風流物収蔵庫新築へ 規模2倍、26年完成目指す 茨城・日立市

今春の公開を終えた当日夜、山車の解体部材を収蔵庫に搬入する保存会員ら。左側の空間が山車1台分のスペース=7日午後、日立市宮田町

国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産の「日立風流物」に関し茨城県日立市は、老朽化が進む収蔵庫を同市本宮町の旧宮田幼稚園跡地に移転、新築する。本年度着工し、4台全ての山車が繰り出す2026年の神峰神社大祭礼までの完成を目指す。当初予定していた展示施設の整備は「引き続き検討する」としている。

日立風流物は高さ15メートルの山車の上で5層の屋形が開閉し、からくり人形芝居を披露する。山車は旧宮田村の4町が1台ずつ継承。組み立てや人形の操作などの全てを町内の人の手で行うのが特徴で、国の重要有形・無形民俗文化財に指定されている。

毎年のさくらまつりでは各町が回り番で1台を公開し、7年に1度の大祭礼では4台が一堂に集結する。公開のたびに組み立てては解体する全国的にも珍しい巨大な山車で、ばらした部材は神社境内の収蔵庫に保管している。

鉄筋コンクリート平屋の現在の収蔵庫は1963年に完成し、築60年以上が経過。床面積は約130平方メートルと手狭で、搬入口も狭く1カ所しかないため、大型で重い部材を出し入れする際は危険を伴い、4町が同時に作業できないなど、利便性の向上が課題となっていた。

新施設は、山車4台分の収蔵庫棟と、日立郷土芸能保存会員らが人形の修理作業や集会を行える管理棟で構成し、規模は現状の2倍程度。いずれも平屋で、収蔵庫には四つの搬入口を設け、それぞれに運搬用のトラックを横付けできる造りとする。

整備費は1億9260万円で、一部国の補助を活用する。実施設計を経て年明けにも着工し、2025年度末の完成を目指す。26年5月に予定する次回の同神社大祭礼で公開した後、全ての山車を新施設に収蔵できるようにする。

市は21年に日立風流物保存活用計画を策定し、展示・収蔵施設の整備の方向性を示した。展示施設については実物大の山車(レプリカ)を新造して常設展示する計画だが、多額の費用が見込まれることなどから、早急に対応が必要な収蔵施設を先行整備することにした。

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