津波ハザードマップの浸水想定いまだ旧基準 相模湾沿いでは茅ヶ崎市のみ 茅ヶ崎市

茅ヶ崎市の津波ハザードマップ(上)と15年の県津波浸水想定図。県想定図の方がより広域に浸水区域を示している

茅ヶ崎市の「津波ハザードマップ」が、県内相模湾沿岸の自治体では唯一、最新の県津波浸水想定図に基づいていないことが16日までに本紙の調べで分かった。より災害リスクが高いとされる地震が反映されておらず、浸水想定区域も半分以下と少ない。市の防災計画や避難計画は旧予測図に基づいて作成されており、市の危機管理に対する妥当性が問われそうだ。

県は東日本大震災翌年の2012年3月、過去に被害が大きかった慶長型地震など12の地震ごとの津波浸水予測図を発表。15年3月には相模トラフ型地震などより災害リスクの高い地震を加味し、「浸水域」と「浸水深」が最大になるよう重ね合わせた「津波浸水想定図」を公表した。

本紙の調べでは、相模湾沿岸8市5町で茅ヶ崎市を除く12自治体が22年3月までに15年の想定図を基に津波ハザードマップを更新。葉山町では両年の最大浸水区域を反映しているほか、鎌倉市のように複数回改訂したケースもある。

現行の茅ヶ崎市のマップは12年3月の予測図を基に同年6月に発行。その後10年以上、一度も改訂を行っていない。

その理由について、市防災対策課は「予算上の問題や市民の混乱を避けるなど複数の理由がある」と説明。県は沿岸自治体に対し、東日本大震災後に制度化された「津波災害警戒区域」の指定を進める。指定を受けると津波の浸水深に加え基準水位(津波が建物に衝突したときの水位上昇)が示されるため、「より精緻なマップができる」(同課)。一方、複数回更新を重ねることは「市民の混乱を招く恐れがあり、二重投資になる」とし、18年に改訂を検討したものの断念した経緯があるという。

市は「市実施計画2025」で最終年度にあたる25年度に津波ハザードマップの改訂を位置付ける。防災計画や避難計画はこれを受け、順次更新していく方針という。

現行の2・6倍超

「日頃からよく目にするところに貼っておき、避難先・避難経路を常に意識するようにしましょう」。市の津波ハザードマップはこう記す。

だが、県によると15年想定図の市内浸水区域は4・1平方Kmで12年予測図の2・6倍以上にあたる。沿岸の住宅街一帯に浸水区域が広がり、現在は区域外の浜須賀小学校や緑が浜小学校など6小中学校も区域内になる。

避難時の判断材料となる津波ハザードマップが最新の基準に沿っておらず、一方で浸水予測が異なる想定図が存在する。同課にどちらの基準を優先すべきかを問うと「より災害リスクが高い県の想定図だ」と答えた。

都市防災に詳しい(一財)アジア防災センターの小川雄二郎理事長は「自治体が最新の知見や科学的根拠に基づいて想定を示すのは常識だ。マップは絶対的ではないが、災害リスクを正しく市民に伝えるのは市町村の責務」と指摘する。

同課は更新の必要性について「結果として改訂の時期が延びており、早急に解決していかなくてはならない」と述べた。

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