「ハーブは暮らしに役立ててこそ、楽しい!」と話すのは、長年にわたってハーブを育て、その利用法を研究してきた桐原春子さん。本連載では、毎回1種類のハーブを取り上げ、栽培方法や活用方法、歴史などを教えていただきます。第33回は【ナスタチウム】です。
本連載の他、桐原春子さんの記事はをご覧ください。
花も葉も食べられる【ナスタチウム】
清楚な雰囲気の花が多いハーブ類の中で、大きくて派手な花を咲かせるナスタチウム。
ガーデニングで人気ですが、花や葉はエディブルフラワーとして食用にもできます。
別名/キンレンカ(和名)、ノウゼンハレン(和名)、インディアンクレス
科名/ノウゼンハレン科
性質/一年草
草丈/30〜300㎝
可愛い姿でも、味はピリッと刺激的
ナスタチウムはペルー、コロンビア、ブラジルが原産で本来は多年草ですが、暑さ、寒さに弱いため一般には一年草として扱われます。
「16世紀にスペインの探検家によってヨーロッパにもたらされ、食用、薬用として利用されました。花がきれいなことから、後に園芸植物としても人気に」と桐原春子さん。
日本には19世紀半ばに渡来し、花がノウゼンカズラ、葉がハスに似ていることから凌霄葉蓮(ノウゼンハレン)の名がついたといわれます。
「原種は花の後部に『距(きょ)』と呼ばれる突起があり、つる性になります。園芸品種は距のないものが多く、草丈も短めです」
初夏から秋にかけてカラフルな花をいっぱいに咲かせ、ハーブガーデンには欠かせない存在です。ヨーロッパでも盛んに利用され、桐原さんはフランスのモネの庭で、大きなアーチの足元を覆い尽くすナスタチウムに感動したといいます。
「花、葉、つぼみが生で食べられるのもメリットです。クレソンのようなピリッとした辛みがあり、サラダやサンドイッチに加えると味のアクセントに。塩漬けにした若い果実をビネガーに漬けると、ケイパーのように使えます。食用にする場合は、無農薬栽培の苗を選んで。刺激があるので食べすぎに注意しましょう」
定期的な液肥できれいに咲かせる
栽培はやや注意が必要。温暖地では、盛夏に花は咲きにくく、秋になると再び開花します。
「液肥を与えると長い間よく花が咲きます。地植えでは冬の寒さで枯れてしまいますが、鉢植えにして室内に取り込むか、暖地であれば緩衝用のプチプチシートなどで覆って鉢ごと保護すると、冬も開花します」
吊るして飾るとより印象的
小さなハンモックにナスタチウムの鉢植えをのせ、室内の窓辺に飾ってみました。ほどよくしだれる茎が動きを生み、ハスのような丸い葉が逆光に透けてきれいです。
赤、オレンジ、黄、ピンク、紫、八重咲きなど、花色も形も多彩で、斑入り葉の種類もあります。
室内で楽しむ際は、水が垂れないよう鉢をポリ袋などで包むか、水受け皿を忘れずに。
活用アイデア① ナスタチウムのオードブル
葉にレタスの10倍のビタミンCを含むといわれるナスタチウムは、飾るだけじゃもったいない。タラゴンなどのハーブを入れて焼いたオムレツ、ソーセージ、チマサンチュ、チャービル、ドライのイチジクと一緒に、葉と花を盛りつけました。
華やかでパーティーにもぴったりです。
活用アイデア② ナスタチウムのコラージュ
ナスタチウムを育てながら、飾って楽しむクラフトです。市販の額にナスタチウムの写真や絵を自由に貼り、極小のナスタチウムの鉢植えとリボンもオン。リボンは二つ折りにし、中に好みの精油をしみ込ませたティッシュを挟み、細いリボンで結んで。
枠はペイントし、ナスタチウムの葉を接着剤で貼りつけました。
直径3cmの素焼き鉢に水で濡らした水ごけをぎゅっと詰め、ナスタチウムの枝を切ってさします。
額に飾る際は、ワイヤを裏板に通して作った鉢受けにさし込んで。
乾きやすいので水ぎれに注意。
撮影/川部米応
※この記事は「ゆうゆう」2022年1月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
監修者
園芸研究家 桐原春子
英国ハーブソサエティー終身会員。長年、自宅でさまざまな植物を育て、家庭での実用的かつ美しい庭づくりを提唱。国内外の多くの庭を訪れ、ハーブの歴史、育て方、利用法を研究。カルチャースクールでハーブ教室の講師を務める。『知識ゼロからの食べる庭づくり』(幻冬舎)など著書多数。ブログ「桐原春子のハーブダイヤリー」やインスタグラムでも情報を発信中。