蝶のような妖しさ…思わず魅了される『ガンダム』シリーズ“翼の生えたMS”の魅力

バンダイのプラモデル『HGUC 1/144 V2ガンダム』(機動戦士Vガンダム)

多彩なデザインの機体が登場する『ガンダム』シリーズのなかには、見る者の目を惹く美しい翼を持つMS(モビルスーツ)が存在する。その翼は機体ごとにさまざまな機能を備えているのだが、あくまでも戦闘兵器であるガンダムたちに翼が生えることで優美さがプラスされ、一目見ただけでそのカッコよさに思わず魅了されてしまう。

今回はそんな『ガンダム』シリーズに登場する、翼を持つMSたちの魅力に迫っていきたい。

■仲間を勝利へと導くVの翼「V2ガンダム」

まずは『機動戦士Ⅴガンダム』より、ウッソ・エヴィンが搭乗した「Ⅴ2ガンダム」を紹介したい。

胸部から背部に伸びる黄色い「V」字のラインが特徴的なV2ガンダム。“ミノフスキー・ドライブ”というシステムを搭載しており、圧縮されたミノフスキー粒子がウイングバインダーから放出されると、“光の翼”と呼ばれる広域のビーム兵器となるのだ。

推進力を得るという“ミノフスキー・ドライブ”本来の使用法とは異なるうえ、翼での攻撃は少々勝手が悪いように思えたが、ウッソが類まれなる戦闘センスを発揮したことでその力を120%活かせていた。

実際の翼のように、光の翼を自由に羽ばたかせながら飛ぶV2ガンダム。触れたMSが地上に落ちていく様との対比も相まって、勇ましさが際立っていた。

時に巨大なビームサーベルとして、時に巨大なビームシールドとして戦場で瞬く光の翼は、リガ・ミリティアを照らすまさに希望の光となったのである。

『Vガンダム』における下剋上の様相にも見事にマッチした、作品を象徴する機体であると言えるだろう。

■宇宙の闇に映える天使の羽根「ウイングガンダム」

翼を持つガンダムを挙げる際に欠かせないのが、『新機動戦記ガンダムW』に登場する「ウイングガンダム」だろう。

その名に「ウイング」を冠しているだけあって、背中に備えた巨大なウイングスラスターはウイングガンダムの機動力の高さを象徴するものとなっている。物語中盤で登場したウイングガンダムゼロの翼はスラスター感のほうが強く、言うなれば巨大な4つの羽根のようなデザインだった。

しかし、本編の後日談を描いたOVAである『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』でMSデザインがあらためられたウイングガンダムゼロ(※媒体によってウイングガンダムゼロカスタムとも呼称される)は、翼の要素をゴリ押ししたデザインとなっているのだ。

赤・青・黄のカラーリングがすべて排除され純白となったその翼は機体全体を覆えるほど巨大になり、スラスターとしてだけでなく戦闘時のシールドや大気圏突入時の摩擦熱保護としての役割も担っている。

初登場時に翼を大きく広げた際には、ガンダニュウム合金の剥離した粒子が羽根のように舞っている描写も相まって天使を連想させるほどに美しい機体となっており、ファンの間でも好きなMSとして挙げられることが多い機体だ。

かくいう筆者も、学生時代にウイングガンダムゼロのプラモデルを自室の電気の紐に吊るして、その美しさにニヤついていたほどに好きな機体である。

■無数の残像が敵に絶望の運命を決定づける「デスティニーガンダム」

最後は、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に登場した「デスティニーガンダム」を紹介しよう。

シン・アスカの愛機であるデスティニーガンダムは、背中に巨大なウイングバインダーを背負い、黒と深紅のカラーリングが威圧感を醸し出しているMSだ。

“ヴォワチュール・リュミエール”という惑星間航行システムを軍事転用した技術を搭載したその翼は、発動することでピンク色の光を発し、まるで蝶のような美しい見た目へと変貌する。光の粒子を噴射することで得られる機動力は凄まじく、一騎打ちはもちろん乱戦においても驚異的な加速で敵機を翻弄することが可能なのである。

極めつけは、翼から“ミラージュコロイド”を散布することで作り出されるデスティニーガンダムの残像である。通常の機体では得られない加速と無数の残像をもって敵を幻惑する様子は、まさに蝶のような妖しささえ感じさせる。

まばゆい光の翼とともに残像が尾を引くスピード感ある戦闘のカッコ良さに加え、それを感情のままに駆るシンの猛々しさが見事にマッチしており、シンが乗ってこそのデスティニーガンダムだと感じさせてくれる魅力的な機体である。

兵器という観点から見ても、「翼」という形状が合理的なものなのかは、ファンであっても正直コメントしづらいところではある。しかし人型のMSに翼が生えているということにはデザイン的にも多くの人がカッコ良さを感じることだろう。

それはまたパイロットたちも同じで、車に対する愛着が湧くのと同様に「自身のMSがカッコいい」という事実は、少なからず士気の高揚に繋がっているのではないだろうか?
なんにせよ、本記事を通して筆者が伝えたかったことはただ一つ、「翼はカッコいい」ということである。このシンプルな事実に、多くの人が共感してくれることを切に願う。

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