登下校中の事故が37% 子供の安全を守るために 通学路に潜む危険を交通事故の専門家に聞く

全国一斉に行われた「春の交通安全運動」2024年の重点目標は「子供の安全」。
子供の事故は特に登下校時が多く、低学年ほど多いという傾向がある。通学路に潜む危険を専門家に聞いた。

小学生の交通事故「登下校中」が37%

「春の交通安全運動」2024年の重点目標のひとつに掲げられたのが、「子供が安全に通行できる道路交通環境の確保」。
警察庁の統計によると、2019年からの5年間で交通事故による小学生の死者・重傷者は全国で3505人。学年別では2年生が最も多く、低学年ほど「歩行中」の割合が高く、高学年ほど「自転車」の割合が高い傾向になっている。

歩行中の事故を目的別にみると、「登下校」がおよそ37%と最も高く、次いで「遊戯」という結果になった。

専門家に聞く通学路の危険

「横断歩道があるから安全ではなくて、横断歩道があるからこそ、そこに人や車が集まってくるので、より注意する必要がある。」
こう話すのは、元警察官で、現在は民間の事故調査会社「日本交通事故調査機構」で交通事故の鑑定や調査をしている佐々木尋貴さん。
仙台市青葉区の通町小学校の通学路を佐々木さんと一緒に歩き、危険が潜む場所を教えてもらった。例えば、歩道がない道路では子供たちは外側線との間を歩かざるを得ない。ところがその中に電柱があると、子供たちはその電柱を避けざるを得ない。道幅が狭い上に、ところどころに電柱があり障害物となっている道は、周辺の道路も幅が狭く、相当の注意が必要な通学路だ。
実際の登校風景を取材すると、児童が道路にはみ出して通行する姿がたびたび見られた。

「極端な話を言えば、一分一秒でも自分の進路前方から注意力をそらすなというくらい、慎重な運転が求められてくる道路だと思う。」(日本交通事故調査機構 佐々木尋貴さん)

子供ならではの事故の背景も

見通しの悪い交差点も危険な場所だ。運転手は交差点を通過することに意識が向いてしまうため、交通事故が発生する可能性が増えてくる。さらに、事故の背景には子供の特徴も関係していると佐々木さんは指摘する。
「身長が低くなると運転手側からも子供が見えなくなるし、子供の視点からも周囲の状況がさえぎられて、車が見えなくなる危険性はあると思う。」(日本交通事故調査機構 佐々木尋貴さん)

新1年生へ学校での交通安全教育

通学路でドライバーに求められるのは、いつも以上に気を配った運転。同時に、子供たちへの交通安全教育も重要だ。仙台市青葉区の通町小学校でも、新1年生が入学した4月に合わせて、通学路の特徴に合わせた歩き方を教えている。
「低学年のころには4月のうちに交通安全教室という授業を行う。できるだけ道路の端で一列になる歩き方や、前後を確認してすばやく電柱を回り込むといった練習をしている」(通町小学校 井上康介教務主任)

交通安全教育がかけがえのない命を守る

危険な場所で、具体的に教えること。危険な場所・地点で大人が子供に教えてあげるということが有効な教育だと、佐々木さんは言う。
かけがえのない命を守るために。一人一人の安全への意識が求められている。

佐々木尋貴さん…元宮城県警の警察官。2010年に当時高校生だった長男を交通事故で亡くした経験から、宮城県警を早期退職し、日本交通事故調査機構を設立。日本全国から寄せられる調査依頼を受けて、事故の原因や当時の状況を調べる活動をしている。
(仙台放送)

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