イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回避か

(情報を追加しました。)

By Humeyra Pamuk, Phil Stewart, Parisa Hafezi

[ワシントン/ドバイ/エルサレム 19日 ロイター] - イラン中部の都市イスファハンで19日に鳴り響いた爆発音について、関係筋らはイスラエルによる攻撃だったとする一方、イラン側は抑制的で、報復の計画はないことを示唆している。中東全体に戦火が広がることを避けるための対応とみられる。

今回の攻撃は規模が限定されており、イラン側も抑制されたな反応を示している。13日のイランによるイスラエル攻撃以来、全面戦争を回避しようとしてきた外交努力の成果とみられる。

イランのファルス通信は、中部イスファハンの空港で爆発音が聞かれたと報じたが、政府当局者はロイターに、防空システム作動による爆発音でイランに対するミサイル攻撃はないと語った。

イラン国営テレビによると、3機のドローン(無人機)をイスファハン上空で確認し、防空システム発動でドローンを破壊した。防空システムが「不審な物体」を標的にしたとの陸軍司令官の発言を伝えた。

その後、イスファハンの状況は正常で、地上での爆発は起きていないと伝えている。

イランのアブドラヒアン外相によると、ドローンによる攻撃に伴う被害はなく、死傷者もいないという。イランのメディアが報じた。

<「外部から攻撃受けず」>

イランの高官は匿名を条件に、ロイターに対し、イスラエルに責任があるかどうかを疑問視し、直ちに反撃する計画はないと語った。「今回の事態は国外が原因とは確認されていない。外部からの攻撃は受けておらず、攻撃というより侵入に傾いている」と語った。

国営メディアも攻撃に対する反応は抑制的。多くの公式コメントや報道ではイスラエルに言及しておらず、国営テレビは攻撃の規模について否定的なアナリストや評論家の見方を伝えている。

アナリストの1人は国営テレビに対し、「イラン内部の侵入者」が飛ばした小型無人機がイスファハンの防空システムによって撃墜されたと語った。

<イスラエルから発表なく>

イスラエル側の発表は現時点で何もない。

関係者の1人はロイターに対して、米国は関与していないが、攻撃前にイスラエルから通告があったと話した。

ブリンケン米国務長官は19日、イスラエルがイランに反撃したとの報道について、米国は中東地域の緊張緩和に尽力しており、いかなる攻撃作戦にも関与していないと述べた。

ホワイトハウスも、コメントはないとしている。オースティン米国防長官はイスラエルのガラント国防相と電話会談した。国防総省の発表によると、両者は地域の安定維持に向けた取り組みを協議した。イランへの具体的な言及はなかった。

主要7カ国(G7)外相会合は最終日の19日、イスラエルがイランを攻撃したとの報道を受け、両国の対立拡大の回避へ引き続き努力すると表明した。

中国、ロシア、アラブ諸国も中東地域での自制を求めた。

今回の緊張はシリアの首都ダマスカスのイラン大使館が1日、イスラエルによるとみられる空爆を受けたことで高まった。イランは前週末、報復としてイスラエル本土をドローンとミサイルで攻撃。イスラエルは報復を表明していた。

アブドラヒアン外相は18日、国連安全保障理事会でイスラエルをけん制。ライシ大統領も19日、イランの領土が攻撃されればイスラエルに対し「厳しい対応」を取ると警告していた。

<核施設に被害なし>

イスファハン州にはナタンズなど複数カ所に核施設がある。国営テレビは核施設に被害はないと伝え、国際原子力機関(IAEA)もイスラエルがイランに行ったとされる攻撃で核施設に被害はなかったと明らかにした。

CNNは入手した衛星画像をもとに、イスラエルの攻撃目標になったとされる空軍基地では大きな被害はなかったとみられると報じた。テヘラン、シラーズ、イスファハンの空港が閉鎖され、イラン西部の空域で数時間にわたって航空機の飛行が停止されたが、その後解除された。

在エルサレム米大使館は「十分な注意」が必要だとして、米政府職員によるエルサレム、テルアビブ広域圏、ベエルシェバ以外への移動を制限した。

© ロイター