横浜ゴム株式会社は2024年5月から、SUV・ピックアップトラック用タイヤブランド「GEOLANDAR(ジオランダー)」の新商品「GEOLANDAR A/T4(ジオランダー・エイティフォー)」を全世界で販売開始。新しいスタンダードオールテレーンとして、見た目から機能性まで、大幅なグレードアップが図られているようです。さっそく、その本領を確かめてきました。
二種類のサイドウォールデザインは、才色兼備の象徴か?
「ジオランダー」シリーズに新たに加わった「ジオランダー A/T4(エイティフォー)」は、これまでオンロード志向のスタンダードクラスオールテレーンとして人気を博した「ジオランダー
A/T G015(エイティ・ジーゼロイチゴー)」の後継モデルに当たります。
横浜ゴムはジオランダーシリーズ オールテレーンのラインナップに「アグレッシブ」「スタンダード」「コマーシャル」の3カテゴリーを設定、それぞれに1製品を用意してきました。A/T4はG015と同様にスタンダードクラスに位置しますが、キャラクター的にはアグレッシブ系の「ジオランダー X-AT(エックスエーティ)」に近いかもしれません。
G015に対してわかりやすく差別化されているのは、なによりもそのアグレッシブな外観に他ならないからです。パターンナンバーは、「G018(ジーゼロイチハチ)」。オフロードよりのキャラクターを明確に主張するように、力強いブロックパターンとアピアランスの効いたサイドウォールを見せつけています。
もっとも、真っ先にお伝えしておきべきは、実は路面適合の性能評価におけるマルチタレントぶりかもしれません。
接地特性を改良することで、ゴツめのフェイスでありながらG015で好評だった優れた耐摩耗性や車外の静粛性はしっかりキープ、室内騒音は低減。その上で、ドライ・ウエットの走行性能を向上、オフロード性能も一気に高めています。
冬用タイヤとして認められている(スリーピークマウンテン・スノーフレークマーク)」に適合しており、オールシーズンタイヤとしての要件を満たしています。凍結路面こそNGですが、シャーベットや圧雪といった状態に対応できるなど、優れたフレキシビリティはG015からさらにグレードアップされているようです。
いわば才色兼備のイケメン君、といったところ。トレッドパターンに関する搭載技術と、それぞれが生む機能的進化についてまとめると、以下のようになります。
【YOKOHAMA ジオランダー A/T4のイケメンポイント】
●2in1センターブロック
トラクション、オフロード性能向上/耐カット、チッピング性能向上
●シングルピッチショルダーブロック
パターンノイズ低減/乗り心地向上
●3Dディープサイプ
スノートラクション、WET性能向上/DRY性能との両立
●ジグザグ4本主溝
トラクション性能とWET性能の両立/パターンノイズ低減
●ディープ&ワイドショルダー溝
排水、排雪、排土性能向上
●切り欠き溝
オフロード、スノー、WET性能向上
●デュアルサイドウォール
表裏で異なるインパクトを演出/耐カット性、耐久性向上/オフロード走行性向上
不慣れなダートやスノー路面でも安心な好レスポンス
試乗会場となったのは、群馬県にあるオフロードコース「アサマレースウェイ」。そこには、バラエティに富んだテスト車両が用意されていました。コースも、公道ありテクニカル系マッドあり、ややタフなフラットダートあり、と多彩。マルチタレントなA/T4の魅力をチェックするには、うってつけと言えそうです。
まずはRきつめのダートステージ(アサマレースウェイの内周路)の印象から。前日に降った雨のおかげで、アサマレースウェイの火山灰質の路面はややマディなコンディションです。正直、雪道も含めて低ミュー路での運転にはあまり自信がないこともあって、とりあえずグリップ感や操舵レスポンスを確かめるつもりで、恐る恐るコースインしました。
