ISSや太陽望遠鏡など “特別な視点”から見た2024年4月の皆既日食

日本時間2024年4月9日未明、北アメリカでは皆既日食が観測されました。北米各地で撮影された日食の画像はすでにsoraeでもご紹介しましたが、この日食が起きた時の地球や太陽の様子を“特別な視点”から撮影した画像がアメリカ航空宇宙局(NASA)などから公開されています。今回はそのなかから幾つかをご紹介します。

【▲ 米国インディアナ州インディアナポリスで現地時間2024年4月8日に撮影された皆既日食の様子。いわゆるダイヤモンドリングの瞬間が捉えられている(Credit: NASA/Joel Kowsky)】

関連記事
2024年4月に北米で観測された皆既日食 NASAが画像公開(2024年4月9日)

■国際宇宙ステーションから見た「地球に落ちた月の影」

【▲ 国際宇宙ステーション(ISS)で撮影された地球に落ちた月の影。日本時間2024年4月9日4時32分撮影(Credit: NASA)】

最初は地球の高度約400kmを周回する国際宇宙ステーション(ISS)で撮影された画像です。撮影時のISSはカナダのケベック州上空を飛行していました。中央に写っているのは月から落ちた影(本影)で、NASAによると米国のメイン州とカナダのケベック州およびニューブランズウィック州にまたがる範囲が影に覆われています。

【▲ 日食のしくみ(Credit: 国立天文台)】

こちらは国立天文台が作成した日食のしくみの説明図です。先に掲載した画像は、図中で「皆既食が見られる」と注釈された場所を実際に撮影したものとなります。月の影が地球に落ちている様子は視点を宇宙へ移さなければ実際に見ることはできません。ISSから撮影されたこの画像は、宇宙にまで広がった人類の活動を象徴するものの一つと言えます。

■地球を離れた場所から見た「地球に落ちた月の影」

【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の月周回衛星「LRO(ルナー・リコネサンス・オービター)」の光学観測装置「LROC」で撮影された地球に落ちた月の影。日本時間2024年4月9日3時59分撮影(Credit: NASA/GSFC/Arizona State University)】

次はNASAの月周回衛星「LRO(ルナー・リコネサンス・オービター)」の光学観測装置「LROC」で撮影された画像です。約36万km先の地球に落ちた月の影を、月の周回軌道を飛行している探査機の視点から捉えたものとなります。モノクロなので少しわかりにくいものの、メキシコ(Mexico)の位置を示す注釈の上に影が落ちているのがわかります。

【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙天気観測衛星「DSCOVR(ディスカバー)」の光学観測装置「EPIC」で撮影された地球に落ちた月の影。日本時間2024年4月9日4時2分撮影(Credit: NASA EPIC Team)】

続いてはNASAの宇宙天気観測衛星「DSCOVR(ディスカバー)」の光学観測装置「EPIC」で撮影された画像です。DSCOVRは太陽と地球の重力や天体にかかる遠心力が均衡するラグランジュ点のひとつ「L1」(地球から太陽の方向へ約150万km離れたところにある)を周回するような軌道を飛行しながら、太陽風や地球の観測を行っています。この画像はLROが地球を撮影したのと同じ頃に撮影されたもので、北アメリカ大陸の東部付近に落ちた月の影が捉えられています。

【▲ 地球上を移動する月の影(動画)。宇宙天気観測衛星「DSCOVR」の光学観測装置「EPIC」で撮影した画像から作成】
(Credit: NASA EPIC Team)

また、30分間隔で取得されたEPICの画像を使って作成したこちらの動画もあわせて公開されています。映像左側の太平洋に落ちた月の影が徐々に北東へ移動していき、北アメリカ大陸を横切って大西洋へと抜けていく様子がよくわかります。ちなみにDSCOVRは地球から見て月よりも遠い場所を飛行していますが、軌道の関係上必ずしもEPICの視野に月が入るとは限らないため、ここには月そのものは写っていません。

■地上から見た「日食中の太陽表面と月の縁」

【▲ アメリカ国立太陽天文台(NSO)の「ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡」で撮影された部分日食中の太陽表面と月の縁のクローズアップ(Credit: DKIST/NSO/NSF/AURA)】

地球低軌道、月周回軌道、ラグランジュ点(L1)へと徐々に離れていった視点を、最後に地上へ戻してみましょう。こちらはアメリカ国立太陽天文台(NSO)の「ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡」で撮影された部分日食中の太陽表面と月の縁のクローズアップです。

イノウエ望遠鏡があるハワイでは皆既日食は見られず部分日食が観測されました。この画像にはガスの対流によって生じる粒状斑(りゅうじょうはん)に覆われた太陽の表面と、その一部を隠した月の縁が写っています。「地上から日食を観測する」という意味では私たちと変わらない視点ですが、肉眼では見ることができない詳細な太陽表面の様子や、地形を反映したデコボコな月の縁が移動していく様子を見ることができるのは、太陽望遠鏡ならではの視点と言えます。

また、イノウエ望遠鏡も日食の様子を連続撮影しており、取得された画像を使って作成された動画があわせて公開されています。

【▲ 太陽表面のクローズアップと移動していく月の縁(動画)。ダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡で撮影した画像から作成】
(Credit: DKIST/NSO/NSF/AURA)

Source

  • NASA \- Gateway to Astronaut Photography of Earth
  • LROC \- 2024 Eclipse as Seen From The Moon
  • NASA \- EPIC :: DSCOVR
  • NSO \- The Eclipse as Seen by the Daniel K. Inouye Solar Telescope in Maui
  • 国立天文台 \- 日食とは

文・編集/sorae編集部

© 株式会社sorae