ライバルで同志、助け合いつつ競い合う…7つの島に有権者501人 定数8を10人が競う十島村議選を記者がルポった

並んで住民にあいさつする十島村議選候補ら=17日、同村

 16日に告示された鹿児島県十島村議選(定数8)は、10人いる候補者のうち一部が村営船「フェリーとしま2」で島々を巡り、演説を重ねた。有人7島に短時間ずつ停泊する十島航路の「選挙便」に記者が同乗し、助け合いつつも競い合う同村ならではの選挙戦を追った。

 16日午前8時半、立候補受け付け会場のある口之島地区コミュニティセンターに、現新4人が現れた。候補者10人はほぼ顔見知り同士。ある現職は「みんな仕事があるから」と、別の島に住む候補の届け出を代理で提出した。選挙の「七つ道具」は、選挙便に乗る別の候補に手渡した。

 口之島では、集落の中心部で3人が演説。マイクを握る順番はじゃんけんで決めた。集まった住民約20人を前に、産業振興や人口減対策、議会活性化を訴えた。マイクを握る時、名前を記したのぼり旗は持ちづらい。そこで一人の候補の支援者が全員分を持った。

 同村議選はポスター掲示場や選挙公報がない。演説は貴重なアピールの場で、新人は「とにかく顔と名前を知ってもらわないと」と熱っぽく語った。

 選挙便は一部の候補を乗せて口之島を離れ、夕方に中之島へ。17日は早朝に中之島を出港し、諏訪之瀬島、平島、悪石島、小宝島、宝島にそれぞれ1時間半程度滞在。各島に住む候補者を加えながら、15~20人ほどの聴衆への訴えが続いた。

 有人7島のうち、唯一立候補者がいない諏訪之瀬島。各候補は、自分が住む島だけでなく村全体のことを考える姿勢を強調した。演説を聴いた30代男性は「どれほど気持ちをくみ取ってくれるだろうか」と話し、候補を見定めていた。

 選挙便の船内では、候補同士が一緒に食事を取る場面も。村政の課題を語り合い、「当局へのチェック機能を強くしよう」と意気込んだが、「当選したらね」との条件付き。それぞれの思いを抱えながら、各島に戻った。

 任期満了に伴う十島村議会議員選の投票は21日午前7時~午後4時、有人7島の各投票所である。22日午前8時半から口之島地区コミュニティセンターで開票され、同10時には当落が判明する見込み。

 定数8に対し現職5、新人5の計10人が立候補している。いずれも無所属。島ごとの内訳は口之島2、中之島3、平島1、悪石島1、小宝島1、宝島2。諏訪之瀬島からの立候補はない。

 15日現在の選挙人名簿登録者数は501人(男269人、女232人)。前回の投票率は92.04%だった。

十島村議選候補の演説を聴く住民=17日、同村

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