南海トラフ巨大地震、震度6弱の四国地震の「約1000倍」震度7の能登半島地震の「約32倍」のエネルギー… ハザードマップの確認や日頃から備えを 気象庁「豊後水道の地震について」政府広報「災害時に命を守る一人ひとりの防災対策」国土交通省「重ねるハザードマップ」

2024年4月17日午後11時14分頃、愛媛県、高知県で最大震度6弱、地震の規模を示すマグニチュードは6.6、豊後水道深さ39kmを震源とする地震があった。

愛媛県の愛南町、高知県の宿毛市で最大震度6弱を観測したほか、中部地方から九州地方にかけて震度5強~1を観測し、愛媛県、高知県では観測史上最大の地震となった。

また、気象庁によると、今回の地震で被災した地域では、大地震発生後に同程度の地震が発生した割合は1~2割あることから、揺れの強かった地域では、地震発生から1週間程度、特に今後2~3日程度は、最大震度6弱程度の地震に注意する必要があるとのことだ。

加えて、今回の地震は「南海トラフ地震の想定震源域内」で発生した地震だが、マグニチュード6.6であり、南海トラフ地震との関係を調査するマグニチュードの基準であるマグニチュード6.8未満の地震だったということだ。

もう少し今回の地震について詳しく見てみる。

愛媛県、高知県で最大震度6弱の地震、そのメカニズムは…

気象庁によると、今回の地震は、フィリピン海プレート内で発生した、東西方向に張力軸を持つの地震とのことだ。日本列島で発生する地震のタイプのうち、陸のプレートに海のプレートが沈み込み、その海のプレートの深いところで発生した地震のようだ。

日本の内陸地震では、中部地方から西日本にかけては「横ずれ断層型」が多く、東北地方などの北日本では「逆断層型」が多いと言われているが、今回は「縦ずれ断層」のうち、上盤側がずり下がる場合、つまりひっぱる力が働く「正断層」のタイプだ。

松山地方気象台の竹添竜也防災管理官は「陸側のプレートの浅いところで、今回と同じような(マグニチュード)6.6の地震が発生すると、人が住んでいる直下ということになり、揺れによる被害が大きくなるが、震度6弱ではあったが、広範囲に震度6弱を観測するようなことにはならなかった」とコメントし、結果的に、観測した震度の大きさに対し比較的少ない被害で済んだ可能性があると指摘した。

体育館で天井や窓ガラスが落下、もし日中だったら…

実際、震度6弱を観測した愛南町では、地震に驚いた70代女性が足にけがをしたほか、震度5強を観測した宇和島市では、90代男性が左手にけがをして搬送されるなど、人命に関わるような重大な被害は、現時点では判明していない。

一方、愛南町柏小学校の体育館で天井や窓ガラスの一部が落下、宇和島市内の県道では落石のほか市総合体育館では天井が崩落する被害も発生していて、日中の人が動く時間帯であれば、もっと大きな被害になっていた可能性は決して低くない。

「切迫性が高まっている」過去の南海トラフ巨大地震から約80年

気象庁によると、南海トラフでは過去繰り返し大規模な地震が発生していて、正平(康安)地震(1361年)以降、南海トラフで起きた6回の大規模地震の平均発生間隔は117年だが、実際に発生した地震の発生間隔は約90年から約150年とばらついていて、過去には最短で約90年の間隔で大規模地震が発生した例もあり、昭和の東南海・南海地震(1944年・1946年)の発生から約80年が経過、次の大規模地震発生の「切迫性が高まっている」とのことだ。

過去に南海トラフで発生した巨大地震のマグニチュードは以下のとおり。
1707年 宝永地震 M8.9
1854年 安政東海地震 M8.6
1854年 安政南海地震 M8.7
1944年 昭和東南海地震 M8.2
1946年 昭和南海地震 M8.4

ただ、先の気象庁の会見によると、今回の地震でもって、現時点で南海トラフ巨大地震が発生する可能性が“急激に高まっている”というわけではなく、そもそも南海トラフ巨大地震とはメカニズムからして違うもの、とのことだ。

愛媛県・高知県地震の約1000倍、能登半島地震の約32倍のエネルギー

マグニチュード(M)と地震波の形で放出されるエネルギーとの間には、通常、マグニチュードの値が1大きくなるとエネルギーは「約32倍」に、マグニチュードの値が2大きくなるとエネルギーは「約1000倍」になるという関係がある。

今回、愛媛県・高知県で発生した地震でM6.6、2024年1月1日に発生した能登半島地震がM7.6だったことを考えると、仮に南海トラフ巨大地震のマグニチュードがM8.6だった場合、愛媛県・高知県の地震の約1000倍、能登半島地震の約32倍に相当する。

迫る巨大地震、私たちに今できること…

では、私たちがかつて経験したことのないような巨大地震に対してできることは何だろうか…。気象庁や政府広報のホームページでは、日頃からの備えを周知している。

・備蓄・非常持ち出し品の準備
⇒水や食料は最低3日分、非常用の充電器、毛布やタオルも
・安全スペースの確保
⇒室内になるべくものを置かない「安全スペース」
・周囲の状況の確認
⇒普段とおる道に危険な場所やものがないか確認
・連絡手段の確認
⇒あらかじめ家族で話し合い
・家具の固定
⇒倒れないように固定
・訓練への参加
⇒積極的に参加を

また、津波に備え、津波から身を守るため、具体的な行動として以下を挙げている。

・危険な場所を確認
⇒津波に襲われるおそれのある場所をハザードマップで確認
・避難場所を確認
⇒津波避難場所や避難ビルがどこにあるか複数個所を確認
・訓練に参加しよう
⇒実際に避難経路をたどってみるなど、積極的に訓練へ参加

「重ねるハザードマップ」でまとめて確認 自分が住む場所は揺れやすい!?液状化のリスクも…

ハザードマップについては、国や都道府県、市町村がそれぞれ公表しているが、近隣の都道府県や市町村の情報は別のページに掲載されているなど、まとめて確認することが難しい。

そこで、国土地理院が公開している「重ねるハザードマップ」が便利だ。

災害種別に、洪水や土砂災害、高潮、津波、地形分類などを選択することで、それぞれ別個の情報を地図上に重ねて表示できる。

今回の地震で言えば、地形分類を選択することで、「土地の成り立ち」と「この地形の自然災害リスク」を確認できる。

例えば、土地の成り立ちが「氾濫平野」の場合、
◆土地の成り立ち(起伏が小さく、低くて平坦な土地。洪水で運ばれた砂や泥などが河川周辺に堆積したり、過去の海底が干上がったりしてできる)
◆この地形の自然災害リスク(河川の氾濫に注意。地盤は海岸に近いほど軟弱で、地震の際にやや揺れやすい。液状化のリスクがある。沿岸部では高潮に注意)
と表示される。

ただし、上記の自然災害リスクはあくまで一般論であり、個別の場所のリスクを示しているわけではない点には注意が必要だ。

地震や津波への備えについては、そのどちらについても訓練が重要視されてる。事前に訓練を行うことで、とっさに身を守る行動について学ぶなど、実際に体を動かして、もしもの場合の行動を経験することができる。

一方、ハザードマップの確認は今すぐにでも実施できることなので、この機会に自分の住む都道府県、市町村の情報を確認してほしい。

突然襲ってくる地震。自分や家族の身を守るため、そして迅速な避難、安全確保を行うため、常日頃から備えることが重要だ。

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