燃油サーチャージに上昇の気配。中東緊迫と円安、欧米往復7万円に

航空会社の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)が値上がりしています。今後の見通しとあわせて見てみましょう。

24年6-7月分を発表

国際線旅客が航空券購入時に支払う燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)について、JALは2024年6-7月発券分で、価格を改定することを発表しました。

燃油サーチャージは、燃油市況価格の直近2か月間の平均に基づき算定されます。

JALによりますと、6-7月発券分の基準となるシンガポールケロシンは、直近2ヶ月の市況価格が102.81米ドルでした。また、同期間の為替平均は1ドル149.52円でした。これを乗じた1バレルあたりの基準金額は15,373円となりました。

欧米往復70,000円に

4-5月発券分は、市況価格101.72米ドル、為替145.26円、基準価格14,775円でした。この2ヵ月で原油価格は1%値上がりし、為替は3%円安に振れています。どちらも燃油価格上昇に作用し、結果として、基準価格が4%値上がりしたわけです。

これにより、JALでは6月1日発券分から燃油サーチャージの価格を1段階引き上げます。6-7月発券分のひとり1区間片道あたりの燃油サーチャージは、日本から北米・欧州・オセアニアなどが35,000円に、ハワイ・インドなどが22,500円に、タイ・シンガポールなどが18,500円になります。

これは片道の金額なので、往復の場合、北米・欧州・オセアニアなどが70,000円に、ハワイ・インドなどが45,000円に、タイ・シンガポールなどが37,000円となります。

欧米路線を例にとると、現在は66,000円なので4,000円高くなります。

再上昇に転じる

燃油サーチャージは、2022年10-11月発券分がピークで、その後いったん値下がりし、2023年8-9月分を底として上昇に転じました。23-24年12-1月分で過去2番目の高値を付けたあと調整し、4-5月分を底に再上昇に転じた形です。

とはいえ、今回は、前回より1段階上がるだけなので、水準としては大きく変わりません。

過去1年の燃油サーチャージの変化は下表の通りです。

2023-24年のJALの燃油サーチャージ(円)路線23年
8-9月23年
10-11月23-24年
12-1月24年
2-3月24年
4-5月24年
6-7月北米・欧州・中東・オセアニア28,80033,40047,00043,60033,00035,000ハワイ・インドネシア・インド・スリランカ18,40021,30030,50028,20021,00022,500タイ・マレーシア・シンガポール・ブルネイ15,00017,90024,70023,00018,00018,500グアム・パラオ・フィリピン・ベトナム・モンゴル9,20011,00017,80016,10011,00012,000東アジア(韓国、モンゴルを除く)7,1008,40011,40010,3008,5009,200韓国2,9003,5005,9005,3003,5004,000

※片道あたり、発券日基準。

適用条件「ゾーンJ」に

今回の燃油サーチャージ額は、JALが公表している適用価格表の「ゾーンJ」に該当します。前回の「I」より1ランク上です。最高値だった2022年10-11月の「O」の5ランク下となっています。

JALの北米・欧州向け適用条件表ゾーン基準価格サーチャージ額
(23年度)サーチャージ額
(24年度)A6,000円~7,000円4,500円4,500円B7,000円~8,000円8,900円8,900円C8,000円~9,000円13,400円13,400円D9,000円~10,000円17,800円16,000円E10,000円~11,000円20,200円18,500円F11,000円~12,000円24,200円21,000円G12,000円~13,000円28,800円25,000円H13,000円~14,000円33,400円29,000円I14,000円~15,000円36,800円33,000円J15,000円~16,000円40,200円35,000円K16,000円~17,000円43,600円38,000円L17,000円~18,000円47,000円41,000円M18,000円~19,000円50,400円44,000円N19,000円~20,000円53,800円47,000円O20,000円~21,000円57,200円50,000円## 今後の見通しは?

最近の原油価格は、中東情勢の緊迫化を反映して上昇傾向です。直近の数字を見ると、基準となるシンガポールケロシンの市況価格は111米ドル程度で、今回の基準価格102.81米ドルより8%程度値上がりしています。

さらに為替相場では円安が進んでいて、154円前後の値動きとなっています。今回の基準価格の149円に比べると3%ほど円安です。

このままの状況で推移すれば、原油高と円安のダブルパンチで、次回の基準価格は17,000円台に乗る可能性があります。その場合、燃油サーチャージのゾーンは2段階上の「L」になるでしょう。直近の高値となった2023-24年12-1月と同水準になる可能性があります。

米国の利下げは先送りとなり、当面の円安は望みにくい状況となりました。イランとイスラエルの紛争の影響もあり、原油価格は高止まりしています。そのため、燃油サーチャージ金額には値上げの気配が漂います。旅行者には厳しい状況となりそうです。(鎌倉淳)

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