韓国No.1ハンバーガー店が“あご外れバーガー”を引っさげて渋谷にオープン 「新大久保で開店しない理由」も分析

グランドオープンに向けて準備をすすめていた『MOM'S TOUCH』渋谷店 撮影/編集部

韓国最大のハンバーガー&チキンブランド『MOM'S TOUCH(マムズタッチ)』。韓国国内だけで約1400店舗を展開する巨大ブランドが4月16日、若者の街である東京・渋谷に日本第1号店をオープンした。2023年10月に渋谷で、21日間開催した期間限定のポップアップストアでは、計3万3000人以上が来店し、一時は2時間待ちとなる大盛況だった同店。

近年、若者の間では韓流ブームが続いているだけに、その波に乗って大ブームを巻き起こす可能性もあるだろう。そこで、弊サイト記者は、その人気ぶりを確かめるべく、オープン日に店舗へと足を運んだ。

事前に、若者文化や韓国トレンドに詳しいトレンドアナリストの太田まき子氏に、『MOM'S TOUCH』について解説してもらった。

「1997年に誕生した『MOM'S TOUCH』は、その圧倒的なボリュームと味のクオリティから“神コスパ”とも現地で言われています。韓国国内においては、『マクドナルド』を始めとする名だたる主要ハンバーガーチェーンを押さえ、No.1の店舗数を誇る人気店。ロサンゼルスやバンコクなどグローバルに店舗を展開しているなかで今回、満を持して日本に初上陸しました」(太田氏)

グランドオープンした店舗では混雑回避のため、事前予約枠を設置。当日枠もあるものの、事前予約制が功を奏してか、昼前でも並んでいるのは数十人といったところ。それでも店舗へと足を踏み入れると客席はほぼ満席で、大盛況だった。

気になる客層は、ボリュームがウリのハンバーガー店ながら、女性が多め。世代は幅広く、外国人の姿もチラホラと見かけられた。店内には、現金専用の注文端末もあるが、注文・決済は基本的にテーブルのQRコードで完結。受付番号が店内のパネルに表示されたら、1階のカウンターまで食事を取りに行くシステムだ。

気になるのは店内で提供される食事だろう。そこで、看板メニューとオススメメニューを太田氏に聞いた。

「分厚さと満足感の高さから”あご外れバーガー”の異名を持つのが、看板メニューの『サイバーガー』(単品520円/ポテト・ドリンクとのセット850円・税込)。こちらの商品はスパイスで味付けしたフライドチキンに甘酸っぱいソースがかけられ、タマネギとレタス、ピクルスがバンズでサンドされた物。ボリューム満点で、男性でも1つでおなかいっぱいになるほどです」(前同)

看板メニューの『サイバーガー』を注文。受け取って包みを開くと、バンズからフライドチキンがド~ンと大胆にはみ出しており、平面に置くと傾いて、レタスがこぼれおちてしまうほど。ボリューム感は恐るべしだ。ライバル店である『ケンタッキーフライドチキン』が販売する『チキンフィレバーガーセット』(ポテト・ドリンク付き)の価格も850円。同価格で勝負するあたり、『MOM'S TOUCH』の『ケンタッキーフライドチキン』へのライバル心も見え隠れする。

韓国で愛される味を体感させる『MOM'S TOUCH』だけに、他のハンバーガーチェーンとは大きく異なる点があるという。

「店内で提供されるサイドメニューは、ポテトとチキンのみ。『MOM'S TOUCH』はチキンブランドとして成功したため、単品のチキンにも力を入れているということなのでしょう。ケイジャンスパイスを使った『骨なしフライドチキン』(2ピース・450円)はサクサク感が人気で食べやすい。

特製甘辛ソースの『骨なしヤンニョムチキン』(2ピース・490円)は味が濃く、クセになります。ただ、ハンバーガーの付け合わせがポテトとチキンのみというのは油物が多すぎる気も……。好みは分かれそうですよね」(同)

また、日本上陸にあわせて限定メニューも販売されるという。

「渋谷店限定メニューの『本格プルコギバーガー』(550円)は、照り焼き風味の焼肉ソースで甘辛い。チェダーチーズのコクと相まって濃厚な味わいです。日本人にもなじみがある味であることから、食べやすいですね」(同)

