仏大統領への手紙が流出「他国でのプレーは望んでいない」五輪米代表入りエンビードの“裏切り”騒動

4月18日、USAバスケットボールは7月上旬より開幕する「パリ2024オリンピック」に向けて、男子アメリカ代表の内定選手12名を発表した。レブロン・ジェームズ、ステフィン・カリー、ケビン・デュラントなど、世界が認める現役最強の布陣で望むチームUSAだが、成長著しい欧州バスケに対応するべく、本大会では屈強なビッグマンたちも勢揃い。そのスターター候補となるのが、フィラデルフィア・セブンティーシクサーズの大黒柱、ジョエル・エンビードだ。

2023年のMVPは、最近までフランス代表とアメリカ代表のどちらでプレーするかの選択を迫られていたが、最終的にはドリームチームでの参戦を決断。NBAスターたちの熱意、アメリカ市民である息子のためなど、星条旗を背負う理由は複数あるが、一方のフランス陣営は「多くの時間と労力を費やした。失望は隠せない」とコメントし、ルディ・ゴベア、ビクター・ウェンバンヤマと世界最強インサイドを形成する夢は消滅した。

パリ五輪アメリカ代表入りが内定した12名[写真]=Getty Images

しかし、ここに来て、エンビードの“裏切り行為”が明らかになった。フランスの大手スポーツメディア「RMC Sport」は、2021年10月28日にエンビードからフランスのエマニュエル・マクロン大統領に送られた手紙を入手。そこにはフランス国籍取得の希望と共に、同国でプレーしたいという明確な意思表示がされていた。

以下が、エンビードの思いが綴られた書簡の内容の抜粋である。

大統領閣下へ

バスケットボールをはじめとするスポーツの発展に対する閣下の真摯な関心を存じ上げております。私がこの手紙を執筆している理由は、まもなく開幕するNBAについてのものではございません。

私がお伝えしたいのは、フランスについてのことです。私は幼少期の大部分をアメリカとフランスで過ごし、1994年に首都ヤウンデで生まれたため、カメルーンも私のアイデンティティの重要な一部です。しかし、フランスが大きな存在であることに変わりありません。実際、私の一部家族はフランス人であり、時間が許す限り、クールトリーやクールクーロンヌに住む祖母や、エヴリーに住むいとこの元を訪れています。2009年7月には1カ月ほど首都で夏のバケーションを楽しみました。その後も定期的にパリを訪れており、現地に恒久的な第二の家を所有したいと考えています。

また、フランスバスケットボール連盟との話し合いの末、私の選択は決まりました。フランスへ帰化し、レ・ブルーへの選出資格を獲得する手続きを進行したいと考えております。私は他国の代表チームでプレーすることを望んでいません。私はこれまで、どの国の代表チームのジャージにも袖を通したことがありません。次回の主要な国際大会、特に2024年のオリンピックおよびパラリンピックでフランスの一員として参加することは、私にとって大変な名誉です。

私の要求の厳粛さや、それを表し、意味するもの、そして国籍付与における基準は重々理解しています。したがって、これらの取り組みが成功するために、あなたからの支援を賜りたいです。

私は閣下およびその職務を支持することで、フランスバスケットボールチームおよびそのリーダーたちと共有する野望に貢献します。

私の要求に対するご配慮に感謝し、最大の敬意を表して、大統領閣下にお願い申し上げます。

ジョエル・エンビード

昨季NBAのレギュラーシーズンMVPを受賞したエンビード[写真]=Getty Images

この手紙が送られた翌年の7月、メディア各社はエンビードが正式にフランス国籍を取得したことを報じた。自国開催のオリンピックでアメリカをはじめとするライバルたちを退け、悲願の優勝をもたらすうえで、シクサーズの背番号21が加入することは夢の実現を大きく前進させるものだった。

しかし、エンビードはフランスの元首にまで忠誠を誓ったにもかかわらず、最終的にレブロンやカリーとの共演を選択した。「RMC Sport」のSNS投稿のコメント欄には、「法的ならびに道徳的に許容されることなのか」「オリンピックに出場するための安全確保であり、アメリカでプレーできると知ってその機会に飛びついた」「多くの尊敬を失った」など、さまざまな意見が寄せられている。

この書簡がリークされたことにより、フランス国民はアメリカ代表としてプレーするエンビードに手厳しい対応をするだろう。

文=Meiji

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