大谷は口座を3年放置のだらしなさ…悲劇を招いた「野球さえ上手ければ尊敬される」風潮

大谷(右)と水原容疑者(C)共同通信社

水原一平容疑者(39)の賭博スキャンダルにおいて、最大の疑問のひとつは大谷翔平(29=ドジャース)の口座からどうやって約24億円もの大金を本人に知られず盗むことができたのか、だ。

この疑問について大谷の同僚でドジャースの開幕投手を務めたグラスノー(30)は、米メディアの音声動画配信サービスでこう言っている。

「私も含めたほとんどの人が、自分の口座をチェックしていないし、ほとんどのアスリートが口座について何もわかっていない。ストレスのかかることをなくしたいんだ。私は自分のスタッフを長い間、信用している」

昨年12月、レイズからトレードでドジャースに加入したグラスノーは5年総額200億円超の高給取り。ここで言う「ほとんどの人」も「ほとんどのアスリート」も同様に山ほど稼いでいる連中だろう。だから10年総額1000億円超の大谷が、自分の口座をチェックしなくても不思議じゃないというのだ。

とはいえ、米連邦捜査局が提出した訴状によれば、大谷は2018年に口座を開設してから21年まで口座にアクセスした履歴すらないという。この口座は大谷が日本ハムからエンゼルスに移籍した際、水原容疑者とともに開設、エンゼルス時代の給料が振り込まれていた。

スポンサー料など大谷の年間の副収入は、メジャートップの98億円といわれる。実際問題、給料に手を付ける必要がないのかもしれないが、3年もの間、自分の口座にアクセスすらしない、稼いだ金額がどうなっているか確かめようともしないなんてのはフツーじゃない。

米スポーツ専門局「ESPN」は水原容疑者による大谷の口座への不正アクセスを見過ごした責任について「会計士や代理人の明らかなミス」と報道。ドジャースの地元紙の「ロサンゼルス・タイムズ」も「大谷はまず代理人のネズ・バレロを解任し、彼の危機管理担当広報らをクビにすべきだ」と書いた。本来の業務である顧客の財産管理ができない代理人にはもちろん大きな非があるが、何でもかんでもすべて人任せにしていたのだから、被害者の大谷はある意味、自業自得ではないか。

グラスノーが「ストレスのかかることをなくしたい」と言うように、それだけ野球に集中、グラウンド外のことに神経を使わずにいるからこそ、グラスノーや大谷のようにメジャーで大金を稼ぐ選手になれたのだろう。

大谷は昨年、NHKのインタビューで勝負球のスイーパーをどう磨いていくかについてこう言っている。

「どういう軌道で曲がっているとか、平均的なスライダーの曲がりと球速、どのくらいのところで曲がり始めているか、平均値からどれくらいズレているかが打ちにくさに関わってくる。あとは浮力をちょっと上げて、その代わり横幅がちょっと狭くなったりとか、浮力を落とす代わりに横幅を広くしようとか、そういう感じ。ピッチングはデザインみたいな感じと言われているので」

ひとつの球種についてここまで考えている投手がどれだけいるか。食事は好きなものを食べるのではなく、あくまでも体をつくるため。1年前のWBCではパスタに塩をかけて食べると言って周囲を仰天させた。酒も積極的に飲むわけではない。ポルシェの高級車を乗り回し、高級ブランドのHUGO BOSSに身を包んでいるものの、いずれもスポンサー契約を結んでいるから。嗜好品にカネをかけるタイプではない。メジャー4年目が終了した21年11月、日本記者クラブで会見した際には、カネの使い道を聞かれ「特に消費することもないので、いまのところはたまっていく一方です」と答えた。

米メディアがハワイに約25億5000万円で別荘を購入したと報じたが、優雅なバカンスを過ごすためではない。投打の練習施設が完備される予定だそうだから、オフにみっちり汗を流すつもりなのだろう。

グラウンド外には目もくれずに野球一筋。その結果、本塁打王のタイトルや2度のMVPを獲得。プロスポーツ界史上最高額の10年総額1000億円超でドジャース入り、米国のプロスポーツ界を代表するスーパースターになった。

米紙「ワシントン・ポスト」(電子版)によれば、違法賭博の胴元であるマシュー・ボウヤー氏の弁護士は、水原容疑者が借金でクビが回らなくなるまで賭博を続けられた理由について「彼は大谷の友達だったから」と言ったという。大金を稼ぎながら自分の口座を見もしない、野球のことしかアタマにない大谷はだから狙われたのだ。

野球さえうまければ人々に評価、尊敬されるという風潮は洋の東西を問わないし、それが結果としてスポーツバカを量産することになる。

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記事本文にもあるが、今回の一件で代理人を筆頭とした「チーム大谷」が機能していなかったことが露呈した。それどころか、「大谷は食い物にされているのでは」という見方が出てきているほどだ。

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