年金制度の落とし穴…配偶者が亡くなっても〈遺族年金〉をもらえない!? 妻を亡くした54歳夫の悲劇【お金のプロが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの人にとって、老後の主な収入源は「年金」となります。一方で、改定を繰り返して複雑になった年金制度をきちんと理解しているという人はどれほどいるでしょうか。そこで今回、「遺族年金」のしくみと「将来もらえる年金」について、『老後のお金、本当に足りますか?』(オレンジページ)著者で家計再生コンサルタントの横山光昭氏が解説します。

誰でももらえるわけではない…「遺族年金」の受給要件

妻に先立たれた場合、夫は「55歳以上」でなければ遺族年金はもらえない

配偶者が60歳〜64歳で亡くなった場合、条件を満たしていれば遺族年金がもらえます。国民年金加入者は「遺族基礎年金」、厚生年金加入者は、遺族基礎年金に「遺族厚生年金」が上乗せされます。

遺族基礎年金は、死亡した人に配偶者と子供がいる場合、配偶者又は子供に、子が18歳になる3月末まで給付されます(収入により受給要件あり)。

もし子供がいない夫婦で厚生年金加入者の夫が死亡した場合は、妻は「厚生年金部分」のみを受給することになります。子供がおらず妻が30歳未満の場合は、給付期間は5年間です。

ただし、遺族厚生年金をもらえる条件は夫と妻で異なります。妻が死亡した場合、死亡時の段階で夫が55歳以上という条件があり、受給開始は60歳から。夫が死亡した場合、妻には年齢等の条件はありません。

<共通の条件>

●国民年金に加入していて日本国内に住所があり、死亡時の年齢が60歳以上65歳未満

●老齢基礎年金を受給していた、もしくは老齢基礎年金の受給資格を満たしていた

<厚生年金部分の条件>
(次の①〜③のいずれか高いものを受給)

①夫の老齢厚生年金の4分の3

②夫の老齢厚生年金の2分の1と妻の老齢厚生年金の2分の1の合計

③妻の老齢厚生年金

支払った分返ってくるの?…「年金」の行く末

予想金額から大幅には外れない予定だが、インフレ※の場合大きく減る可能性も

「どうせ年金なんか払っていても、自分たちが高齢者になる頃にはもらえない」

こんな声を聞きます。これは本当でしょうか?

ここで、国民年金の実際の給付金額を見てみましょう。2000年からの推移を見ると、確かに給付額自体は昨年までは下降傾向だったことがわかります。

[図表1]国民年金保険料給付額の推移 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」より

これはあくまでも現在の支給金額であり、今現役で年金を納付している世代に関しては、将来もらえるであろうと推測されている金額から大幅に変わる可能性は少ないと言われています。

ただ、シミュレーションはあくまでも実績に基づく概算なので、賃金や物価の状況により多少増減する可能性があります。

また、インフレーションが起きて貨幣の価値が大幅に変わった場合は、従来のシミュレーション通りの金額が支給されないか、支給されても生活費をまかなうのが厳しいケースも考えられるでしょう。

物価高をはじめとした社会情勢がどう変化していくか、正確に予想することはできません。だからこそ、老後に向けたマネープランが重要なのです。

横山 光昭
株式会社マイエフピー 代表
家計再生コンサルタント

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