社説:裏金と地方議会 忖度せずに声を上げよ

 国民の信頼を裏切った自民党の裏金事件は、政治全体への疑念を巻き起こしている。地方議員も自らの問題として向き合い、国政を突き動かす声を上げてほしい。

 4日までの参院事務局のまとめなどによると、全国66の自治体議会で、裏金事件に関する意見書が可決され、国会に送付された。

 事件解明や再発防止、政治資金の透明化などを求めており、地方議員の危機感の表れではあろう。

 ただ、全国の都道府県、市町村合わせて1765自治体の5%にも満たない。京都は府、京都市をはじめ、向日、京丹後、京田辺、長岡京の6自治体。滋賀は県だけにとどまる。

 京都府議会では、最大会派の自民中心でまとめた政治資金規正法の厳格化議論などを求める意見書が可決される一方、真相究明や企業・団体献金禁止の文言が入った他会派の意見書は否決された。

 滋賀県議会では「事案の全容を徹底的に解明する」とした意見書が提出されたが、自民会派がこの文言を除いた案を出し、双方とも可決された。

 自民地方議員は事件の解明に後ろ向きなのかと見えかねない。検察の捜査で刑事処分にいったん区切りがついたが、裏金化の経緯や使い道などの全容は依然、闇の中である。規正法の抜け穴を本気でふさぐなら、国民の目を欺く手口や動機などの調査が不可欠だ。

 それとも実態が判明すれば、地方議員にも不都合が及ぶのだろうか。自民国会議員からは裏金を「地元の議員や後援会幹部との飲食に使った」「選挙区対策に必要だった」とする証言も出ている。

 自民の京都市議と府議が、党府連主催の政治資金パーティー券の販売ノルマ超過分を還流され、政治資金収支報告書に記載していなかった問題も発覚している。

 意見書内容の忖度(そんたく)に加え、意見表明をしない大半の地方議会の背景に、国会議員との不明朗なカネや票の結びつき、自身の後ろ暗いカネの出入りがあるのなら、この空前の不祥事を断ち切る機会にしなくてはならない。

 京都市議会の意見書では、特に検討を要する法改正課題として、事務方だけでなく政治家も責任を負う連座制、政党支部などから透明性の低い後援会などへの資金移動の規制を挙げる。必要だが、不十分である。

 税金を原資にした政党交付金や報酬を受け取る以上、カネの出入りをガラス張りにし、企業・団体との癒着を招くカネ集めパーティーは国、地方とも禁じるべきだ。

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