ステージ4がん告知の森永卓郎66歳が緊急提言「発展途上国・日本」で生き抜く経済学「土地30坪」と「電気代ゼロ」

撮影/小島愛子

「たぶん、来年の桜は見られない」そう医者から告げられたら、あなたなら、どうしますか。昨年11月、主治医から、ステージ4のすい臓がんであると告知されたのは、テレビの情報番組のコメンテーターとしてもおなじみの森永卓郎氏。
日本の3大タブーとされるジャニーズ事務所の性加害、財務省の財政緊縮主義、日本航空123便の墜落事故について迫った書籍『書いてはいけない』(三五館シンシャ)が14万部を超えるベストセラーとなっている経済アナリストだ。
柔和な笑顔を浮かべながら政権の暗部に鋭く斬り込む一方で、著書『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)では、経済格差に苦しむ我ら庶民に対して、どう生きたらいいのかを懇切丁寧にアドバイスする。そんな66歳の硬骨漢は、「日本は10年以内に世界GDPランキングでベスト10から落ち、30年先には完全な発展途上国になる」と予言する。そんな日本において、我ら庶民が生き残る、そして楽しく暮らすためには、どうしたらいいのか? ラジオの生放送終了後の同氏に聞いた。(全5回/第4回)

昭和恐慌の悪夢再び「4人に1人が失業者に」

――ベストセラー『年収300万円時代~』などの著作などをはじめ、我ら庶民が日本でどう暮らしていけばいいか、アドバイスしてくださっている森永さんですが、「10年以内に日本が世界のGDPランキングでベスト10から落ちる。30年後には完全に発展途上国の仲間入りに」といった予測をされています。そのときに日本は、我ら大衆はどのようにして、自分の生活を守っていけばいいのでしょうか。

デフレの中で岸田政権が、財政と金融の同時引き締めに出たんですね。これは1929 年に、浜口雄幸っていう総理大臣が同じことやって昭和恐慌を起こしたわけですよ。4人に 1人が失業者になって、就職先がまったくなくなる。大学は出たけれど、っていうのが流行語になる。
その中で、我々はどうやって生きていったらいいんだろうっていうのは、コロナ以降、仕事が暇になって、私なりに「一人社会実験」をしてきたつもりなんです。

一人社会実験「30坪の畑で家族みんな食える」

それは、大都市を捨てて、私はトカイナカって呼んでいるんですけど、都会と田舎の中間に移り住むこと。うちはね、ここから 90分ぐらいなんですけど、坪50万円くらい。けっこう高くなっちゃったんです。だから、もう少し足を伸ばして、うちより30 分ほど先に行くと、坪5万だから、100坪買っても500万円なんですよ。
ものすごい自然環境のいいところです。うちも最初は良かったんですけど、最近バンバン家が建つようになっちゃって。畑は残ってますけど。
そこに行って、まず食いもんは自分で作る。そのために私もずいぶん本を読んだんですよ。でも、どこにも書いてないんです。何坪の畑をやれば、家族みんな食えるのかっていうのが。実際に実験してみたら、 1アール=30坪あれば十分、食えるんですよ。

――そこで野菜とお米を作れば自給自足の生活になるんですね。

米は田んぼがないとダメですけど、イモとかそっち系は作れるので、日当たりさえ良ければ 30坪で十分なんですね。これで食費はもう半分以下になりましたし、あと、うちは東京電力に売っているんですけど、太陽光パネルで発電して買い取ってもらって、夜とか冬場は厳しいんですが、それで十分、電気代は実質ゼロになるわけです。食費と電気代がゼロだと、実は1か月の生活費って10万かからないんですよ。
「全然いけるじゃん」ってのが実験結果として分かったんです。何がいいかっていうと、金のために歯を食いしばって、やりたくもない仕事をやり続けなくていいこと。やりたくない仕事をやるほど不幸な人生はないんですよ。
それと、畑をやって何がわかったかって言うと、ものすごい楽しいんです。なぜ楽しいかっていうと、全部、自分で決める自由なんですね。どういう土を作るかっていうのと、どういう種や苗を植えるのか? 支柱をどう立てるのか、芽かき(ジャガイモから何本もの茎が出る時期に、よりよいものだけを選んで、他の茎を抜きとってしまう作業)をどうするのか、追肥をどうするのか? それから鳥対策、動物対策どうするのか? というのを考えると、もう毎日、頭がフル回転。農業って知的な作業なんですよ。

畑に行けなくなって「隣のオヤジが全部やってくれた」

「県庁はシンクタンク。野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとかと違い、皆さまは頭脳、知性の高い人たち」とか言って静岡のバカな知事が辞任することになったんですけど、「あいつ農業やったことないんだ」って、私は真っ先に思いましたね。
農業は知恵比べなんです。しかも、相手が自然なんで、本当に思い通りにならないんですよ。私はまだ下手クソなんで、その収穫まで自分のプラン通りにいく確率って、今でも半分ぐらいしかないんです。

――なるほど。

でも、だからこそうまくいったときの喜びが半端じゃないです。

――病気になられて以降、畑のほうは大丈夫なんでしょうか。

畑に全然、行けなくなって、土地を借りている地主に顔向けできねーなって思っていたんですが、先週、畑行ったら、もうスナップエンドウは植わってるわ、イモは植わっているわ。もうちゃんと畝が立っていて、隣のオヤジが全部やってくれていた。まあ、基盤はできていたんですけど。
あと、もう3週間ぐらいたったら、トマトとかきゅうりとかナスとか、あとスイカとかゴールデンウィークちょっと前ぐらいに全部植えて、今年は超ラクです。そんなこと言うと、怒られちゃうけど(笑)。みんな支え合っていて、私のことも支えてくれるんですよ。それが大都市にはないんですね。
東京のマンションに事務所があるんですが、周りに誰が住んでるのか、一人も知りませんし。

もりなが・たくろうプロフィール
1957年、東京都生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。1980年に東京大学経済学部を卒業後、日本専売公社(現在のJT)に入社。その後、日本経済センター、経済企画庁、三和総合研究所などを経て、2006年から獨協大学経済学部教授に。昨年、財務省の暗部に斬り込んだ『ザイム真理教』(三五館シンシャ)がベストセラーに。今年3月には日本の3大タブーとされるジャニーズ事務所の性加害、財務省の財政緊縮主義、日本航空123便の墜落事故について迫った書籍『書いてはいけない』(三五館シンシャ)が14万部を超えるベストセラーとなっている。2023年12月、ステージ4のがん告知を受ける。

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