日本証券取引所グループ(JPX)は1年で株価が2倍に…快進撃は意外と知られていない?【ベテラン証券マンが教える株のカラクリ】

JPXは1年余りで株価2倍に(C)日刊ゲンダイ

【ベテラン証券マンが教える株のカラクリ】#124

このところ日経平均株価は米国の事情で調整局面に入っているが、先月までの株式市場の好調を象徴する銘柄の話をしたい。東京証券取引所などを傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)だ。東証プライム市場に上場するJPXは、3月27日に4344円の上場来高値をつけ、2022年12月末(1898円)比で129%高の「ダブルバガー(株価2倍)」となった。IT株や半導体関連ではなく、まさに市場のおひざ元の株が1年余りで2倍以上になっていたことは意外と知られていないのではないか。

JPXの株価上昇は、世界の取引所株と比較しても飛び抜けている。22年末から最近までの騰落率は、NY証券取引所を傘下に持つ米インターコンチネンタル取引所の株価が30%高、ロンドン証券取引所グループは34%高にとどまる。相場低迷にあえぐ香港証券取引所にいたっては逆に5割安だ。さらに驚くべきことに、JPXの値上がり率は日経平均株価(50%)やTOPIX(45%)をも大きく上回っている。

JPXの収益構造は、市場利用者からの手数料収入が最も大きく、株高によって売買が活発になり出来高が増えれば、収入は自然と増えていく。東証プライム市場の1日当たりの平均売買代金を調べてみると、22年4~12月は3.3兆円、23年1~12月は3.8兆円、24年1月は4.8兆円、24年2月は5.8兆円と拡大の一途。その結果、JPXの24年3月期は最高益更新の見通しなのだ。

23年からの日本株高の契機となったのは、23年3月に東証がPBR(株価純資産倍率)の低迷する上場企業に対し改善要請をしたことだ。証券取引所が上場企業に何かを要請することは異例であり、日本企業の経営改革を期待した海外勢が日本株を見直したものだ。

つまりはJPXは日本株の上昇をサポートしながら、結果として自分のところの株価もハネ上がらせたわけである。

このように東証=JPXは従来の単なる取引所運営会社から株式市場の旗振り役=司令塔に変身している。その意味で、JPXの株価は今後の日本株の動向を占うバロメーターになるとみている。注視していきたい。 (丸)

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