新人社員の“コミュ力”は本当に低いのか…上司の半数近くが「困った」と回答

経験不足なだけ?(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

新卒が入社してはや3週間。人手不足時代の“金の卵”だけに、上司や先輩には口に出せない不満もあるようだ。

管理部門・士業の総合転職サービス「MS Career」を運営するMS-Japanが11日に発表した「新卒社員への『上司のホンネ』実態調査」によると、新入社員に「困った」と感じた経験(複数回答)のトップは「コミュニケーション能力」の47.6%だった。「自発性や責任感」(40.4%)、「ビジネスマナーや常識」(39.2%)と続く。

もっとも、最初からコミュ力が高くて自発性があって礼儀正しい新人がいたら、上司の出る幕がない。ゼネコンの50代マネジャーがこう言う。

「自分の若い頃を考えてみても、最初からコミュ力が高かったとは思えません。ひと昔前は半ば強引に飲みニケーションとかに付き合わされているうちに訓練されて、人間関係のスキルが身についていったものです。でも今は違う。パワハラだ、セクハラだと騒がれるのを恐れて、上司から積極的にコミュニケーションは取らない。若手の顔色をうかがうばかりで、リスクを取ってまで育ててやろうなんて面倒見のいい先輩は絶滅危惧種です」

冒頭の調査でも、上司が新卒との関わりで悩むことのトップは「コミュニケーションでどの程度踏み込んでいいか」。半数近くの48.4%が悩んでいるという結果に。

飲みニケーションの是非はさておき、そもそも今どきの若手もコミュ力がないというより、経験不足なだけじゃないか。「ただ、単純な訓練だけでどうにかなるものでもないと思いますね」と、明大講師の関修氏(心理学)はこう続ける。

「子供の頃からデジタルデバイスに囲まれて育った今どきの20代は、日常のコミュニケーションの基本にSNSがあるわけです。ベースがSNSの平成世代に、“対面”が当たり前だった昭和世代のやり方を重ねたところで、うまく育つわけがありません。彼らには彼らのコミュニケーションの取り方があることを、まず理解した方がいい」

とはいえ、仕事になれば対面のコミュ力が問われる場面も増える。

「コミュ力が高い、低いという以前に種類が違うわけで、別の訓練が必要になる。もともと学習能力はあるので、たとえば取引先との打ち合わせとかプレゼン、接待など、状況別に作法や言葉遣いなどのマニュアルを作って“インストール”してあげれば、うまく対処できるようになるでしょう」(関修氏)

“俺の背中”を見せるだけでは育たないか。

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