「老後資金は、いったいいくら必要なのか?」という問いよりも重要なこと

「老後資金2000万円は必要だ!」「いや、2000万円では全然足りない。3000万円は必要だ」「4000万円は必要」「いやいや田舎暮らしをすると年金でも十分に暮らしていける」など、老後資金の必要額は、いろいろな意見があります。

では、正しいのはどれでしょうか? じつは、どの意見も正しいのです。答えは「人それぞれ」なのです。

しかし、「老後資金がいくら必要なのか?」よりも、もっと重要なことがあります。それは老後生活における「収支のバランス」です。このお金が、あなたの老後生活をどんなものにするのかを決定づけます。

今回は、老後生活でもっとも重要な「収支のバランス」についての話をしましょう。


月額の赤字で老後に必要なお金が決まる

老後資金はいくら必要なのかは、年金生活になったときに毎月いくら赤字になるかを計算して、それを死ぬまでの年数で掛けた金額で出すことができます(死ぬ年齢がわからないので、90歳または95歳で計算します)。つまり、毎月の赤字額で、老後に必要なお金が決まるのです。

もし、収支のバランスが取れている場合には、極論になりますが老後資金は0円でもいいということです(もちろん、トラブルに備えるために、必ずある程度の貯蓄は必要です)。

厚生労働省「国民生活基礎調査の概要(2022年)」によると、年金だけの収入で暮らしている人は、44%です。つまり、44%の人は年金だけの収入で家計のバランスを取っているということです。

この44%の人は、貯蓄がないので年金だけに頼らざる得ない人や、夫婦の年金があればそこそこの生活ができるなど、いろんな事情があると思います。

共働き家庭ならば、そんなに不安がらなくても大丈夫?

厚生労働省は、標準的な年金として夫(会社員)と妻(専業主婦)とした年金額を毎年提示しています。それによると2024年の標準的な年金額は、約23万円です。生命保険文化センターの調査によると、老後の最低生活費は23.2万円で、ゆとりのある生活費としては37.9万円です。

つまり、夫が会社員で妻が専業主婦だった場合、年金だけの収入でも、ギリギリの生活を送ることは可能なのです。しかし、ゆとりのある生活とはほど遠いかも知れません。

一方、共働きの夫婦ならばどうでしょう。平均的な年金額で考えると夫の厚生年金16万円、妻は11万円で、合計27万円になります。これでもゆとりのある老後生活には10万円の差がありますが、最低生活に比べれば、少しゆとりがあるといっていいでしょう。

また、夫婦とも会社員だった場合、ダブルで退職金を受け取れるので、老後資金についてもある程度の準備ができそうです。いまは、共働き家庭が増え、専業主婦の家庭の世帯数の約2倍になっています。共働き夫婦ならば、老後生活に極端に困ることはないかもしれません。

しかし、自営業者やフリーランスの人は、基礎年金だけしかありませんから、年金の少ない人は、要注意でしょう。

収支のバランスと予備費に800万円で安心できる老後生活が実現

これでわかるように、老後生活においては、年金などの収入で「収支のバランス」が取れていれば、生活に困ることは少ないでしょう。これを私は「収支のバランス理論」と呼んでいます(私が名付けた法則です)。

ところが、介護が必要になったとき、がんや脳梗塞などの重い病気になったときには、生活費以外にもお金が必要になります。また、住宅のリフォームやメンテナンスなどの費用もかかってくるかも知れません。

そう考えると、ある程度の予備費がないと安心できる生活にはなりません。また、ときには旅行や趣味などにもお金を使いたいものです。では、どのくらい準備しておけばいいのかというと、約800万円あれば安心ではないかと思います。もちろん、それよりも多いに越したことはありません。

800万円の根拠としては、介護にかかる自己負担分は月平均8.3万円、介護期間の平均は5年1カ月のため、総額約510万円(生命保険文化センターの調査)です。認知症になると、もう少し必要になるかも知れません。ですので、余裕をみて約800万円としました。

また、このお金は、有料老人ホームに入るときの頭金としても使えます。介護がまったく必要ない老後生活が送れるようでしたら、美味しいものを食べたり、旅行費用などに使ったりしてしまえばいいのです。

楽しい老後を暮らすために、考えてみてください。

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