更年期のホットフラッシュ 水分補給だけでは改善できない プロが教える「食養生」

日本人の平均閉経年齢は約50歳(写真はイメージ)【写真:写真AC】

病気ではないのにだるかったり、イライラしたり、「なんとなく不調」を感じることはありませんか。先人の知恵が詰まった薬膳では、春は心身が不安定になりやすい時季ととらえ、食養生を行うそうです。「Hint-Pot」では、更年期の女性の元気をサポートする、国際中医薬膳師のかみむら佳子さんによる連載をスタート。第2回は、汗が止まらなくなるホットフラッシュの症状に当てはまる「陰虚(いんきょ)」や、症状改善のための食養生についてお届けします。

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汗が止まらなくて恥ずかしい… 更年期に出やすいホットフラッシュ症状

大事な会議中、急に顔が熱くなって汗が止まらず、会議に集中できない。若い人たちとの楽しい会食中に、汗が止まらず心配されてしまった。電車に乗った途端に汗が吹き出し、上着を脱ぎたいのに満員電車で脱げず、顔の汗を拭き続ける――。

ホットフラッシュによる発汗は不意を突いて起こり、これに立ち向かおうと意識すればするほど、ますます汗が止まらなくなるという“負のスパイラル”に陥ります。更年期症状があっても、日々明るく前向きに過ごしたいと気持ちを奮い立たせても、滝のような汗をかくたびに憂鬱な気分になる方も多いのではないでしょうか……。

とくに気温が上昇するこれからの季節は、ホットフラッシュ(ほてりやのぼせ)を感じている更年期の人にとって、余計に負担がかかりやすくなります。ただでさえ汗の出しすぎで体の中の水分や潤いがなくなり、体に熱がこもった状態です。そこに、季節による暑さも加わってさらに汗をかくことが増え、体はますます潤い不足になります。

この潤い不足の状態を中医学では「陰虚」といいます。

水分を摂っているのになぜ? 水だけではなく血の補充も必要

私は薬膳講座で体質のチェックをするのですが、陰虚タイプと出た多くの方から「水分はよく摂っています」というお答えがあります。

もちろん水分摂取は大切です。ただ、陰虚体質の体をたとえるなら、真夏の熱せられたアスファルト道路のようなもの。打ち水をしてもすぐ蒸発してしまう、そんな状態です。ですから、熱を持った体にいくら水分補給をしても、潤いはもたらされません。

中医学には「津血同源(しんけつどうげん)」という言葉があります。体の正常な水分である「津液」は、血液を含む栄養「血」と同じ源から生まれ、どちらかが不足すれば転化して補い合う関係にあるという考え方です。つまり陰虚という潤い不足の状態は、水分である津液とともに血も補充する必要があります。

めかぶに長芋、ミニトマト、キュウリを食べやすく切る。白ゴマを加えて、麺つゆやポン酢で和えたら豆腐の上に【写真:かみむら佳子】

陰虚改善には体の熱を冷ます食材を サウナやスポーツにも注意

薬膳では、ほてりやのぼせを伴う陰虚の状態を改善するために、体の熱を冷まして、津液や血の補充に役立つ食材を用います。たとえば、みずみずしい野菜や果物、海藻、貝類、カニ、豚肉、山芋、豆腐、白ゴマ、黒ゴマ、キクラゲ、チーズ、雑穀などです。

とくに長芋や大和芋、自然薯などの山芋はおすすめです。山芋は、薬膳ではアンチエイジングの効能が期待される食材であり、生の状態で食べることで潤いを体に補います。

逆に、おすすめしない食材もあります。コショウや唐辛子、ニンニク、山椒、からしなど食べると体を熱くするスパイス類です。汗をかきながら食べる辛すぎる料理なども避けたほうが良いでしょう。

日常では、サウナや汗をかきすぎるスポーツなども潤い不足を助長させるので注意が必要です。

中医学では、陰虚体質になると体に熱がこもる以外に、便秘がちになったり、肌や髪も乾燥したりして老化を早めるともいわれています。外見にも徐々に潤い不足が現れるので、日々の食養生や過ごし方を工夫しましょう。

かみむら 佳子(かみむら・けいこ)
大学卒業後、ハウスメーカーの営業職にて勤務後、28歳でフードコーディネータースクールに通い、アシスタントを経て独立。35歳で第2子流産後に続いた体調不良をきっかけに、薬膳を学び始める。「あなたスタイル薬膳RKazen」を主宰し、身近な食材で手軽に養生を実践する簡単薬膳や中医学の指導、セミナーなどで活動中。

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