九州大学箱崎キャンパス跡地に28.5haの都市 産業・生活・エンタメ・医療

by 加藤綾

九州大学と都市再生機構(UR都市機構)は、「九州大学箱崎キャンパス跡地地区土地利用事業者」の優先交渉権者として、住友商事を代表者とするグループに決定した。面積約28.5haの、業務・研究、エンターテイメント交流拠点、商業、医療・福祉、教育、居住といった機能を有する都市空間が開発される。

九州大学箱崎キャンパス跡地で、所在地は福岡県福岡市東区箱崎六丁目ほか。近隣には地下鉄箱崎線 箱崎九大前駅、貝塚駅、西鉄貝塚線 貝塚駅、JR鹿児島本線 箱崎駅がある。

分譲住宅や賃貸住宅、商業施設、医療・福祉、教育機能などからなるまちを形成するとともに、業務・研究機能や交流・にぎわい機能を整備する。

全景
主な都市機能の配置計画

居住機能は、分譲住宅2,000戸、単身者向け賃貸住宅、高齢者向け住宅、共同社員寮、学生寮を整備。多様な人たちが安心して暮らせて、交流やコミュニティが生まれる、福岡の都市戦略を具現化する住みたくなる住環境を目指す。

居住機能等

各ゾーンの立地特性や利用シーンにあわせ、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、カフェ・飲食店、ジム、オフィスサポートサービス等の生活支援機能を整備。あわせて、交通広場、路線バス延伸、多様なパーソナルモビリティ、オンデマンドバス等の、公共交通と連携させた網羅的で多様な交通アクセスを実現する。

医療・福祉機能では、総合病院、産婦人科クリニックの移転拡張、クリニックモール、多世代交流型福祉拠点により、地域の健康づくり「箱崎版地域包括ケアシステム」を構築。保育園、病児保育施設、学童施設により、子育てにやさしいまちとする。

ウェルネスストリート

教育の面では、インターナショナルスクール(総合・幼児)、外語専門学校等によるグローバル人材の育成や、多世代交流施設、社会起業塾、暮らしの大学等による多様な生涯学習の場を設置。九州大学や他大学とも連携しながら、九州大学100年のレガシーを継承し、九州の学びを集結した「マナビマチ」を実現する。

業務・研究機能としては、IOWN構想研究拠点と多様なプレイヤーが集うイノベーション拠点「BOX FUKUOKA」、九州大学の知の拠点を継承する「ライフサイエンスパーク」、駅前ビジネス街区「North gate Hakozaki」を計画。アジア・世界とつながり、イノベーションと新たな産業を生み出す環境を目指す。

イノベーションコア昼景
イノベーションコア夜景

交流・にぎわい機能は、食・アート・音楽など福岡の文化・歴史をテーマに集客交流拠点を整備。福岡・九州の食をテーマにした食のエンターテイメント交流拠点「フクオカサスティナブルフードパーク」、知と文化と体験を融合させた「ブック&カフェ」、多様な人と機能と体験が交わる「交流広場」を整備する。そのほか、パブリックアート・アートベンチ、IOWN技術による次世代3Dアートエンターテイメントなどを計画している。

フクオカ・サスティナブル・フードパーク(仮)
ふれあい通りから繋がる街角広場

スマートサービスで生活の質、空間の質、仕事の質、人生の質を向上

まちづくりのコンセプトは「HAKOZAKIGreenInnovationCampus」。事業区域および九州大学の歴史を継承したうえで、高質でみどり豊かなまちづくりを進め、新産業を創造・発信していくとともに、環境先進都市として世界を牽引する、未来のまちづくりを実現するとしている。

またIOWN構想に着目し、国内最大手の通信企業である協力者とともに提案コンセプト実現に向けて取り組む。

事業においては新しい価値観、新しいライフスタイルを送る環境をつくることが重要とし、生活の質、空間の質、仕事の質、人生の質を向上させるスマートサービスの提供を目指す。IOWN構想をもとに、職住遊近接のエリア特性を生かしたスマートサービスを提供し、「スマートサービス×都市空間・都市機能」によって、分野を横断した価値を創造し、一人ひとりに最適なサービスを提供するとしている。

スマートサービスについて具体的には、安全、健康、移動、防災、エネルギー・環境、分野自由・横断、先進的取組、水素の利活用に関する提案を行なっている。例えば移動については多様なシェア型パーソナルモビリティやデマンド交通、分野自由・横断についてはエリア内のサービス認証・決済を共通の生体認証基盤で行なえる環境整備、先進的取組については歩行者センサーを活用した歩車混在型の新しい自動運転社会への挑戦などがある。

スマートサービスの全体像と4つのキーワード

都市空間に関しては、地域から世界にまでつながるイノベーションコア、交流・発信・実証を促すスマートステージおよび地域と繋がる街角広場・開発公園、歩行者ネットワーク、交通広場や駐車場・モビリティハブ・ポートも含めた車両の動線、「箱崎創造の森」などの緑空間の整備を提案している。また、九州大学時代の街割りグリッド、街並み高さ、建物の色調などにより歴史の継承を図る。

イノベーションを促す多様な広場空間
まちの骨格を形成する5つのメインストリート

グループには住友商事のほか、構成員として九州旅客鉄道、西部瓦斯、清水建設、大和ハウス、東急不動産、西日本新聞社、西日本鉄道が参画する。

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