ところが走り出してすぐに、「これは遠慮しなくてよさそうだ」と合点した次第。A/T4の接地感はとても自然で、加速も減速も、思った通りのグリップ感で応えてくれます。タイトなコーナーでは多めにハンドルを切ってみましたが、グリップ抜けや唐突なトラクション変化がない、扱いやすさが魅力のひとつと言えそうです。
コーナーリングライン上に深めに掘られてしまったわだちがあっても、グリップするタイミングが図りやすいので臆さず攻めていける・・・といったら、その懐の深さが理解してもらえるでしょうか。どちらかと言えばルックス重視でオフロードテイストましましになっていると思えたトレッドパターンは、伊達ではありませんでした。
一方、本来はフラットダートらしき外周路のほうは路面状態があまり良好とは言えず、ラフな路面と格闘しながらゆっくり流して走ることになりました。コースサイドはマディ感が強く、イベント運営からは、タイヤがとられるとスピンする可能性もあると注意されました。
そんなシビアなコンディションだからこそ逆に実感されたのは、危険と思しき路面をとても気軽に避けることのできる、微小舵角での反応の正確さでした。速度域に関わらず素直な反応を生む才色兼備のブロックパターンはもちろんですが、G015よりも最適化されたスクエアな接地面が、ラグの少ないレスポンスを生んでいるように思えました。
今回はウエットやスノーの路面を確認することはできませんでしたが、基本的に安心感は高い、と予想できます。これは一度、スノーでの乗り味も確かめてみなくては・・・。などと、本来苦手なはずのシチュエーションにもチャレンジしてみたくなったのは、そんなA/T4の、想像以上の「優しさ」のおかげかもしれません。
アグレッシブな顔つきなのに、街乗りでも操りやすい
一般道を使った公道での試乗でも、そんな優しさは伝わってきます。
実はたまたま先日、知り合いが所有するオフロード4駆(ディーゼルターボ)で1時間ほど、都内を流したばかりだったのですが、履いていたのが別ブランドのオールテレーンタイヤでした。いちおうオンオフ問わず・・・という謳い文句の製品ながら、パターンはそうとうアグレッシブな代物で、乗る前から「これはそうとううるさいかも」と予感していました。
結果、予想通りに加減速のたびにオフロード寄りのタイヤで走っていることを思い知らされることになったのですが、A/T4はそういう意味での自己主張はほどよく控えめ。オフロード志向であることを強く意識させることのない、静粛性と快適性を実現しています。
とくにいわゆる「シティ派」のRAV4で走っていると、その快適さが際立ちます。
コーナリングでは、滑らかにハンドルを切っている限り非常に素直な追従性を感じさせます。少しこじるような操作にすると一瞬、向きを変えるまでにラグがあるようにも思えました。それでも普通の速度で普通に走っているぶんには、ここでもまたアグレッシブな顔つきのオールテレーンを履いていることを、意識させられることはないでしょう。
さすがに、本格オフローダーであるジープ ラングラーではRAV4のようなジェントル感はありませんが、こちらは加減速時のグリップの立ち上がりがとても自然なフィールが好印象でした。
前述した他メーカーのオールテレーンはグリップの立ち上がりが加減速時ともに軽いラグを感じさせ、渋滞の中では微妙な加減速の調整が難しく思えました。A/T4はそのあたりの反応に遅れが少ないので、とくに重量級で強トルクがウリの4輪駆動車で丁寧な運転をしたい時には、余計なストレスをそうとう軽減してくれそうです。
アグレッシブなデザインに加えて、オンオフだけでなくドライ、ウエット、スノーと路面状況を問わない素直さは、さまざまなシーンで「自慢」したくなる才能と言えるでしょう。
もちろん「エイティフォー」というネームもカッコいいのですが、オフヨン仲間たちと語り合う時などはあえて「俺の愛車に履いてるジーゼロイチハチがさ」などと呼ぶのが似合う、ちょっと「相棒的」な頼りになるタイヤと言えそうです。