレスチナの国家を与える」決議案を支持したに等しいと非難した。

ロシアのワシリー・ネベンジャ大使は、アメリカが「パレスチナ人に対する真の態度を明示した」と指摘。アメリカにとってパレスチナ人とは、「自分たちの国家を持つに値しない、イスラエルの利益の障害でしかない」のだと批判した。

イギリスのバーバラ・ウッドワード大使は、 「我々は、パレスチナの国家承認は新たなプロセスの冒頭であるべきではないと考える。しかし、プロセスの最終段階である必要もないと考えている。我々は、ガザの当面の危機を直すことから始めなければならない」と述べた。

アメリカ、ラファ攻撃に再び懸念表明

アメリカ政府高官らはこのほど、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区の南部ラファへの軍事作戦を計画していることについて、あらためて懸念を表明した。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は一貫して、イスラム組織ハマスへの軍事作戦の次の段階として、ラファへの攻撃が必要だと主張している。ラファには現在、イスラエルの攻撃から逃れた100万人以上のパレスチナ人が避難している。

一方、イスラエルにとって最大の同盟国のアメリカは、ラファへの広範囲な攻撃ではなく、より標的を絞った攻撃にするよう圧力をかけてきた。

米ホワイトハウスが発表した18日の会議要旨によると、アメリカとイスラエル双方の高官級会議では、イランが先週イスラエルに行った前例のないドローン(無人機)とミサイルによる攻撃と共に、ラファが議論の焦点となった。

「両国は、ハマスがラファで敗北するのを見届けるという共通の目標で合意した。アメリカ側は、ラファでのさまざまな行動方針について懸念を表明した」と、ホワイトハウスは述べている。

両国は、専門家らによる追加協議を行うことで合意し、近日中に再会する予定だという。

米メディア「アクシオス」は、バイデン政権がイスラエルがイランへの報復攻撃を断念すれば「ラファでの作戦にゴーサイン」を出したという報道について、米政府高官が「真っ向から否定」したと伝えている。

イスラエルは、18日の会合についてコメントしていない。

アメリカはイスラエル側に対し、ラファに関するイスラエルの計画は、家を追われたパレスチナ市民を避難させ、保護するには不十分だと伝えたという。

(英語記事

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