EC決済サービス市場に関する調査を実施(2024年)~2022年度のEC決済サービス市場は28兆円超、2027年度に49兆円規模へ成長すると予測、EC市場拡大に加え、BtoB領域及びオムニチャネル・オフライン決済領域等の事業領域拡大が要因~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のEC決済サービス市場を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

1.市場概況

EC市場の拡大に伴い、EC決済サービス市場は拡大している。オンライン決済サービスプロバイダーは、決済手段の充実に加えて、BNPL(後払い)等の支払い方法を導入することで、決済サービスの向上に注力している。

また、オンラインでの決済サービスの提供に留まらず、対面決済の強化、トランザクションレンディング(※1)や送金サービスにも力を入れている。
加えて、BPSP(※2)や掛け払いといったBtoB(企業間)領域を更なる事業拡大の領域と位置付けており、取り組みが拡大している。

こうした要因等を背景に、2022年度のEC決済サービス市場(EC決済サービス提供事業者の取扱高ベース)を28兆1,662億円(前年度比120.0%)と推計し、2023年度は31兆8,120億円(同112.9%)となる見込みである。

(※1)顧客の財務情報ではなく購買・取引データ等を基に融資条件を設定するもの
(※2)Business Payment Solution Provider:カード決済を希望する買い手企業とカード決済を受け付けていない売り手企業の取引をつなぐBtoB向けソリューション

2.注目トピック~領域拡大が進む後払い決済サービス(BNPL)~

BtoC(企業対消費者)領域の後払い決済サービス(BNPL : Buy Now, Pay Later)市場(後払い決済サービス提供事業者の取扱高ベース)は堅調に拡大しており、2022年度は1兆2,609億円と推計した。

大手ECモールやリアル店舗での利用が可能となったことが市場拡大の後押しとなるとみられる。利用環境が一層整備され、ユーザーの裾野が広がるとともに、取扱高が拡大するとみる。

後払い決済サービスは高額決済と親和性が高いことから、今後、長期的な分割払いへの対応が広がるなどして、分割払いを選択しやすい環境が一層整備されると考える。従来の代引きの代替手段としての利用だけでなく、クレジットカードユーザーのニーズを獲得する可能性があり、それらのニーズを獲得する事で、後払い決済サービス市場規模は拡大が進むと考えられる。

利用環境の拡大や、決済単価の向上等を背景に、後払い決済サービス市場は、2026年度に2兆円の水準まで拡大すると予測する。

3.将来展望

EC決済サービス市場は、EC市場の裾野拡大に加え、公金領域等におけるオンライン化の進展や、BtoB領域やオムニチャネル・オフライン決済等の対象領域の拡大が進むことから、2027年度には49兆円の水準まで拡大すると予測する。

今後、新型コロナウイルスの影響で減少した旅行・レジャー等の業種における消費の回復や、NFTやWeb3.0の台頭によるデジタルコンテンツ領域の拡大等を背景に、市場は拡大すると考える。

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