令和の人気TikToker集団「午前0時のプリンセス」はなぜバズった? YouTubeでの成功と苦悩を明かす

「この人とならなんでもできる」と思える相手との出会いは、人生でそう何度も訪れない。

4人組の動画クリエイター・午前0時のプリンセス【ぜろぷり】(以下、ぜろぷり)は、そんな奇跡的な出会いから生まれたガールズグループだ。配信者の放送事故を模したリアルなコント動画で知名度を上げたmomohaha、男性ながら女性顔負けのビジュアルを誇る聖秋流、寸劇やモノマネなどシュールなネタを得意分野とする脇腹が痛い大内、プロダンサー・振り付け師として活動するJESSICA。それぞれが人気TikTokerだったこともあり、グループ結成時には多くの反響を呼んだ。

今回はそんな「午前0時のプリンセス」にインタビューを実施。運命的な出会いから、マイノリティな自分との向き合い方まで聞いた。

・グループ結成は「奇跡のタイミングだった」

ーーTikTokを始めYouTubeでも大人気の午前0時のプリンセスですが、改めて、みなさんはなぜグループを結成することになったのでしょうか?

momohaha:みんなとはTikTok LIVEがきっかけで出会ったんです。ジェシカはダンサー、ほかの3人はTikTokですでに活動をしていました。TikTokのコラボ配信でお互い仲良くなって、そのあとすぐにユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、USJ)に遊びに行ったんです。

聖秋流:最初に私と大内とmomohahaの3人のライングループがあって、そこに急にジェシカが入ってきたんです。「私も行くことになった!」って。

ジェシカ:当時、私から見た3人は「TikTokでよく見るすごい人たち」って感じだったんですよ。でもみんな人見知りなんで、初めて会ったときは多分緊張してたと思います(笑)。

ーー初対面でUSJに行ったのはすごいですね(笑)。

聖秋流:いま思えば、急遽加入したジェシカがいなかったらここまで来てなかったのかなと思います。いろんな縁が重なって、奇跡のタイミングだったんですよ。

momohaha:USJで遊んでるときに4人でTikTokを撮影したんですけど、その動画が1日で何十万回も再生されたんです。

大内:大バズりしたよね。コメントも「この組み合わせめっちゃ好きなんだけど」って声が多かったんです。

momohaha:遊んで帰ってからも自分のなかで余韻がすごくて。「こんなに人生で楽しいことがあるんだ……!」と思いました。

ーー急激に仲が深まったんですね。YouTubeはどのタイミングで始めたんですか?

momohaha:私個人ではマスク詐欺のショート動画でバズったりしていたんですけど、自分の素がわかるような動画はあまり出してなかったんです。いつもなにかのキャラを演じているような動画しか投稿してなくて。でもYouTubeグループだったら自分を出すことができるから、誰かとやりたいなと思ってました。そう考えたときに、私のなかでこの3人しか考えられなかったんです。

それで3人に「もしよかったら一緒にYouTubeやらない?」って誘ったらすぐ返事が来て、グループになりました。

ジェシカ:私もちょうどYouTubeやりたいなって思ってたんです。そのタイミングでももちゃんから連絡が来たので、「絶対やろ!」って秒で返信しました。

聖秋流:私たちも、ずっと4人でなにかやりたいなと思ってたんですよね。

・「1万人いかないの!?」想像以上に“別物”だったTikTokとYouTube

ーーみなさんは個人活動により既に人気があったと思います。やはり、グループ活動を始めてから、順調に登録者数も増えたのでしょうか?

聖秋流:8000人くらいで一回止まったよね。

ジェシカ:「1万人いかないの!?」ってザワついて(笑)。私はぜろぷりを始めたとき、YouTubeのためにダンサーとしてのお仕事を全体の半分くらい辞めてたので焦りました。YouTubeもTikTokも一緒だと思ったんですけど、SNSという括りが一緒なだけで中身は全然違いました。また別にこの4人で新しいものをつくりあげなきゃいけないんだって、当時は思い知らされましたね。

聖秋流:予想ではいまごろ100万人いってたよね(笑)。

momohaha:そうそう。視聴者さんも、ぜろぷりと個人のTikTokとは違うものとして見てる感じでした。「前から見てたこの子がいるからフォローしよう」じゃなくて、「この子は好きだけどグループになったらわからないから、とりあえずフォローはしない」っていう人が多かったんだと思います。

聖秋流:でもその分、YouTubeを見てくれてるファンの人は濃いなと感じています。

ーーTikTokとYouTubeは、どのように使い分けていますか?

momohaha:ショート動画はおもしろさをしっかりまとめないといけないので、構成はかなり固めています。そこをしっかりとやらないと見てる側も飽きちゃったり、露骨に再生されなかったりするので、ショート動画はけっこう頭も体力も使いますね(笑)。

聖秋流:ショート動画はバズることを目標に投稿しています。長尺動画は私たち自身が楽しんでいる様子を見てもらうことを考えるけど、ショート動画は私たちを知らない人も含めて、万人ウケするものを目指していますね。

momohaha:流行ってるもののなかに自分たちらしさを出しつつ、いかにバズらせられるかを考えてます。

大内:実際、ショート動画が視聴者さんにとって知ってもらう入口になってるなって感じるよね。

聖秋流:新規獲得って感じですね。

大内:ショート動画の印象のまま、長尺動画を見られていることもけっこう多いです。たとえばTikTokでフィリピンママのモノマネをするシリーズがバズったんですけど、そのあとYouTubeを見て「本当に日本語話せるんだ!」っていう反応があって、面白いなと思いました。

