指が伸びなくなり「ばね指」と診断…整形外科医に聞く症状と治療法、手術はするべき?

 草取り作業直後に右手薬指だけが伸びなくなりました。そっと伸ばすと痛みが腕まで走り、整形外科を受診すると「ばね指」と診断されました。家事はできますが、今後が不安です。ばね指について詳しく教えてください。(福井県福井市、70代女性)

【お答えします】村井惇朗・福井県立病院整形外科医長

「ばね指」はどんな人に起きる?原因や症状は

 ばね指は、指の付け根の第3関節で生じる腱鞘炎です。指を曲げる腱の周囲には腱鞘というトンネルがたくさん存在し、腱がトンネルの中を動く際に擦れて炎症を起こすことで生じます。進行すると腱や腱鞘が腫れて膨らみ、トンネルを通る際に腱がひっかかるため指が伸びなくなり、無理やり力をかけるとばねのようにガクンと伸びるようになるため「ばね指」といわれます。

 非常に多くの方に生じる疾患であり、加齢、使い過ぎ、また基礎疾患(糖尿病、関節リウマチ、血液透析)などが関係します。特に手をたくさん使ってきた方によく生じるため、質問者様もこれまでいろいろとお仕事や家事など頑張ってこられたのではないかと推察します。

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痛みが強い場合は…ステロイド局所注射か手術

 治療としては、炎症が落ち着けば痛みや指のひっかかりは改善することが多く、初期では傷んだ指を動かし過ぎないように安静にし、痛み止めの湿布や塗り薬などを使うことで改善することも多いです。しかし、日常生活で手を安静にすることは困難なこともあり、またひっかかりや痛みの程度が強い場合には、ステロイドの局所注射や手術が必要になります。ステロイドの局所注射は直接的に炎症を抑えるため効果が強く、かなりの方が1、2回の注射で改善を認めます。しかし何カ月かたち再発することもまれではなく、たくさん注射をし過ぎると腱が傷んで断裂してしまうこともあるため、ほとんどの医師は注射の回数を1~3回程度に制限し、それでも症状が強い場合には手術を勧めます。

 手術は腱の周囲の腱鞘を切り離すことで、ひっかかりをなくします。局所麻酔で日帰りで行われることが多く、成功率も90%以上と高いものです。1~2週間で抜糸ができる頃には日常生活動作ならできるようになります。簡単な手術だと思われがちですが、手は非常に繊細な部位であり術後に調子の悪さを訴える方もいます。担当の医師に現在の痛みや日常生活の様子を説明し、しっかり話し合って治療方針を決定してもらうことが重要と考えます。

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