アメリカ下院、ウクライナ軍事支援案を圧倒多数で可決 近く上院でも可決の見通し

アメリカ連邦議会の下院(定数435)は20日、数カ月に及ぶ膠着(こうちゃく)状態が続いた挙句、ウクライナに追加軍事支援を提供するための緊急予算案を、超党派の賛成多数で可決した。数日中に上院でも可決され、ジョー・バイデン大統領が署名する見通しになっている。

野党・共和党が僅差で多数を占める下院では、ウクライナに608億ドル(約9.4兆円)の軍事支援を提供する予算案を、賛成311、反対112の賛成多数で可決した。

共和党の議員は112人が反対、101人が賛成、1人は出席したうえでの棄権。与党・民主党は、出席した議員210人全員が賛成した。

賛成派の中には、本会議場でウクライナ国旗を振る人たちもいた。

共和党内の強硬右派の一部はウクライナ支援に強く反対し、マイク・ジョンソン下院議長(共和党)を更迭しようとする動きを見せているが、ジョンソン議長はウクライナ支援の重要性を強調し、超党派合意をまとめ上げた。

この日の予算案可決を受けて、

は、「アメリカ下院と両党、とりわけマイク・ジョンソン下院議長が、歴史を正しい道に沿って進ませようと判断したことに、感謝する」とソーシャルメディアに書いた。

「世界にとって常に、民主主義と自由は重要なもので、それを守るためにアメリカが協力し続ける限り、決して失墜しない」とも、ゼレンスキー氏は強調した。

「下院が本日可決したアメリカの支援案は不可欠なもので、戦争の拡大を防ぎ、何万人もの命を救い、両国をさらに強くする」とも、ゼレンスキー氏は書いた。

下院での採決を受けてホワイトハウスは、バイデン大統領の声明を発表。バイデン氏は「私が署名して法律として成立させられるよう」上院が支援予算案を速やかに可決するよう促し、「そうすれば我々は、ウクライナが戦場で喫緊に必要としている武器や装備をすぐに送ることができる」と呼びかけた。

これに対してロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、アメリカがウクライナに軍事援助を提供していることは「テロ活動を直接支援」しているに等しいと批判した。

ロシアは2022年2月にウクライナ全面侵攻を開始。昨年後半からウクライナは武器や人員などの不足から、東部や南部で苦戦を強いられている。最新防空システムの追加提供を西側に要求しているゼレンスキー大統領は、アメリカの軍事支援がなければウクライナは敗北すると再三警告していた。

これに対して共和党では、強硬右派を中心に、外国に資金を送るよりもアメリカとメキシコの国境管理強化と不法移民対策を優先させるべきだとの声が高まったことから、ウクライナ支援が滞っていた。

下院はこの日、ウクライナ支援のほかに、イスラエル支援に264億ドル(約4兆円)、台湾を含むインド太平洋地域に81億ドル(約1.2兆円)の支援を提供する緊急予算案を、それぞれ可決した。イスラエル支援には人道活動支援のための予算が盛り込まれている。

さらに下院は、動画投稿アプリ「TikTok」について、中国の親会社バイトダンスがアメリカでの事業を360日以内に売却しなければ、全米でアプリ配信を禁じる法案を超党派で可決した。下院は今年3月に同種の法案を可決したが、売却期限などについて上院で懸念が出ていたため内容を修正し、今回の外国支援予算案と結び付けて上院に送ることにした。

(英語記事 Ukraine Russia war: US House passes crucial aid deal worth $61bn

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