【4月20日付社説】公立夜間中学/いつでも学び直せる社会に

 県内初の公立夜間中学「福島四中天神スクール」が、福島市に開校した。不登校などで義務教育を十分に受けられなかった10~80代の男女17人が通っている。

 小学校の時に不登校の時期があった福島市の60代男性は、日常で目にする英語が読めなかったり、パソコン作業が難しかったりして苦しい思いを重ねてきた。カンボジア国籍の40代女性は母国の内戦の影響で学校に通えなかった。

 生徒それぞれにもどかしい思いをしてきただろう。公立夜間中学の開校は、そうした人が「学び直し」を諦めることなく、いつでも望む教育を受けられる社会の実現に向けた大きな一歩だ。

 天神スクールでは、週5日間の授業で国語や数学、体育など通常の公立中学と同じ教科を学べる。基礎学力を総合的に身に付けるだけでなく、外国籍の人らにとっては卒業資格を得て進学や資格取得などにつなげる機会となる。

 公立中学の教諭や日本語指導を担当する非常勤講師ら14人の教職員が学校生活を支える。生徒の年齢や習熟度、国籍などが異なるため、一つの授業に複数の教員を配置するなど指導を工夫する。

 生徒たちは高い学習意欲や目標を持って入学した。ただ不登校の経験などから不安を抱いている人もいるはずだ。教職員は、生徒たちが充実した学校生活を送り、次のステップへと踏み出せるよう、きめ細かく指導してほしい。

 天神スクールは福島市以外の生徒も受け入れているものの、入学生17人のうち福島市が16人で、郡山市は1人にとどまっている。公教育による総合的な支援を必要としながらも、遠方に住んでいるため天神スクールに通えない人がいると捉えるべきだろう。

 学び直しの環境をどう充実させるかが課題だ。福島を除く各市町村と県の教育委員会は、公立校の設置に向けたニーズを探るとともに、天神スクールを拠点としたオンライン教育の提供体制の整備に積極的に協力する必要がある。

 学び直しの重要な受け皿の一つに、民間の自主夜間中学がある。県内では福島、本宮、郡山、南相馬、いわきなど複数の市町村に開設されている。公立と比べて開講日が少ないなどの違いはあるが、生徒が仕事や家族の介護などと両立できるよう、必要な科目に絞って指導したり、昼間も授業を行ったり柔軟に対応している。

 学び方の選択肢を確保するためには公立、自主の両夜間中学が欠かせない。各教委には、自主夜間との連携や支援などで学ぶ機会を広げていくことが求められる。

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