【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。

藤原帰一氏の非論理的なコメント

2024年4月14日の『サンデーモーニング』の「風をよむ」は、岸田総理の米国訪問をめぐる「日米同盟 日本の役割」というテーマでした。

世界平和に向けた日米のグローバルな展開がますます重要視されていく中、『サンデーモーニング』の編集VTRとスタジオ・トークは、性懲りもなく、専制覇権国家に与するだけの「空想的平和主義」を主張していました。

特に残念だったのは、VTR出演の藤原帰一氏の非論理的なコメントです。

藤原帰一氏(VTR):ウクライナがロシアに侵略された。同じ運命を東アジアも被ることになるかもしれないと岸田総理は言っているが、武力による抑止力の強化・同盟の強化によって、本当に戦争を防げるかどうかはわからない。

この言説は「可能性が存在すること(possibility)」を「可能性が高いこと(probability)」と混同する【可能性に訴える論証 appeal to possibility】です。

集団的自衛権に基づく戦争の懲罰的抑止によって、戦争を100%防げるかどうかは不明ですが、同盟関係が存在しない場合と比較して極めて高い確率で戦争を防ぐことができることは、第二次大戦後の歴史が証明する確固たる経験的事実です。

日本の外交政策は日米同盟と経済外交の二本立て

藤原帰一氏(VTR):中国から見た場合には、一番近い中国にとっての脅威はアメリカと同盟を組んでいる日本。日本は戦争の最前線になる。

藤原氏は、アメリカと中国が戦争になることを前提にして、その際に日米同盟を強化している日本が戦争の最前線となると主張していますが、アメリカと中国が戦争になれば、日米同盟を強化しようがしまいが、米国の同盟国である日本は、戦争の最前線になります。

この場合に、日本が日米同盟を強化する選択をすることがゲームの解となります。もし日本が、日米同盟を破棄する選択をすれば、覇権国家である中国は安心して確信的利益である日本を侵略することが可能となります。

このような極めて初歩的なゲーム理論を展開できない論者に、外交戦略を語る能力はありません。

膳場貴子氏:藤原さんは日本の役割についてこう語ります。

藤原帰一氏(VTR):日本はアメリカの「同盟国の連携を強める」という政策に積極的に自発的に乗っているが、外交の政策がまるで見えていない。元々、日米同盟と経済外交の二本立てだったのが、日米同盟だけになったら対外政策が軍事だけになる。それは危険だと思う。

藤原氏が何を言いたいのか意味不明ですが、日本の外交政策は、現在も日米同盟と経済外交の二本立てです。明確な事実として、日本は中国と経済を断交しているわけではありません。

「対外政策が軍事だけになる」という誤った前提を用いる【ストローマン論証 strawman fallacy】は不合理です。

緊密に「外交」しているのに

膳場貴子氏:アメリカとの同盟強化をアピールする首脳会談になりましたが、抑止力を高めれば、攻撃の標的になるリスクも高まりますよね。そこに注目しないといけないなと。

膳場氏の主張は、泥棒が住居への侵入を試みている時に「住居のセキュリティを強化すれば、泥棒の標的になるリスクが高まる。そこに注目しなければいけない」と言っているのと同じです。途方もなくおバカな発言です(笑)。

膳場貴子氏:藤原喜一さんがおっしゃるような外交、対話の重要性をあらためて感じましたね。

藪中三十二氏:岸田氏はニコニコ笑っている時ではない。今回のアメリカの戦略は、アメリカ一カ国では中国と向き合えないと。世界中いろんなことがある。その戦略は日・豪・フィリピンと一緒になって向き合おうと。中国と厳しく向き合う、中国と対決するという時に、日本を持ち駒のように使う面がある。グローバル・パートナーと言われているが、例えば、南シナ海。あそこで今後何かがあった時に「日本来てくれよ」ということになる。「うちはいけません」と言えない状況だ。外交があってはじめて平和が守られる。そこが全然見えていない。

これもどうしよもない【ストローマン論証】です。膳場氏も藪中氏も日中の首脳や政府要人が平素から緊密に会談していることが全然見えていないようです(笑)。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/index.html

また、南シナ海で何か紛争が生じたときに、それに日本が参加するかしないかは、日本の安保法制で規定されている「事態」によります。けっして断れない状況にはありません。

なお、ホワイトハウス公式晩餐会や米国議会においてニコニコ笑いながらの岸田氏の演説は見事でした。この明るいスマイルこそ外交に他なりません(笑)

みたらし加奈発言に連続ツッコミ

みたらし加奈氏:今の状況を見ていると、平和のための外交というよりは戦争するための外交なんじゃないかと思ってしまう。

何を言っているのかさっぱりわかりません。「戦争をするための外交」って何なのでしょうか(笑)。

みたらし加奈氏:足元の政治を見てみると、日本は自然災害がいつ起こるかわからないし、既に起きた自然災害に対して復興もままならない状況だ。経済も不安定で物価も高くなっていて生活に不安定な人達もたくさんいる。16.6%の支持率が反映しているのは、やっぱり足元の政治の不安定さだ。そのような状況の中で米国と対等にやり合えるのか。同盟はそもそも対等な関係性を気付いていくことが必要だが、これだと依存関係にもなっていく。

日米同盟の論点はどこに行ったのでしょうか。支離滅裂過ぎるウルトラ・アクロバティックな論点逃避です。

みたらし加奈氏:やっぱりその状態でこういった外交を繰り返され、防衛政策の転換が謳われることに凄く不安を覚えている方も多く、私自身も不安を感じている。

内政と外交は別の問題です。内政が不安定であることを根拠に外交を行うことを否定するというみたらし氏のコメントのクオリティの低さには不安を覚える人も多いと思います。私自身も不安を感じています。視聴者の利益のために、番組はもう少しマシなコメンテーターを起用した方がよろしいかと思います。

「アメリカ軍の二軍」ってなんですか?

青木理氏:「日米の一体化」とか「グローバル・パートナー」とか、聞こえはいいが、要するにアメリカ軍の二軍になるんじゃないの。そうなって行くだけの話じゃないの。

「アメリカ軍の二軍」とは何なのでしょうか。根拠を示さずに公共の電波で日本を侮辱するのは極めて悪質です。

青木理氏:グローバル・パートナーというのであれば、地位協定の話や、首都圏でアメリカ軍が押さえている空域の問題とか、沖縄に集中している基地の問題とかを、やっぱり言うべきことを言う、しかし協力すべきところは協力するというのが本来のグローバル・パートナーだ。

今回の日米会談の主要な論点は、グローバル・パートナーという地球規模の平和を希求する同盟であって、日本国内におけるローカルなパートナーシップの問題は別の論点です。

根拠なく日本を侮辱するだけでなく、論点を不合理に転換するような悪意ある時代錯誤の反日左翼コメンテーターを起用している限り、『サンデーモーニング』はますます偏狭な方向に進んで行くものと危惧する次第です。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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