ーーYouTubeは、どんな動画が人気なのでしょうか?

momohaha:4人とも体型や身長がバラバラなので、個性が際立っている動画は反響が大きいですね。たとえばメンバーのダイエット動画がすごく再生されたんですけど、みんな体型がバラバラだから視聴者さんが参考にしやすかったのかなと思います。

聖秋流:YouTubeの企画は、私たち自身が楽しめるかどうかをすごく大事にしていますね。

ジェシカ:誰かひとりが嫌だなって思うものは撮らないようにしています。YouTuberってけっこう無理したことをするみたいなイメージもあると思うんですけど、私たちは私たちがおもしろいって思うものをお届けしたいんです。

聖秋流:でも、いまだにどんなチャンネルにしていくのかはずっと話し合ってますね。

大内:ファン層もバラバラだったし、各々やってきたことも違うから難しいよね。

momohaha:最初はとりあえず、YouTuberの定番企画を撮っていたんですけど、そこからだんだん自分たちでどんな感じにしていったらいいのか模索していったというか。

聖秋流:企画で固められてるものよりも、アットホーム感がある方が私たちは楽しかったんです。

ジェシカ:最初は撮りにくかったよね(笑)。動画のゴールが決まっちゃってるというか。

大内:カメラの存在を意識しすぎて、録画を切り終わってからのほうがめちゃくちゃ盛り上がってた(笑)。

ジェシカ:いまは逆に、私たちが喋ってるところにカメラを置いてるって感じです。

momohaha:個人的には、ごはん食べたりとか、ながら見できるような動画を発信できたらいいなと思っています。

聖秋流:え、そうなの? それ初めて聞いたで!(笑) でも実際、「子育てしながらいつも見てます」って声も多いよね。

ーーぜろぷりさんの視聴者さんは、若い世代が多いのかと思っていました。

聖秋流:意外と、20代後半から30代前半の方が1番多いんですよ。

大内:このあいだコンビニで、白髪ひとつ結びのおじいさんに「フィリピンママやられてる、4人組の方ですよね」と声をかけてもらったときは驚きました(笑)。

ジェシカ:ほんとびっくりしました(笑)。おじいさんまで届いてるの!?って。

・「コンプレックスが武器に変わりました」 自分たちの活動が“視聴者の勇気”に

ーーみなさんの特徴として、それぞれのマイノリティな部分について言及している動画も多いと思うのですが、4人でグループを組んで考え方に変化はありましたか?

ジェシカ:1番変わったのは大内じゃない?

大内:初めてスタッフさんに打ち明けたのは、100の質問の動画を撮ったときです。身近な友達とかには自分のセクシュアリティは伝えていたんですけど、個人活動中は、とくに公開はしていなかったんですよ。それで、動画を撮るときに聖秋流に「どうしたらいいかな」と相談して。

聖秋流:私はもう個人活動のときから自分が“男の娘”ということを公表してたのもあって、公表してもらった方が一緒に活動しやすいし、大内も今後やりやすくなるんじゃないのかなって言ったのをいまだに覚えてます。

大内:やっぱりメンバーに言うのと視聴者さんに向けて言うのって、規模が全然違うじゃないですか。でもよく考えたら、メンバーも家族も知ってるし、怖いものないなと思ったんです。それで会議のときに「すいません、めっちゃレズビアンです」ってサラッと告白しました(笑)。

ジェシカ:それから性格も明るくなったし、いまとなってはよかったよね。

大内:いま自分は大丈夫だって思えるからこれだけハッピーに話せるけど、そのときは……戦い方がわからなくて、誰かを嫌な気持ちにさせるかなとか、本当に言っていいのかなとか考えて、難しくなってました。でも、仮に傷つくことがあったとしても、守ってくれる人がたくさんいるし、みんなの存在がクッションになっているなと思います。

momohaha:私はハーフなんですけど、ハーフって特に幼い時期、いじめられる機会に遭うことも多いと思うんです。でもぜろぷりの活動をしてから、「momohahaちゃんを見て頑張ろうと思いました」とか「目標です」といったDMをいただくことが増えました。少しは誰かの力になれているのかなって思うんですけど、まだまだハーフのマイノリティについては発信ができていないと思っているので、これから頑張っていきたいですね。いろんな感情を、みんなと共有できるような動画を撮っていけたらいいなって思っています。

ジェシカ:私はプラスサイズについて発信をしてます。世間ではマイナスのイメージだけど、そのままだからいいんだよという考え方を伝えているつもりです。だから、「コンプレックスが武器に変わりました」とファンの方に言ってもらえたときに、すごくやりがいを感じます。

私たちは4人ともそれぞれの分野で戦ってるので、そんな姿が誰かを救うきっかけになったらいいですね。

ーーグループとしての今後の展望について、教えてください。

聖秋流:登録者数は100万人を目指しています。そのためには、さっき言った新規獲得だったり、細かくやるべきことを積み重ねて、私たちなりに目指していきたいですね。そろそろ体張る系の企画にもちょっと挑戦してみたいです(笑)。

大内:新規登録者獲得のためにもね。

聖秋流:嫌だけどね!(笑)

ジェシカ:自分たちが伝えたいものを、これからも伝えるべきかなと思ってます。そのためにも動画は見てもらわないとね! 私たちらしく、楽しんでいけたら嬉しいです。

(文・取材=はるまきもえ)

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