「自分の時間はもちろんない」「1、2時間預けられたらいいな」親が働いていなくても子どもを預けられる『こども誰でも通園制度』保育士不足の懸念も【ともにはぐくむ】(3)

2024年4月19日、国会では少子化対策の関連法案が衆議院本会議で可決されました。その法案の中に盛り込まれているのが、親が働いていなくても保育所などに預けられる「こども誰でも通園制度」です。
孤立した育児を防ぐ狙いがありますが、保育の現場からは受け入れ体制について不安視する声もあります。「こども誰でも通園制度」をめぐる現状を取材しました。

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静岡市の子育て支援センターに集まっていたのは、1歳の子ども達。音楽に合わせて歌ったり、踊ったり、にこにこご機嫌です。

子どもとの時間を楽しみつつも、親たちは日々の育児の悩みを打ち明けます。

<1歳児の母親>
「自分の時間はもちろんないし、親や旦那に預けて何かをするというのも相手の都合とか体調とかあるので」

<1歳児の母親>
「病院行ったりとか、本当に自分の息抜きなんですけど、休憩したりとか、いまワンオペでやっていて離れられないので1時間、2時間ぐらい預けられたらいいな」
<1歳児の母親>
「身体が限界でとか、メンタルが限界でとか、そういう時に(支援制度に)アクセスしやすかったりすると嬉しいなと思いました」

こうした悩みを抱える親たちをサポートしようと国が始めるのが「こども誰でも通園制度」です。親が働いていなくても、子どもを保育所などに預けられる制度です。

<森島保育園 石野睦月園長>
「子育てをしているすべての方々のすべての支援をしていくことは今後とても大事なことだと思いますし、やり方を探りながら、支援をしていきたい」

富士市は、今年度から保育園の空き教室を使って試験的に行う計画で、現在、利用の申し込みを受け付けています。

対象は、0歳6か月から3歳未満の子どもで保育所や認定こども園などで実施します。1人当たりの利用時間は、「月10時間」までです。

<森島保育園 石野睦月園長>
「小さいお子さんを預かりますので、保護者と子どもの健康状態などを伝えあってひとりひとりを十分に把握してそのお子さんにとって無理なく理解者が増えて、安心して過ごせる場所になるとよいと思っています」

<富士市こども未来部 高橋遥香さん>
「やっぱり家庭で子育てを行っている方の中では、不安感や孤立感を感じている方もいらっしゃるかと思うんですが、そういう方がこの事業を利用することによって、保育士さんであったり、地域の人とのつながりを得て、より良い方向につながっていけばと思います」

一方、保育の現場では、受け入れ体制について不安視する声があります。

<県保育連合会 土山雅之会長>
「どの園も保育士不足に困っている。また新たに『こども誰でも通園制度』でこどもを受け入れる、そのために保育士が必要になってきますので、それを果たして準備できるのか」

土山会長は、課題として保育現場の人材確保や利用可能枠などルールの定め方などを挙げています。

<県保育連合会 土山雅之会長>
「国がやるからおしゃる通りやります、ではなく、こう改善しないと子どものためにならないとういことを私たち現場から国の方に伝えていく必要があるかなと思う」

育児の負担を軽減し、孤立感の解消につながるのか。
すべての親子に手を差し伸べるための新たな仕組みづくりが進んでいます。

<坪内明美記者>
「私も2歳の子どもがいるので短時間でも自分の時間を確保したいとか第三者のサポートを受けたいという気持ちは共感できます。この「こども誰でも通園制度」は、今年度は試験的に行い、その結果を検証した上で2026年度には、全国の自治体で導入する計画です。県内では、富士市のほかに浜松市や沼津市でも試験的に始まっています」

<井手アナウンサー>
今年度の結果をふまえ、よりよいものになるといいですね。

<坪内明美記者>
「そうですね。制度を始めるには『保育現場の負担軽減』が欠かせませんし、特定の理由がなくてもこどもを預けることができるので正しく運用するためのルールづくりが重要だと感じました」

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