男性看護師10年で2倍超 島根732、鳥取655人 大学増加や風潮高まり

新人看護師らに業務内容を説明する遠藤篤也副看護師長(手前右)=出雲市塩冶町、島根大学医学部付属病院

 山陰両県の看護職場で「男性活躍」が進んでいる。看護学科のある大学の増加や男性が看護師になる風潮が徐々に高まり、2022年度は島根732人(2012年度比2.2倍)、鳥取655人(同2.5倍)となり、看護師全体で島根7.9%、鳥取8.5%を占める。現場では力仕事や男性患者との関係構築などで役割を果たしている。

 「ここで資料が確認できます」。11日、島根大学医学部付属病院(出雲市塩冶町)でパソコンを前に副看護師長の遠藤篤也さん(50)が新人看護師に業務内容を説明した。

 出雲市出身の遠藤さんは、医療現場で活躍したいとの思いから看護師を志望。新卒で地元の病院に入職したかったが、「男性がいないから採用できない」と断られ、県外病院に就職した。10年弱働いた2006年ごろ、島根大付属病院で募集があり、当時10人に満たなかった男性看護師の一人になった。

 その後、徐々に増え、12年は19人だったが、24年4月時点で82人まで増加。全体の割合は6.0ポイント増の9.6%となった。介助などの力仕事の対応や病気の不安や、女性看護師には打ち明けにくい悩みの相談で医療サービスの幅を広げており、川上利枝看護部長(50)は「心強い存在だ」と喜ぶ。

 全国的に増えており、22年度は11万2164人、全体に占める割合は8.6%となった。島根県看護協会の池田康枝会長は「メディアなどを通じて、働くのが女性だけではないことが浸透しているのではないか」と分析する。

 看護師不足の解消を目指す国の政策もあり、看護学科を設ける大学が全国で増加。文部科学省によると、23年度は13年度比88校増の306校となり、受け皿が広がっているのも背景にありそうだ。

 医療現場で活躍する男性が増える一方、遠藤さんは「当初と比べれば少なくなったが、女性患者の体を拭いたりするときに避けられることがある」と患者対応の課題を口にする。

 島根大付属病院は、患者に担当が男性でいいかどうかを事前に確認するなどの取り組みを進めており、川上看護部長は「患者の声を拾いながら、男女関係なく一人の看護師として、生き生きと働いてもらえるような環境を整えていきたい」と話した。

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