特集【秋田県内大雨から9か月】② "つなぐ夫の想い" 浸水被害のバイク店 / "防げ被災者の心の孤独" 地域支え合いセンターのお茶っこ会

去年7月の記録的な大雨から9か月が過ぎました。

3回シリーズでお伝えしている「被災地域のいま」。

2回目は秋田市の広面地区と楢山地区の話題です。

大雨による太平川の氾濫や内水氾濫で去年7月秋田市の広面地区と楢山地区は広く浸水被害を受けました。9か月が経って広面地区では、地域の公園の利用が再開されるなど日常の光景が戻りつつあります。

一方でいまだ復旧作業が続く店舗もあります。進藤拓実記者のリポートです。

2024年4月16日放送 ABS news every.より

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去年7月の大雨で、一帯が水に浸かった秋田市の広面近隣公園。

芽吹きの季節になってようやく子どもたちが元気に遊ぶ姿が戻りました。

太平川が氾濫しおよそ1000棟の住宅が浸水被害をうけた広面地区。使えなくなった家財道具の仮置き場となった広面近隣公園は一時、災害廃棄物で埋め尽くされました。その搬出から泥のかき出し、消毒など復旧が進められ、冬を越した今月1日ようやく利用が再開されました。

地域住民が待ち望んでいた公園の利用再開。

土や芝も新しくなり安心して過ごせる場所に生まれ変わりました。

去年7月の大雨では多くの商業施設も浸水被害を受けました。

大雨の直後通称横山金足線沿いの店舗は軒並み営業ができなくなったほか、

そのまま閉店を決めたところもあります。

大雨からほどなく取材で訪れた太平川沿いのバイク店「太平オート」です。

約9か月経ったいまも店の中の様子は以前とほとんど変わっていませんでした。

1968年に開業した太平オート。

特に元号が昭和のころはバイクを買い求める若者たちの人気を集めたといいます。

佐藤眞木子さんは夫とともに50年以上、店を切り盛りしてきました。

しかし、去年7月の大雨で商品のほとんどが水に浸かりいまは郵便配達用のバイクの修繕で生計を立てています。

夫が入院している間に大雨被害にあった佐藤さん。

店の後片付けを1人で進める中、バイクをこよなく愛した夫は去年12月、亡くなりました。

佐藤眞木子さん

「俺の目の黒いうちはね、これは絶対離さない。

そういうバイクだったんです、ね、だから水は被ったんだけどもこのバイクはここに並べておきたいと思うんです」

「私が元気なうちはねこのお店はねこう開けておきたいと思うんです。

ね、ただお客さん来てくれるかどうかはまた別の話なんだけども、

お店そのものはねこのままね、ちゃんと続けていきたいと思う。

続けてっていうかここにこう今まで通りにしておきたいと思うんですね」

いまでは店そのものが心の支えだという佐藤さん。

いまも少しづつ、復旧作業を続けています。

進藤記者

「住宅に目を向けるとまだ片付いていない、

またはようやく復旧工事が始まったというところもありましたが

生活環境はだいぶ元の状態に戻った印象を受けます。」

「一方、時間が経ってから心配になるのが被災者の「心の問題」です。

大雨をきっかけにふさぎ込んでしまう、あるいは孤立してしまうことを防ぐ取り組みを秋田市の楢山地区で取材しました。」

楢山大元町は去年7月の大雨で160世帯余りのうち6割以上の住宅が浸水被害を受けました。

今月12日、大雨被害からの生活再建を支援する地域支え合いセンターの相談員がこの地区を回りました。

「こんにちはー、秋田市社会福祉協議会と申します」

こちらの住宅は一階部分が浸水。相談員から受けた秋田市の応急修理制度の説明をきっかけに、復旧工事が進んだといいます。

今年に入ってから本格的に始まった相談員による訪問活動。

大雨被害にあった住民の健康を気遣いながら復旧工事などで活用できる制度を案内しています。

ただ、住んでいる人に会えるのは3軒に1軒程度。訪問する時間や曜日を変えながら何度も繰り返し足を運んでいます。

訪問活動を続ける中で大きな課題となっているのが住宅の復旧程度や住民の健康状態がなかなか把握しきれないことです。

地域支え合いセンター関明子さん

「やはりなかなかこう訪問1回2回じゃ本音が聞けないっていう場合もあるので

まめに訪問しながら、その人たちの本当の部分のニーズを聞き取りながら、

できる限りそれに沿えるような支援をしていきたいって我々考えてますね」

大雨から9か月。1人でも多くの声を聞く活動が続いています。

「地域支え合いセンター」が訪問活動とあわせて行っている取り組みがもう一つあります。

大雨被害があった地域で開催している「お茶っこ会」です。

家から出て人と触れ合う機会を増やそうと市内各地で開かれているお茶っこ会。

楢山地区ではこの日、新たな試みが行われました。

大雨被害を通してそれぞれ感じたことを話し合い共有する取り組みです。

提案したのは会の参加者でした。

地域の支え合う力がより強くなるのではないかと期待されています。

地域支え合いセンター菊地俊彦さん

「お家で一人でいると、すごく寂しい気持ちになるっていうふうにおっしゃる方がいるんですけども、

毎週毎月のお茶っこ会に参加することが日々の楽しみになっているっていうところで、

お茶っこ会というものが少しずつ地域の一つのコミュニティとして定着しつつあるっていうところでは、

サロンの活動を継続して行ってきた成果ではないかなと考えております」

お茶っこ会の参加者は回を追うごとに増えていて支え合いの輪が少しずつ広がりを見せています。

進藤記者

「地域支え合いセンターのお茶っこ会には

秋田市の職員や司法書士が参加することもあります。」

「開催する地域も増えているということで

今後、大雨に限らずさまざまな困りごとが気軽に相談できるような場になればと感じました。」

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