大注目の大型右SB! パリ五輪目ざす大岩ジャパンで関根大輝が躍動「遊び心を持てていて、ちょっと余裕もある」【U-23アジア杯】

187センチの高さと技術力。加えて、戦術理解度に秀でており、運動能力も高い。可能性に満ち溢れた大型右SBが躍動を続けている。

拓殖大サッカー部を退部し、大学生活を1年残して今季から柏レイソルでプロのキャリアをスタートさせた関根大輝。開幕からレギュラーの座を確保し、好調をキープするチームで重要な役割を担っている。

その活躍が認められ、今年3月の国内2連戦では、昨年10月のアジア競技大会以来となる大岩ジャパン入りを果たす。そして、4月15日に開幕したU-23アジアカップ(パリ五輪アジア最終予選を兼ねる)に参戦するチームのスカッドにも組み込まれた。

SBを本職としつつ、CBにも対応できる柔軟性も買われており、限られた人数で最大6試合を戦うことになる今大会では、必要不可欠な人材。特にSBとCBを兼務できる選手が今までいなかったため、その汎用性が重宝されるのは明白だった。

とはいえ、いきなりこれほどの存在感を発揮するとは誰もが予想していなかっただろう。右SBの一番手と目されていたDF半田陸(G大阪)が活動開始直前に胃腸炎を煩い、合流が当初の予定よりも1日遅れた。以降も数日は別メニューで調整していたため、16日のグループステージ初戦の中国戦では、関根にスタメンの機会が回ってきたのだ。

その中国戦では、開始8分に見事なインナーラップで相手を出し抜き、深い位置まで入ってMF山田楓喜(東京V)にリターン。そこからMF松木玖生(FC東京)の先制点が生まれ、いきなりゴールに絡む活躍を見せた。

そして、この試合ではポリバレントな一面も示す。17分にCB西尾隆矢(C大阪)が退場処分となると、一時的にCBにスライドして5分ほどプレー。

「本当にこんなことになるとは思っていなかったんですけど、準備はしていた」と冷静に受け止め、「次の選手が入ってくるまでの間、あの場面でセンターバックができるのは、僕か(内野)貴史君。貴史君が少しやってくれたけど、自分が入ったほうが絶対にいいと思ったので、そこは話し合って決めた」という対応も見事だった。

そして、迎えたUAEとの2戦目。この試合でもスタメンに抜擢されると、中国戦以上のパフォーマンスで、変幻自在の攻撃参加で輝きを放つ。右SBのポジションから積極的に前へ出ると、オーバーラップとインナーラップをうまく使い分けてチャンスに関与。ポケットを取ってボールを受ける動きや、ビルドアップで楔のパスを通すだけではなく、フリーランも効果的で、スペースをうまく作って2列目の山田やインサイドハーフの川﨑颯太(京都)を活かす働きを見せた。

13分にはMF佐藤恵允(ブレーメン)からパスを受けると、ボックス内に持ち運び右足で強烈なシュートを打ち込む。後半はバランスを取り、守備に重きを置いたが、“右SB関根大輝”は大岩ジャパンの新たな武器になる予感を感じさせた。

本人も手応えを得ており、自信を深めている。

「今日は前半のポジショニングとかがすごく良かった。上手くボールを回せましたし、右から崩してチャンスになるシーンも何回もあったので、そこは楓喜君とも良い関係が築けています。個人的にも見えているものやボールタッチの感覚的に遊び心を持てていて、ちょっと余裕もある。そういうところは個人のパフォーマンスとして良かった」

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仲間たちも関根の仕事ぶりに賛辞を送っており、チームに欠かせない選手になりつつあるのが見て取れる。

「山田とセキのコンビは良いと思う。前回もあのコンビを組んでいますし、コミュニケーションが取れているので、チームの攻撃の起点になっていると思います。インナーラップをして、楓喜君が突く。この前の1点目もそうだったし、新しい感じで良い形だった」(藤尾翔太)

「関根の良いところはポジショニング。外だけじゃなくて中に入ってこれるし、技術の高さもある。逆に自分が抜けてスペースを作ってあげることで、関根もやりやすいのかなと。それがうまくハマって良かった」(川﨑)

静岡学園高時代はCB。2年次に松村優太(鹿島)らと全国優勝を果たしたが、1試合しか出番がなく、出場時間も1分に留まった。3年次はコロナ禍の影響でインターハイなどが中止になり、選手権も出場権を逃して日の目を見ずに拓殖大へと進学した。

しかし、大学で人生がガラリと変わる。1年次の後半にSBにコンバートされてから一気に台頭すると、昨年4月に初めてU-22代表候補に選出された。同年6月には遠征メンバーに入り、10月には先述のアジア競技大会に参加。シンデレラストーリーは続き、大学卒業後の加入を1年前倒してプロの世界に飛び込んだ。

昨年の代表活動では大学サッカー部にベースを置いていたため、プレースピードに馴染めずに思うような力を発揮できなかった時期もある。アジア競技大会では決勝で韓国に敗北し、自分の現在地を突きつけられる経験もした。

だが、そうした悔しさは全ての力になり、今の自分に繋がっている。

「僕自身、アジア大会の決勝でレベルの違いを個人として感じた。あの韓国を基準にして、それを頭の中に持って今までプレーをしてきた」というように、世界で戦うための準備を進め、Jの舞台で戦いながら経験を重ねてきた。

不断の努力が実を結び、アジアだけではなく、次のステージでも戦えそうな予感すら漂わせている。

「コンディションが良いですし、変に緊張もしていない。普段と変わらないようなプレーが出せている。アジアの舞台を楽しめているので、今のところは良いパフォーマンスが出せてのびのびとプレーができていると感じています」

次戦は韓国との大一番。日本は2連勝ですでにグループステージ突破が決まっているとはいえ、1位抜けを目ざすうえでは絶対に負けられない。関根にとっても自身の成長を確認するために格好の舞台となる。右肩上がりで成長を続ける背番号4から目が離せない。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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