【感謝の気持ちを込めて】騎乗後の馬のお手入れ

乗馬を始めると騎乗中のことに目が行きがちですが、実は騎乗後のアフターケアもとても重要です。では、騎乗後のお手入れはどのように行えばよいのでしょうか?今回の記事では、騎乗後のケアの手順・ポイントなどを紹介します。

クールダウン

クールダウンとは、レッスン後に馬をリラックスした状態で歩かせることです。レッスン中の馬は身体的にたくさん動いているだけでなく、扶助に注意を向けて気を張った状態になっているはず。

そこで、手綱を緩めてのんびりと歩く時間を取ることで体温を下げ、同時に気持ちもリラックスさせる必要があります。時間の目安は7分ほどですが、季節や天候によって調整しましょう。

たとえば、暑い時期にはクールダウンの時間は長めに取り、なるべく日陰を選んで歩きましょう。一方、寒い時期には馬の身体が冷えすぎない程度に、リラックスした様子がみられたらクールダウンを切り上げます。

馬のお手入れの流れ

クールダウンが終わったら、洗い場に戻って馬のお手入れをしましょう。お手入れの基本的な手順と、お手入れの際に同時にできるチェックは下記のとおりです。

馬装を解く

洗い場に戻ったら、まずは馬装を解きます。人間が騎乗用の服装からお手入れ用の服装に着替える場合も、先に馬の馬装を解いて水をあげましょう。

馬装を解く際には、鐙の付近や鞍の乗っていた範囲を確認してみてください。馬具が馬の身体に強くあたる場所には鞍傷・拍車傷ができてしまうこともあるため、騎乗の都度チェックが必要です。

馬装解除と傷の有無などを手早く確認したら、早めに水をあげてください。なお「暑い時期には馬も冷たい水を飲みたいかも」と思いがちですが、実はキンキンに冷えた水よりも常温の水を好む馬が多いようです。

そのため、洗い場が混雑したりバケツが足りないなどの事情が無ければ、前もって汲んでおいた水をレッスン後にあげるのがオススメです。もしくは、洗い場にお湯が出る水道があれば、少しお湯を足してあげるのも良いでしょう。

手入れでスッキリ&馬体チェック

馬装を解いた後は、馬のお手入れをしていきます。お手入れの基本的な流れはブラッシング→汗を流す→脚と蹄のケアとなります。

ブラッシングでは、ゴムブラシも使いながら毛の中に入り込んだゴミやフケをかき出していきます。毛の中にゴミが溜まっていくと風通しが悪くなり、皮膚炎などの原因にもなるためしっかりときれいにしましょう。

ブラッシングは全身の毛や皮膚の状態をしっかりと観察するチャンスなので、手早く作業を進めながらしっかり馬体チェックをすることも大切です。

次に、ブラッシングで表面に出てきた汚れやレッスンでかいた汗を流していきます。夏は丸洗いをしたり、冬は濡れタオルでよく拭いたり、季節によって手入れの内容は変化します。馬の汗の量・汚れ具合・気温などをもとにお手入れ内容を決めましょう。

丸洗いする場合もタオルで拭く場合にも、身体が濡れている時間が長いと馬の体温が奪われてしまうため注意が必要です。十分にきれいにしたら乾いたタオルでよく拭いて水分を取りましょう。

なお、雨の日には足元や蹄の汚れが先に気になることもあるかもしれません。しかし、脚のお手入れを先に行うと、せっかく脚がきれいになった後で身体の汚れが落ちてきて再び汚れてしまいます。お手入れの順番は「上から下へ」と覚えてくださいね。

曳き馬でリラックス&歩様チェック

お手入れが終わり、時間に余裕がある場合には曳き馬をするのがおすすめです。次に同じ馬に乗る人がいる場合・真夏の暑い時間などは難しいですが、できるだけ曳き馬の時間を取ることで馬がゆったりした気持ちになることができるといわれています。

また、曳き馬をすると乗っているときにはなかなか見られない馬の足運びも確認できます。歩き方に違和感がないかチェックしてから馬房に戻すという意味でも、騎乗後の曳き馬は大切な時間です。

チェックすべきこと

ここまでの話で「騎乗後のアフターケアでは、単に馬をレッスンモードから休憩モードに切り替えるだけではない!」と分かっていただけたでしょうか?

お世話と同時進行で行う馬体チェックは、馬房にいる馬を見ただけでは気づくことができない変化を発見する絶好のチャンス。最後に、どのような点に注目してチェックを行えばよいかまとめました。

皮膚の状態

馬の皮膚は毛におおわれていて直接は観察しにくいものです。しかし、湿疹・かさぶたなどができると毛の上からでもボコボコと細かい凹凸のように見えたり、毛並みが一部だけ乱れているように見えたりすることがあります。

また、皮膚にかゆみ・痛みがあると、馬はブラッシングを嫌がる様子をみせます。具体的には、ブラシをかけている人から離れようとしたり「やめて」というように耳を伏せて怒ったりすることが多いでしょう。

馬の反応

馬が十分にクールダウンできているか、身体に痛みがないかなどを確認する際には、馬の反応をしっかり観察することが大切です。

具体的には、運動後に呼吸をするたび鼻孔が大きく広がったり、腹部を見て大きく呼吸をしているようであればまだクールダウンが不十分です。また、涼しい場所に連れてきてもいつまでも汗が引かない場合には、熱中症になっている可能性もあるでしょう。

そのほか、お世話の最中は馬体の色々な部分に触れながら「ブラッシングなどで触れたときにビクッとしたり逃げようとしないか」も確認しておきましょう。もし、そのような反応が見られた時には触れた部分の筋肉・関節などに問題が起きて痛みを感じているかもしれません

歩き方

歩くリズムは騎乗中のほうが分かりやすい可能性もあるため、クールダウンをしながら馬が歩くリズムにも目を向けましょう。また、洗い場までの移動や、可能性あればお手入れ後の曳き馬では、足の運びも確認します。

もし特定の脚に体重を乗せたときだけガクンという振動を感じたり、明らかに1本だけ地面についている時間が短い脚があったりするのは異常のサインです。もし発見したら、乗馬クラブのスタッフなどに相談してみましょう。

まとめ

乗馬を始めたときに「レッスンの後はクールダウンをして、こういう手順でお手入れをして…」と教わると、徐々に作業全体がルーチン化してしまうかもしれません。

しかし、一つひとつのお手入れが馬の健康を保つために大切な役割を果たしています。ぜひ、レッスンが終わったら感謝の気持ちを込めて、しっかりとお手入れをしてあげましょう。

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