「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗 チマチマした少子化対策では、我が国の人口は将来半減する。1子あたり1000万円給付といった思い切った多子化政策を実現し、最低でも8000万人台の人口規模を維持せよ!(サムネイルは首相官邸HPより)

「子育てで家計も豊かになる」政策を!

今国会において、少子化対策諸施策の財源確保のため、公的医療保険に上乗せする「支援金制度」の創設が審議されているが、もっと根本的な少子化対策を行わなければ我が国の人口は将来半減する恐れがある。少子化対策ではなく多子化政策に転換すべきであり、その予算もチマチマしたものではなく大胆なものとしなければ手遅れになる。

私は、1子誕生ごとに1000万円給付を提唱してきたが、「子育てが家計の負担」になるのではなく、「子育てで家計も豊かになる」というマインドの転換がなされなければ、出生数は回復しないと考える。

今年1月、日本商工会議所前会頭の三村明夫氏などからなる有識者会議「人口戦略会議」が、岸田文雄首相に提言書を提出した。人口規模を長期的に維持するには、合計特殊出生率を2.07に改善する必要があるというものである。

昨年の出生数は75万8631人で、人口は1億2330万人。我が国の人口のピークは、平成20(2008)年の1億2808万人で、国立社会保障・人口問題研究所は、人口が2056年には1億人を下回り、2100年にはおよそ6300万人に半減するという推計をまとめている。

「人口戦略会議」の提言では、出生率の2.07への改善が2060年の場合、2100年に人口8000万人。2040年に2.07に改善した場合は、2100年に人口9100万人となると推計。なお、出生率が1.36(コロナ前の水準)の場合は、2100年に6300万人。出生率が1.13に悪化した場合は、2100年に5100万人と推計している。

もし、我が国の人口が現状から半減しても、人口規模としてはイギリスやフランスと同様であり、国家運営自体は問題はない。しかし、日本の力の根幹は経済力であり、人口規模は我が国の経済力に直結する。世界第4位のGDPである我が国の人口が半減すれば、GDPの順位はさらに下降する。

1000万円給付は国民全体にとってメリット!

そして、人口規模は国防力でもある。1億人の国民が、侵略に対して国を守るため断固戦うという意志を示せば、侵略を狙う国もおいそれと攻撃することはできない。中国やロシアといった覇権主義の隣国がある我が国にとって、国防のためにも人口規模を大きく保つことは重要である。私は2100年に最低でも8000万人台を維持する必要があると考える。

こうした中、政府は児童手当の拡充を今年12月から行う。所得制限をなくし、第1子と第2子は月額1万円(0〜2歳は1万5千円)、第3子以降は月額3万円と倍増される。中学生、高校生は月額1万円が支給され、高校生への支給は新たに行われる。

拡充は行われるものの、昨年3月の自民党少子化対策調査会の提言では、第2子3万円、第3子以降は6万円としていたので、半分に圧縮された。財源などが問題視されたからである。

しかし、この児童手当の拡充で子供を産み育てようというマインドになるかを友人や後輩に聞いたところ、「拡充は有難いが、果たして積極的に子供を産み育てようというマインド転換に繋がるだろうか」と、ほとんどの人に言われた。

私はやはり、子育てが家計の負担になるのではなく、子育てで家計も豊かになるというマインドの転換のためには、1子あたり1000万円給付を行うべきであると考える。児童手当の月額6万円給付でも中学卒業時までで合計1080万円給付となるが、誕生時に1000万円給付のほうが、よりインパクトは強いと考える。

なお、1000万円給付は多すぎるのではないかという意見をいただくことがあるが、人口規模を維持することは先述の通り国民全体にとってメリットであり、1人の子供が誕生し将来大人となって稼ぐ生涯年収(生涯賃金)は2億2112万円(doda調べ)である。

この賃金を得るために行っている経済活動はその何倍にもなるので、子供1人に対して1000万円を給付することは、むしろとても安い投資なのである。

年間16兆円の財源は国債で賄うべき!

では、財源をどうするのか。

私は、子供国債ないし教育国債を発行すべきであると考える。出生率2.07で出生数は約160万人であるので、年間16兆円の財源が必要であるが、将来への投資であり、将来の子供たちも人口規模の維持でメリットを享受することから、やはり国債で賄うべきである。

将来への投資は建設国債と同様の考え方であり、すでに日本学生支援機構の無利子奨学金は建設国債が流用されている。16兆円の国債は我が国が無理なく発行できる額である。

そして、我が国の人口を一定規模で維持する中で、子供を産み育てる知識をかなり若い段階から得ることが重要であると考える。結婚(初婚)年齢は年々高齢化しており、平成12(2000)年に男性28.8歳、女性27歳であったのが、令和4(2022)年には、男性31.1歳、女性29.7歳と、2歳以上高くなっている。

年齢が高くなればなるほど卵子は老化し、精子も運動率等が低下する。卵子の数は誕生時が一番多く、年齢とともに減っていく。しかし、こうした知識を持っている人が少ない。私も自らが不妊治療に臨むまで、こうした知識の詳細を知らなかった。

これらは性教育ではなく、生物学的教育であるので、私は小学校高学年から積極的に学校で教えていくべきであると考える。文部科学省に働きかけ実現していきたい。

また、所得が伸びないことも、晩婚化や出産の高齢化の原因となっている。一定の貯金ができるまで待ったり、給与がもう少し高くなるまで待ったりしているのが現状である。

民間平均給与は平成9(1997)年の467万円がピークで、その後のリーマンショックや民主党政権下の無策の経済政策により406万円まで下がったが、アベノミクス以降回復し、おととし令和4(2022)年には458万円まで回復、今年は平成9年のピークを上回るとみられる。

これまで、不妊治療の保険適用や産後ケアの助成金拡大など、出産や子育てをしやすい政策を私も実現してきたが、子供を産み育てる環境づくりで何よりも必要なのは所得の向上である。

アベノミクスを完遂しさらなる所得の向上と、1子あたり1000万円給付といった思い切った多子化政策を実現し、我が国が最低でも8000万人台の人口規模を維持しながら大国として輝き続けるよう全力を尽くしていきたい。

残された時間はほとんどない。速やかに実現していきたい。

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和田政宗

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