■『MOM'S TOUCH』の戦略の巧みさ

韓国テイストと日本人好みの味をうまくマッチングさせた韓流ハンバーガー店の『MOM'S TOUCH』。新上陸となる韓流ハンバーガーショップは、日本でもトレンドに敏感な若い世代を中心に支持を集めそうなポイントがいくつもあるという。前出のトレンドアナリストである太田氏が話す。

「『MOM'S TOUCH』が出店した渋谷のテナントは、もともと『マクドナルド』が店を構えており、ファストフード店が受け入れられやすい立地です。スクランブル交差点にも近くてアクセスは抜群。

そして、なんといっても話題の作り方が上手です。本格出店を前に一度、ポップアップストアで盛り上げ、連日行列になっていることをSNSで日々、報告。トレンドに敏感な層の間で話題となっていました」(太田氏)

現にオープン直前も、店舗の公式SNSを使って、"1次予約5600席が3日で売り切れ”とショップ自らが人気度をアピール。常に何かしらの話題を振りまいて、グランドオープン日に向けた盛り上がりの波を醸成していたということだろうか。

「メニューは見た目からボリューム感を打ち出して、他ブランドと同程度の価格帯でも、“コスパの良さ”を感じさせます。看板メニューである『サイバーガー』には”あご外れバーガー“というニックネームを付け、消費者が、つい確かめたくなる心理も突いている。

また、サイバーガーは累計5億個販売をキャッチコピーに打ち出していますが、具体的な数字というのはやはり、人の興味を引きます。消費者の関心を集める仕掛けが、細かく散りばめられているのです」(前同)

また、韓国の外食文化では欠かせない”映え要素”もしっかりと抑えているという。

「スタイリッシュなイートインスペースでは、ブランドカラーのオレンジとシルバーを基調にしつつ、壁にはネオンサインで店名をデザイン。他にも、”アンニョンSHIBUYA”(こんにちは渋谷)というメッセージボードを店内では光らせるなど、SNSに上げたくなるような戦略を意識しているようにも思います」(同)

店内の仕掛けはそれだけではないという。韓国国内でも話題を集めるトレンドアイテムが、店内には設置されるという。

「レトロな白黒写真が数秒で印刷される、韓国で人気の“レシート写真機”も、『MOM'S TOUCH』オリジナルフレームの物が渋谷店には用意されています。商品を買ったら一人1回無料で撮影できるサービスで、“撮影欲”が旺盛な渋谷の若年層に人気が出るのではないでしょうか」(同)

ところで、韓国グルメといえば新大久保が有名だが、なぜ『MOM'S TOUCH』は、新大久保ではなく、渋谷で出店したのだろうか。その点について太田氏は「あえて“韓国が好きな人”だけにターゲットを絞っていないという自信の表われでは」と分析する。

「渋谷に、米シアトル発のハンバーガー店『Lil Woody’s(リルウッディーズ)』が日本初となる店舗をオープンさせたのが23年8月のこと。今年4月13日には、米NY発のハンバーガー店『シェイク・シャック』もオープンしたばかり。今、渋谷は日本一のハンバーガー激戦地と言っても、過言ではないんです」(同)

外国人観光客に人気のスクランブル交差点があることから、渋谷は現在、さまざまな国からの訪日観光客であふれかえっている。街の多国籍化に歩調をあわせるかのように、それぞれの国で独自の進化を遂げた米国発祥のハンバーガーが、渋谷の街で相まみえ、多くの客を求めて激戦を繰り広げているということなのだろうか。

「もともとグローバルに手を広げている『MOM'S TOUCH』だからこそ、ハンバーガー激戦区である渋谷に参戦というわけでしょう。日本での韓国グルメは流行り廃りのスピードが早いものですが、『MOM'S TOUCH』は韓国では定番中の定番。ですので、日本における韓国グルメ発信の地である新大久保へと出店する必要もない。渋谷に出店することで、さまざまな世代・国籍の人たちに向け、商品を打ち出したいということなのではないでしょうか」(同)

韓国人気No.1ハンバーガー店は、果たして日本で受け入れられるか。

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