獲得できれば「10年どころか15年間安泰」 侍J井端監督、西武渡辺GMらが語る“ドラフト目玉”

東大戦で安打を放った明大・宗山塁【写真:中戸川知世】

右肩甲骨骨折から早期復帰果たし6打数2安打、通算安打記録更新へ好発進

今秋ドラフトの目玉、明大・宗山塁内野手(4年)が20日、東京六大学野球春季リーグの東大1回戦に「3番・遊撃」で出場。6打数2安打2打点で、21-2の大勝に貢献した。2月末のオープン戦で死球を受けて右肩甲骨を骨折し、当初は今季の出場が危ぶまれていたが、シーズン初戦から元気にフル出場してみせた。スカウト陣をはじめ、詰めかけたプロ関係者も一安心だ。

宗山は3月6、7日の欧州代表戦(京セラドーム大阪)に向けて侍ジャパンのトップチームに招集され、練習にも参加していたが、直前になって骨折していたことが判明。チームにはそのまま帯同したものの、出場はかなわなかった。

この日、神宮球場に足を運び視察した侍ジャパンの井端弘和監督は「怪我明けで(実戦復帰まで)もう少しかかるのではないかと言われていた中で、動きとしては問題なかったのではないか。守備は抜群。打つ方も広角に打てるのが持ち味で、昨年より力強いスイングが増えているのかなと思いました」と感想を述べた。

初回無死一、二塁の先制機での第1打席は中飛に倒れたが、打者一巡して回ってきた2死一、二塁での第3打席では、外角球を逆らわずに三遊間へ打ち返し、左前適時打。2回2死一、二塁での第3打席でも、ピッチャー返しの中前適時打を放った。守っても、ボテボテの遊前のゴロを軽快なランニングスローでさばき、打者走者をアウトにするシーンがあった。

1年生の春季リーグからショートのレギュラーとなった宗山は、この日の2本を合わせ通算96安打。明大・高山俊外野手(前阪神、現オイシックス新潟)が保持する131安打のリーグ歴代最多記録の更新が期待されている。井端監督も「100安打は当然クリアすると思いますし、1本でも多く打って更新してもらえたらいいなと思います」とうなずいた。

3拍子そろった選手であることは周知の事実で、爽やか系のイケメンも見ての通りだが、各球団のスカウトは「宗山くんを獲得できた球団は、ショートは10年間安泰」と口をそろえており、過去にあまり聞いたことがないほど評価が高い。どこがそこまで凄いのだろうか。

広島スカウト統括部長「10年どころか15年間安泰だと私は言っている」

井端監督は「守備の安定感ですよね。派手なプレーもできるし、手堅くも捕れる。大学生にして打球に応じ、いろいろな捕り方ができるところが一番の凄さかなと思います」と評した。自身も現役時代にショートでゴールデン・グラブ賞を7回受賞した名手だけに、渋いところを指摘する。さらに「(プロでも)早い段階から主力を張れる選手だと思います。(阪神、ロッテで活躍した)鳥谷(敬氏)タイプかな」と表現した。

一方、西武の渡辺久信GMは「力があることはわかっている。ドラフト1位クラスであることは間違いない。今日は元気にプレーしているところを見られただけで良かった」とした上で、「いいところが3つあれば“いい選手”と言っていいと思うけれど、宗山くんの場合はそれが5~6個ある感じ。ショートとしての身のこなしとか、キャプテンシーとか、センスとか、マスクとかね」と絶賛した。

広島の苑田聡彦スカウト統括部長は「(宗山を獲得できれば)10年どころか15年安泰だと、私は言っていますよ。今回の骨折は死球によるものだからしかたがありませんが、基本的に怪我をしない選手だと思っていて、そこが大きな魅力です。怪我の多い選手には、それなりに理由がある。宗山くんの場合は体つきにしても、走り方にしてもバランスが良い。たとえば二塁ベース上のタッチプレーでも身のこなしがいい。怪我をしにくいと思います」と見ている。

どれだけ身体能力やセンスに恵まれていても、怪我による離脱が多ければ発揮しきれない。“無事これ名馬”というわけだ。

「(骨折で)野球ができなかった期間も、(練習試合などで)ベンチにはずっと入らせてもらっていて、ベンチからだからこそ、見えてくるものがたくさんありました」と前向きに語った宗山。プロの世界で“無双”ぶりを発揮する日が待ち遠しい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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