旧統一教会「被害者の会」富山県でも設立へ「30年経って脱会している人もいる」

妹が旧統一教会の信者だった富山市の男性が、県内で被害者の会発足を目指しています。男性は、高知県で被害者の会を立ち上げた橋田達夫さんに協力し、全国から寄せられるメール相談に対応しています。「1人でも多くの被害者を救いたい」男性の悲痛な訴えです。

妹が元信者の男性: 「統一教会の現役信者も幹部もみんな被害者なんです。ですからそういう方が1人でも脱会してそして社会復帰できるように何らかのお手伝いをしていきたいと思ってます」

富山市に住む60代の男性。旧統一教会に入信した妹が霊感商法の販売員となり、家庭が崩壊したと訴えています。男性は10年をかけて妹を説得し、脱会させたということです。

男性:「家族が10年間入信して本当に苦しい思いをしました。(妹が)就職する時に、面接担当の方から『この10年間何してましたか』って聞かれたんです。霊感商法やってましたと言えなかったから『何もしてませんでした』って言ったんです。それでもその会社は採用してくださったんです。本当に諦めたらおしまいです。でも諦めないで前を向いていけば必ず道はひらける」

旧統一教会をめぐる現状

旧統一教会をめぐっては2023年10月に文科省が教団への解散命令を東京地裁に請求。2024年3月には文科省の質問権に対する回答拒否で、東京地裁が10万円の過料を命じる決定を出しました。教団側は即時抗告しています。

決定では、解散命令の要件である「法令違反」について、「民法上の不法行為も含まれる」という初の司法判断が示され、長年、旧統一教会を取材している鈴木エイトさんは過料の決定が解散命令に大きな影響を及ぼすと指摘します。

ジャーナリスト・鈴木エイトさん: 「解散命令の審理と過料の審理に関しても内容がかなり重複してる部分があるんですよね。そういう点からするとこういう形で過料の決定がなされたということは今後の解散命令、これがかなり出る公算、出る確率が強まったとみています。教団に対して解散命令が確定する、司法の判断が出た段階でですね、相当数の信者が脱会するんじゃないかというところが指摘されてますよね」

困っている人の受け皿が必要

妹が元信者で富山市に住む男性は、解散命令で脱会する現役信者や元信者、その家族の助けになりたいと富山県内で被害者の会立ち上げを目指しています。

男性:「同じ被害に遭った方で、返金請求された方、そしてまた家族が統一教会に入信して困った。でも脱会した方、そういう方が、もしまわりにいればやはりいろんな助言なりアドバイスなりできますので。ですからそういう方たちとの出会いをどうしたらつくれるか。やっぱり受け皿が必要であると。これはやっぱり富山でもつくらないといけないかなと」

長男が焼身自殺

男性が被害者の会立ち上げを目指すきっかけは、高知県の橋田達夫さんでした。

橋田さんは、元妻による旧統一教会への高額献金などが原因で家庭が崩壊し、長男が焼身自殺したと実名で訴えています。

2022年12月には、濵田高知県知事と面会し、被害者の会立ち上げを報告しました。

高知県で被害者の会を発足した橋田達夫さん: 「(長男が)自殺するというのはすごくつらくて。旧統一教会を本当に解散させたい。被害者を救済する法律をつくってもらいたい一心で行動しています」

被害者の会では、週2回の午前中に電話相談を受け付けていますが、電話だけではすべての相談に対応できないため、富山市に住む男性が富山県の有志数人とホームページを開設しました。

妹が元信者の男性: 「ホームページを立ち上げればメール相談できるから。それだったら24時間いつでも相談できる体制できますんで。私のパソコンに全国からのメール相談が来てます」 毛田キャスター: 「安倍元総理銃撃事件を受けて旧統一教会の問題が浮上したと思うんですけど、それから1年半以上が経ってるわけです。今でもそういった相談は多いですか」
妹が元信者の男性: 「東京地裁に解散命令請求出しまして、あれから相談が増えてます。今まで1人で悩んでどうしたらいいかわからなかった人たちが立ち上がったんです」

被害者の会には“激励メール”も

相談の多くは高額献金のトラブルやマインドコントロールが解けないといった悩み事ですが、中には、激励のコメントもあると言い、被害者の会の代表として1年3か月にわたり活動してきた橋田さんは─。

橋田さん: 「やっぱり被害者の会を立ち上げることによって高知県知事に会ったりとか、全国発信もできるようになったし、逆に被害者の会を通じて全国からの情報発信とかも、情報も入ってくるようになりましたし、立ち上げて本当に良かったなと」

富山で被害者の会立ち上げを目指す男性については─。

橋田さん: 「いろんなことを情報交換しながら本当に彼自身が人を救いたいという気持ちが僕には伝わってきます。富山には彼が僕は絶対必要であるし、最後まで彼には富山で頑張ってほしい」

3月、富山県知事選挙への再選出馬を表明した新田知事。前回選挙で旧統一教会の関連団体から選挙応援を受け、今も教団との関係断絶を明言していません。

妹が元信者の男性も橋田さんのように被害者の救済を県知事へ申し入れようとしましたが、旧統一教会を巡る発言を受けて断念したと言います。

記者: 「関連団体から選挙応援の申し入れがあった場合は断るのか、受け入れるのか」 新田知事: 「もし(選挙応援の申し入れが)来たらその時に考えたいと思います」

妹が元信者の男性: 「『その時に考えます』。そういう言葉聞くと私たちはすごくショックで、なぜそこで応援の協力があっても断ります、断絶しますと言わないのか。私たちが投票した1票を返してください。みなさんそう言われます」

男性は、年内にも富山県で被害者の会を立ち上げる予定で、電話やメールでの相談を通じて献金の返還請求や社会復帰のサポート、心のケアに取り組みたいとしています。

妹が元信者の男性: 「とにかく今被害に遭ってる方たちは諦めないでください。10年、20年、30年経っても脱会されてる方も大勢います。とにかく1人で悩まないで相談していただきたいということです」

富山県内には旧統一教会の被害相談窓口として県消費生活センターや法テラスなどがありますが、公的な窓口では個人情報保護の観点から被害者同士が連絡を取り合うことが難しいといいます。男性は、被害者の会を通じて同じ苦しみを持つ人たちがつながれば互いに励まし合いながら前に進めると話しています。

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