「心を軽くするのが私たちの役割」傾聴ボランティアで高齢者を元気に 引きこもりを防ぐ“聞き手”のプロ=静岡・伊東市

静岡県伊東市では、高齢者の話を聞くことを専門とした「傾聴ボランティア」が活躍しています。自宅にこもりがちな高齢者の話し相手になることで元気を取り戻してもらう取り組みです。

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「ピンポーン」

<ボランティア>
「耳がすごく遠い方なので」

ボランティアが訪れたのは94歳になる高野栄司さんの自宅です。高野さんは最近、耳が遠くなり出歩くことが少なくなったといいます。

<ボランティア>
「なんか顔色が良くないね」

<高野栄司さん>
「身体じゅう具合悪い。外歩けないもん」

「傾聴ボランティア」は伊東市の支援センターや民生委員を通して月に1度、依頼された自宅を訪問し、およそ1時間、高齢者の話に耳を傾けます。

<ボランティア>
「あさ、昼、晩、3回食べてる?」
<高野栄司さん>
「食べているつもり」
<ボランティア>
「つもりじゃ駄目よ、食べなきゃ」

「傾聴」は介護現場などで採用されているコミュニケーションの手法で、10年ほど前からその重要性が注目されています。傾聴の基本は「共感」。相手から話を引き出し、聞き役になることが求められています。伊東市では2010年から始まった傾聴ボランティア。

代表の佐藤みつ子さんは長年、介護現場などで高齢者と接する中で、傾聴の大切さを感じました。

<佐藤みつ子さん>
「どうしても心と体が弱ってくるとね。引きこもりがちになると思うんですよね。だから引きこもりがちなところに訪問してお話を聞いていくっていうことがこの在宅傾聴の大事な役割だと思ってるんですね」

伊東市の傾聴ボランティアは70代を中心に38人が在籍しています。活動をするためには養成講座に参加して傾聴の心構えやテクニックを学ぶことが必要です。

<佐藤みつ子さん>
「相手に話させるおしゃべりっていうことなんですよね」
<ボランティア>
「相手のためだけなんです。お役所は体のことを守るのが大事で、心を守ることまでは手が届かないから」
<ボランティア>
「社会の役にほんの少し役に立ってるんじゃないかなって思います。対象者がとても喜んで次の回も待ってくれてるんですよね」

会話をはじめて1時間ほど。高野さんの表情が変わりました。

<佐藤みつ子>
「最初の顔と今の顔がだいぶ違うからね」
<高野栄司さん>
「楽しい楽しい。好きなのよ話するのが、だからこうやって来てもらうとバンザイ!」
<ボランティア>
「それは何よりだね」

<佐藤みつ子>
「じゃあ、また」

<佐藤みつ子>
「心が軽くなる、明るくなるっておっしゃるのね。話したあとで。そういう風に言っていただけるのが私たちの役割なんだろうなと思っています」

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