カラスミは、正月の肴だけにあらず!?

もうじき桜が開花しそうな時季、京都『ととよし』で供されたカラスミに驚いた。

カラスミといえば、すっかり年末年始の肴と思い込んでいたからだ。

「出始めの正月より、今ぐらいの方が仕入れ価格も安いですし、手に入りやすい」

と、店主の杉井雄大さん。何でも各店が旬の先取りを目論み、年末年始はボラの卵の壮絶な争奪戦が繰り広げられているのだとか。

確かに、今はなんでも早い。スーパーでは早くも枝豆が並び出している。旬の物を食べると健康になるだとか、長生きするとか、まことしやかに言われていることだが、旬の時期はまだ先では?と思う物が多い。

先取り=旬ではない=意味ナシ?などと思っていると、「山菜も早い。しかも入手困難な上に、非常に高値で取引されています」と。

昔は山菜など、買って食べるようなものではなかった気がする。ウドやタラの芽は、雑草のようにあっちこっちに生えていて、子供の頃のお使いは、「買ってきて」ではなく「採ってきて」だった。

「やはり数が出回って一番おいしい時が旬。ウチでは本来の旬にこだわりたいですし、昔は当たり前だった食生活の慣習を、料理を通してお伝えできたらと思っています」

春先のカラスミ。早くも再会できた喜びに加え、しみじみ思う。今かぁと。

『ととよし』

住所/京都府京都市中京区甘露町666

※こちらの記事は、関西の食のwebマガジン「あまから手帖Online」がお届けしています。

あまから手帖Online=https://www.amakaratecho.jp/

© 株式会社BCN