佐川満男さん死去 NHK朝ドラ支えた名バイプレーヤー 映画「あまろっく」公開初日を待って発表

 佐川満男さん=2010年12月撮影

 NHK連続テレビ小説「おちょやん」などに出演した、歌手で俳優の佐川満男さんが12日午前3時14分、胆のう炎のため神戸市内の病院で死去した。84歳。神戸市出身。葬儀は近親者で行った。所属事務所によると、佐川さんは昨年、現在公開中の映画「あまろっく」の撮影中にも体調不良を訴えており、今年3月から入院。その後に容体が急変したという。昭和、平成、令和と3時代で輝いた名優が、天国へと旅立った。

 歌手として俳優として魅了してきたバイプレーヤーが、静かに人生の幕を閉じた。

 所属事務所によると、佐川さんは今年3月から入院。その後に容体が急変したという。作品は19日に公開初日を迎えたが、影響を考えて共演者にも訃報は伝えられず、初日終了を待って、この日の発表となったという。

 佐川さんは神戸市出身で、1960年に「佐川ミツオ」名義でシングル「二人の並木径」を発売し歌手デビュー。68年には本名の佐川満男名義で発売した「今は幸せかい」が大ヒットを記録し、同曲などでNHK紅白歌合戦に4回出場した。

 俳優としても渋い演技で存在感を示し、NHK連続テレビ小説には94年の「ぴあの」を皮切りに「おちょやん」など10作品に出演した。私生活では71年に歌手・伊東ゆかりと結婚し、一女(歌手・宙美)をもうけたが75年に離婚。2003年には胃がんの摘出手術を行い、18年にも脊柱管狭窄症の手術を行うなど、病に悩まされていた。

 訃報を受け、「あまろっく」の公式X(旧ツイッター)は佐川さんの訃報を伝え、メガホンを取った中村和宏監督の追悼コメントを掲載。亡くなった日が同作の先行上映初日だったことを明かし、さらに「初めはご自身の高齢を理由に謙虚にお断りされましたが、最終的には『これを最後の仕事にする』という決意を示してくださいました」と出演オファーの際の秘話を明かした。

 体力の限界まで作品と向き合ってきた佐川さん。中村監督は「佐川さんの献身と情熱は、撮影中も変わることがなく、彼のプロフェッショナリズムと温かな人柄は、キャスト、スタッフ全員にとって大きな支えとなりました」などと感謝の思いをつづった。

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