新入社員にオススメ! お仕事漫画『NEW GAME!』に学ぶ、チャンスの掴み方

可愛いだけじゃない、読めば身が引き締まる、お仕事漫画の傑作!

年間数百タイトルの漫画を読む筆者が、時事に沿った漫画を新作・旧作問わず取り上げる本連載「漫画百景」。

第二十七景目は『NEW GAME!』です。特に、この春から新入社員として頑張っている方に読んでほしい。今回はそんな本作を紹介します。

得能正太郎による傑作お仕事漫画『NEW GAME!』

『NEW GAME!』は、2013年〜2021年まで、芳文社の漫画誌『まんがタイムきららキャラット』で連載された4コマ漫画です。TVアニメが2期まで放送された人気作となります。

作者は、芳文社の漫画アプリ・COMIC FUZで『IDOL×IDOL STORY!』を連載中の得能正太郎さん。

2023年11月からは、連載時のカラーページを再現し、これまでの単行本・画集には未収録だったイラストと漫画を収録した完全版『NEW GAME! -Complete Edition-』が刊行中です。

ミーム「今日も一日がんばるぞい!」の元ネタ、主人公の涼風青葉

『NEW GAME!』の主人公は、高卒でゲーム制作会社に入社する新入社員の涼風青葉。キャラクターデザイナーを目指す初々しい新人です。

単行本1巻収録の9話にある一コマの「今日も一日がんばるぞい!」という台詞がネットミーム化して、2014年にTwitter(現X)で大流行。コラ画像も大量に生まれたので、本作を未読でも台詞だけ知っている方もいるかも(ちなみにこの台詞、一度だけしか出ません)。

結果、単行本の売上にも大きく貢献した彼女が、先輩たちから多くを学び、努力を重ねて、挫折も味わいながら、立派なクリエイターに成長していく物語になっています。

また、作者・得能正太郎さんが過去にゲーム会社に勤務していたこともあり、ゲーム制作過程における喜びや苦労、トラブルへの対処といった描写には説得力があります。

不測の事態で納期が大幅に狂う展開なんかは原因も含めて本当にリアルで、読んでて「あるよね、そういうこと……」と、少々胃が痛くなりました。

可愛らしい登場人物たちがぶち当たる試練の数々

そんな本作の見どころは、作者・得能正太郎さんが生み出す可愛らしい登場人物たちであることに異論はないでしょう。

無邪気だったり、可憐だったり、溌剌としていたり、みんな実に生き生きとしています。

彼女たちが和気あいあいと良いゲームをつくるために奮闘する群像劇として楽しく読める一方で、馴れ合いだけでは仕事は勤まりません。上司は部下を上手く導かねばならない苦悩があり、部下もついて行くのに必死です。意見が対立することも当然あります。

ゲームをつくるだけではなく、しっかり売って利益を出さなければならない、事業としてのシビアな面も、これでもかと顔を覗かせます。多くの試練が個々人に訪れることになるのです。何度も何度も悔し涙を流す主人公・青葉はその筆頭でした。

本作の一番の見どころは、壁にぶつかる登場人物たち一人ひとりにスポットを当てながら、いかにしてそれを乗り越えていくのかを熱量高く描くところです。

では、以下からネタバレも含む内容となります。未読の方はご注意ください。

準備が大事! チャンスを掴むたった一つの正攻法

『NEW GAME!』を読んでいると常々「仕事は準備が大事!」と思わされます。

仕事でチャンスを掴むためには、いつでも準備万端でいること。これがたった一つの正攻法だと思い知らされるのです。

何を当たり前なことを、と思われるかもしれませんが、常に準備万端でいられる人がどれだけいるのかと言うと、そう多くないでしょう。

本作で登場人物たちに降りかかる試練の数々は、やむを得ない事情でチームから人が抜けるとか、出資会社から一方的に開発を打ち切られるとか、そうした不可避のものを除くと、普段の生活の中でどれだけ準備ができているかで成否がはっきり分かれます。

訪れる機会をチャンスにできるか、ふいにしてしまうか戦う準備ができているか、いないか

例えば、主人公の青葉も最初にキャラクターデザインを任されることになった時は、眼の前の仕事に精一杯で「キャラデザをさせてもらえるってわかってたら…!」なんて言い訳し、苦戦していたものです。

青葉はキャラクターデザイナーを志望しているため、物語の節目には必ずその座を懸けた社内コンペに挑みます。そして、毎回課題を得て成長していきます。

コンペの結果は必ずしも青葉に対してポジティブではなく、役職を勝ち取っても、会社の都合で重要な役割から外される酷な展開もありました。こちらが閉口してしまうほどの苦境に立たされることもあった。

しかし、青葉が落ち込んで歩みを止めることはありません。最後には次の機会に備えて準備する、青葉の前向きな性格は実に主人公らしいです。

主人公の青葉だけじゃない、多くの主役たち

青葉のほかにも、上司の良い企画があれば採用するという軽口を真剣に捉えて、本来企画を考える役職にすらなかったのに真剣にゲームのアイデアを考え出し、大きく飛躍する篠田はじめ

何となく仕事をしていた飯島ゆんは、同期のはじめの向上心に引け目を感じていたところから、勇気を出して一歩前に踏み出し自分なりの役割を見つけます。

人とコミュニケーションが上手く取れない内気な性格を長い時間をかけて変えた滝本ひふみや、一からプログラミングを学んで目覚ましい成長を遂げる桜ねねも、作中で大きく変化していきました。

また、天賦の才を持ち、青葉の前に立ちはだかることにもなる八神コウ星川ほたるも、多大な努力の上に相応の地位を築き上げていったことが明示されています。

描写の濃淡こそあれ、以上に挙げていない登場人物も含めて、全員が漫然と日々を過ごすのではなく、いつか来るチャンスに向けて努力し、準備していたことがはっきりと分かるようになっています。

『NEW GAME!』を新入社員に読んでほしい理由

冒頭で、『NEW GAME!』を特に新入社員の方々に読んでほしいと書いたのは、主人公の青葉が新人の立場から多くの失敗を繰り返して、成長していく物語であることが身近に感じやすいだろうから。

そして、いつ舞い込むかわからないチャンスに備えることの重要性を教えてくれる漫画だからです。

4月も折り返し、今春から働きはじめた新入社員の方も、会社に馴染みはじめてきた頃かと思います。まだまだ新人気分は抜けないとは思いますが、いつどんな形で仕事が振られるかは分かりません。今日か、明日かもしれない

筆者個人の経験で言えば、入社から1ヶ月後にメンターの先輩が急病で倒れて、大勢の前でプレゼンしなければならない機会があり、冷や汗かきまくりで臨んだことがありました。

正直グダグダだったのですが、度胸だけは付きました。同時に仕事に慣れてちょっと余裕が出てきたなぁなんて、お気楽な気分でいたことを後悔したものです。

とまあ、社会に出ると本当に何が起こるか分かりません。油断大敵。慣れてきた時こそ、気を引き締めましょう。

それではご唱和ください……今日も一日がんばるぞい!

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