旧ジャニ事務所に厳しく問われる社会的責任 性被害者はSMILE-UP.救済委に「返信できずに困っている」と吐露

スマイル社の東山紀之社長(左)と藤島ジュリー景子氏(C)日刊ゲンダイ

旧ジャニーズ事務所の創業者であるジャニー喜多川氏からの性被害者への補償に対応しているスマイルアップ社(旧ジャニーズ事務所)。このほど発表した途中経過によると、補償受付窓口への申告者は981人で、うち434人に補償内容を通知。377人が合意し、計354人に補償金が支払われた。一方で、在籍および被害確認ができないとして、93人に補償を行わないと通知。救済委員会からの連絡に約200人が返信をしていないという。

「私も返信をしていない約200人に含まれると思います」と、18歳のときのジャニー氏からの被害を訴えた川井研一郎氏(55)はこう言う。

「返信は必ずします。するのですが、返信できずに困っています。提示された補償算定額では、とても社会復帰できるまでの生活費には足りない。かといって、何度も不服申し立てをすると、だったら裁判でどうぞと言われるとの話もあり、その(裁判)費用も捻出できるか分からないのです」

■届かない性被害者たちの訴えと苦悩

川井氏は元子役俳優で、1982年公開の映画「ハイティーン・ブギ」で近藤真彦の弟役を演じた。長く封印してきたジャニー氏からの性被害について、ことし1月の会見で実名告発した際、会社に迷惑をかけないようにと内々にあらかじめ伝達した上司から被害者であると社内外に言いふらされ、PTSDを発症。さらに「仕事は無理だろう。辞めた方がいい」と言われ、休職扱いに。傷病手当が出ているが、社会的身分を失いかねない不安な日々が続いている。

「スマイル社からは何度も在籍確認できないとされ、その精神的痛手も相当のものでした。現在は交渉のテーブルにはつけましたけど、返信できていない約200人の被害者たちも同じように悩み苦しみ続けているのかと思うと、やり切れません。また、スマイル社が補償を拒否した93人のうち、被害者が含まれているとしたら、どうなのでしょう。2次被害もいいところだと思います」

同社からの補償算定額に合意できないのは、想定した額よりも少額との理由が大半のようだ。窓口に訴えた被害者に対し、スマイル社の被害者救済委員会側が「合宿所ではジャニーズと書かれたトレーナーを着ていたか」「テーブルはあったか」など、引っ掛けるような質問をして、在籍確認のふるいから落としているとも伝えられる。スマイル社の東山紀之社長は被害者救済に全力を注ぐとしつつ、実際は少しでも補償対象者を少なく、額も安く済ませようとしている印象である。「当事者の会」元代表の平本淳也氏が言う。

「仮に被害者1人に補償金1000万円として、1000人に支払えば100億円にのぼります。これは決して安くはありません。しかし、故ジャニーさんから旧ジャニーズの全資産を引き継いだ元社長のジュリーさんの総資産を鑑みると、その10分の1以下とみられます。そうすると、安く、少なく済ませようと見えてしまう。ジュリーさんはそのあり余る資産をどうしようというのでしょう」

藤島ジュリー景子氏は昨年の会見に1度姿を見せただけで、以降、公の場から遠のいて久しい。東山社長も、先日BBC放送のインタビューに応じたが、日本メディアからの記者会見を求める声には馬耳東風である。

冒頭の川井氏はそんな東山社長との面会に臨んだという。毎週金曜更新のユーチューブチャンネル「河田町姉妹のおしゃべりワイドショー」で面会の様子や東山氏の対応について、明らかにしたそうだ。BBC放送のインタビューに、被害者へ浴びせかける誹謗中傷について「言論の自由」との暴言を吐いた。実際の被害者には、どう向き合っているのか。要注目だ。

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