「線も引いてあるし」駐輪禁止の“車の副道”に大量の放置自転車、休日は約600台にも…そもそも不足していた駐輪場問題で、対策に乗り出した行政 背景には市駅前で進む“大事業”

私たちにとって欠かすことのできない交通手段の1つ「自転車」。街には様々な目的で自転車に乗る人があふれていますが、一方でこんな問題も…

(自転車の女性)
「あふれてしまっているところや、歩行者に危ないところもあった」
(自転車の男性)
「整備されている場所があれば、もっと便利だと思う」

そう「駐輪場」の問題です。愛媛県松山市中心部の路上を見てみると…放置自転車があふれかえっていました。

一方で、松山市内にはこんな“変化”も起きています。

駐輪場増設!背景には松山市が進める“大事業”が…

松山市の中之川通りには3月26日、新たな市営駐輪場が開設されました。停められるのは自転車だけですが、無料で最大4日間駐輪することができます。取材したこの日も、朝からほぼ満車となっていました。

(女性)
「すごく便利。使い勝手がちょうど良いところなので」

需要の高さが伺えますが、一体なぜこのタイミングで、この場所に作られたのか。
松山市の担当者に聞いてみると…

(松山市交通拠点整備課・村井望 主幹)
松山市駅前の広場整備に取り組んでいて、施設・道路整備に合わせて駐輪対策をしている」

市が進める松山市駅前の広場整備。去年10月に示された計画には、駅前の車道を無くす一方で、市民が集いイベントも開催できる広場を整備することなどが盛り込まれています。その整備を進める上で駐輪場を増やす必要があるということなんです。

“勘違い”から増える放置自転車も? 問題は根深く…

駐輪場を増やさなければならない理由…それが深刻化する“放置自転車”です。

松山市の調査によると、松山市駅周辺には平日で約450台、休日で約600台が駐輪場以外の場所に止められているとみられるそうです。

(松山市交通拠点整備課・村井望 主幹)
「周りの景観や歩行者の通行を阻害すると考えるので、広場整備と一体となった駐輪対策が必要と考えている」

市内でも、特に放置自転車問題が深刻なのが…松山市の花園町通りから市駅に向かって左側にあるこちらのスペース。実は主に自動車が通る「副道」で駐輪場ではないんです。

しかし、それを知らずに停めてしまう人はかなり多いようです。

―――ここが駐輪場ではないと知っていた?
(男性)「そうなんですか?知らなかった」
(女性)「(地面に)線も引いてあるし駐輪場だと思った。別のところに停めます」

このスペースは、広場整備に伴いタクシーの待機場所になる計画で、5月上旬に工事が始まる予定です。

モラルの問題だけじゃない!松山市が抱える深刻な“課題”

ただ、松山市内で放置自転車が増えるのにはこんな事情が。

―――このあたりの駐輪場は足りる?
(男性)「もうちょっとあった方が良いと思う」

駐輪場が足りていないのです。

松山市駅周辺にある駐輪場は、民間のものを含めご覧のとおりです。
▼花園町通り 歩道沿い 97台(市営・無料)
▼松山市役所 第四別館前 273台(市営・無料)
▼いよてつ高島屋の地下 634台(民営・有料)
▼伊予鉄ターミナルビル 468台(民営・有料)
▼松山市駅 西側 235台(民営・有料)

これらを合わせて、約1700台分の駐輪場がありますが、その全てを活用しても最大300台分が不足しているとみられています。

この現状について、地元の商店街も改善を求めています。

(松山市駅前商店街・寺尾賢一 会長)
「市民が気軽に買い物に来る場合は自転車を使う人も多いので、人が(商店街に)来られるような駐輪場の設置は商店街としても望みの1つ」

駐輪場不足解消へ 市が打ち出した対策は

そこで、松山市はこのほど中之川通りに新たな駐輪場を設置。さらに今後、松山市役所第四別館前にある駐輪場を2階建てにし、合わせて約270台分を確保する計画です。

(松山市駅前商店街・寺尾賢一 会長)
「小さな子どもから高齢の方、車いすの方までいろいろな人が気軽に来られる街になってほしいと思うので、自由に歩きやすい街並みを望んでいる」

歩行者にとっても自転車にとっても訪れやすいまちづくりを実現するため、使う人に寄り添った駐輪場の整備は急務と言えそうです。

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