古江彩佳も「いいお姉さん」と惜別のハグ 夕暮れの18番グリーンで行われたユ・ソヨンの“感動のセレモニー”

古江彩佳(右)とユ・ソヨンが惜別のハグ(撮影:南しずか)

<シェブロン選手権 2日目◇19日◇ザ・クラブ at カールトン・ウッズ(米テキサス州)◇6889ヤード・パー72>

夕方を迎えた大会2日目の18番グリーンが、感動に包まれた。3月に今大会限りでの現役引退を発表していたメジャー2勝(米通算6勝)のユ・ソヨン(韓国)が、予選落ちとなるトータル7オーバーで最後のラウンドを終えると、待ち構えていた多くの選手、関係者がその周りに集まった。ハグ、花束、シャンパンを頭からかけるなど、それぞれが労いの気持ちを表現。33歳はこの輪のなかで涙を止めることができなかった。

「今は麻痺しているみたい。これが現実だなんて信じられない。誰に引退を迫られたわけではなく、これは自分で決めたこと。それでも、やっぱり現実だって信じられないの」

ツアープロとしてのキャリアを終えた心境を、こう話す。ソウル出身のソヨンは、まだ韓国ツアー参戦中だった2011年に出場した「全米女子オープン」で優勝。米国ツアーでの初勝利をメジャー大会で達成した。翌年から米国に渡ると、17年には「ANAインスピレーション」(現在のシェブロン選手権)でメジャー2勝目をつかみとり、同年には世界ランキング1位の座にもついた。18年には「日本女子オープン」も制している。

流した涙については、「今週は悲しい週ではなく、お祝いの週にしたかった。とても感動的だった。たくさんの人が私のところに来て、祝福し、温かい言葉をかけてくれた。こんな気持ちは滅多に味わえない。もしかしたら、これが最初で最後かもしれない」と説明する。自らの“門出”を祝ってくれた人々への感謝の証ともいえる。

そのセレモニーの参加者のなかには、一組前でプレーを終えていた古江彩佳の姿も。ソヨンは“日本からの後輩”を目にすると「Ayaka~」と言って、ハグを求めた。古江は 「長い間活躍していた選手。自分がアメリカに行くと決めたエビアン(21年のエビアン選手権)で、初めて一緒に回ってそれが思い出に残っています。ツアーでも、よく話しかけてくれて、最後に挨拶をしたいと思っていました。いいお姉さんです」と、グリーン脇で待っていた理由を明かす。

ソヨンはラウンド後のインタビューの最後を「選手たちには本当に感謝しているわ。みんながいたから、私はもっといいゴルファーになりたいとずっと思うことができたの。そしてファンの皆さん、どんなプレーをしてもいつも応援してくれて本当に本当に感謝しています。たくさんの愛を送りたい」というメッセージで締めくくった。

この大会を引退試合にしようと決めた理由は、「最後に勝ったメジャーがこの大会。いい思い出があるから、ここで」というものだが、その決断が間違っていなかったことを証明するような感動的なフィナーレだった。またひとりの名選手が、クラブを置いた。(文・間宮輝憲)

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