日本アニメの虜になった海外ファン 1回の旅行費用は? ついつい買い過ぎて「荷物の重量制限に…」

海外のアニメファンによる“推し活”のリアルとは(写真はイメージ)【写真:写真AC】

訪日のきっかけになった作品1位は「ジブリ作品」 意外な実情が判明

世界を席巻している日本のアニメは、海外ファンの目にどう映っているのか。インターネット通販を巡るアンケート調査でアニメ鑑賞や消費行動に関する興味深いデータが判明した。2023年に視聴した好きな作品1位は『葬送のフリーレン』、訪日のきっかけになった作品1位は「ジブリ作品」……。意外な実情が分かった。実際にリアルな声を聞いてみると、新型コロナウイルス禍で家にいる時間が多くなったことからアニメの沼にハマったり、『呪術廻戦』の限定グッズ目当てで訪日客のヘビーユーザーになったり…。「独特で魅力的」「日本のアニメ業界を尊敬しています」と熱い答えが返ってきた。“推し活”も多種多様な海外事情に迫った。(取材・文=吉原知也)

今回、国をまたいだネット通販の総称「越境EC」分野で流通総合サービスを展開するBEENOS株式会社が、同社のサービス「Buyee(バイイー)」の購買データ・消費動向を分析。この中で、「越境ECを利用する海外アニメファン」を対象にしたアンケ―トも実施された。米国、台湾、韓国、シンガポール、マレーシア、英国、フランスのユーザー合計807人が回答した。回答者の年代は10代9%、20代35.2%、30代31.8%、40代16.8%、50代5.8%、60代以上1.4%の内訳だ。

BEENOSの調査結果によると、「何歳から日本のアニメに興味を持ち始めましたか」という質問に、9割以上が10代までに日本のアニメに興味を持ったことが分かった。最初にアニメを視聴した方法は「テレビ」が最多の72%を占めた。現在の視聴方法は、Netflixを筆頭とした配信サービスが主流になっているという。

また、回答者の居住地における「アニメを見ることの位置づけ」については「アニメ好きな特定の人の趣味であるが、アニメ好きを公言することに抵抗はない」が最も多く36%の結果に。「老若男女問わずアニメを視聴するが、視聴される作品のジャンルは年齢によって変化する」(25%)、「アニメを見ることは、ドラマを見たりスポーツ観戦をするのと同じくらい普通のことである」(10%)と合わせ、“アニメ視聴が身近である”という回答が71%になり、海外でもアニメ視聴が一般的に定着している状況が見て取れる。

2023年放送のアニメで最も好きな作品トップ3も判明。『葬送のフリーレン』が首位に輝き、『呪術廻戦』、『SPY×FAMILY』が続いた。「これまで見た中で最も好きなアニメ作品」の1位は『ガンダム』シリーズ、2位は先日亡くなった漫画家・鳥山明さんの代表作『ドラゴンボール』シリーズがランクイン。両作品は特に30、40代の高い支持を集めた。3位は『ONE PIECE』、4位には、世界に根強いコアファンも多い『新世紀エヴァンゲリオン』が入った。

広くアニメ文化に親しむ傾向も。「視聴」以外のアニメの楽しみ方は「グッズ購入」が最多86%、グッズの購入経験は93%がありの結果となった。「ファンアートを鑑賞する」が51%で2位、「コスプレをする」は19%で9位だった。

過去に購入したことのあるグッズ1位はフィギュアで高い人気(84%)が示され、欲しいグッズ1位は衣類・ファッションアイテムが挙がった。また、越境ECを利用する理由は「地元では購入できない商品が欲しい」が最多となり、海外ではグッズ購入にハードルがあり、高いニーズが存在することも浮かび上がった。

最後に、訪日のきっかけとなったアニメ作品。1位を獲得したのは、「ジブリ作品」だ。回答者のほとんどが個別の作品名ではなく「ジブリ」として名前を挙げた。作品の舞台への“聖地巡礼”が話題となった『ラブライブ!』シリーズ(2位)、『ペルソナ』シリーズ(4位タイ)、『ガールズ&パンツァー』(5位タイ)もランクイン。メガヒットを記録した『君の名は。』も4位タイに入り込んだ。

ここで、実際の海外アニメファンにインタビューを実施した。

米国ユーザーの40代男性は、ここ数年でアニメファンになった1人だ。アニメを見始めたきっかけは、ロックダウンによって家にいることの多くなった新型コロナウイルス禍だった。ここ最近の新しい趣味になっており、「日本の60~80年代のアニメを見ているんだ。物語の構成に加えて、ロングランシリーズが独特で魅力的だね」と、日本アニメのとりこになっている理由を語る。

普段、ブルーレイディスクで鑑賞をしているが、NetflixやHuluといった動画配信サービスも活用している。好きなアニメ作品のチョイスはなかなか渋く、「『ベルセルク』、『蒼き流星SPTレイズナー』に加えて、古いジャンルのアニメシリーズを見ているよ。製作会社をたどって他の作品を楽しんでいるんだ」と熱く語る。それに、「そうそう、『新世紀エヴァンゲリオン』の最新作(『シン・エヴァンゲリオン劇場版』)もすごくよかったね」と、エヴァファンであることを明らかにした。

XなどSNSを通してアニメ情報を得ている。友人たちからのオススメも参考に、ネットで調べてアニメを探しているという。米国内のアニメ専門店に通っているが、越境ECのネット通販で「オークションサイトでは売っていないグッズ」を探索。主にアニメのアートブックを買い求めており、他には自身の娘が欲しがるグッズを購入しているとのことだ。

まだ日本への来日経験はないというが、「いつかは家族と一緒に来てみたいね」。現時点で明確な予定はないが、日本旅行ができる日を心待ちにしているという。

台湾ファンが集めた『呪術廻戦』グッズの数々、情熱が伝わる実際の光景【写真:取材者提供】

「1回の旅行で約5万~7万台湾ドル(約23万円~約33万円)程度に抑えるよう努めています」

在宅ワーカーでグラフィックノベル作家でもある台湾ユーザーの30代女性は、かなり熱狂的。『呪術廻戦』の“聖地巡礼”のため何度も日本を訪れている。

両面宿儺(りょうめんすくな)と伏黒恵が好きなキャラクターとのことだ。「呪術廻戦の最初のパートに登場するのは、宿儺の指が入った百葉箱と、指を探しに行く伏黒です。これは典型的な少年漫画に登場する主人公とはかなり異なり、興味深いです。ストーリーの中で、本来自分以外に興味を持たないはずの宿儺が伏黒に何度も『魅せてみろ、伏黒恵』とせりふを言うのは、本当に気になります。興味深くなって伏黒の商品も一緒に購入するようになりました」と語る。

海外では手に入りにくく、なかなか見つからないグッズ収集が趣味。限定のクリアファイルに加えて、JUMP SHOP予約限定のアクリルスタンド、リアル過ぎる両面宿儺の“指フィギュア”などが自慢のコレクションだ。

基本は越境ECでグッズを購入している。2次流通の中古品ながら、“品質のよさ”に満足しているといい、「中古品の状態は非常に新しく、ほとんどの日本人が商品をかなりきれいな状態で保存しているので、私はこの中古品サイトを経由した買い物が大好きです」。一方で、「残念なことに中国の転売の影響により、ウェブサイトや売り手が外国の転送サービスや代行サイトの注文を受け付けていないことがあり、その場合は時々日本の友人に頼む必要があります」と話す。

もともとの親日家。以前は休暇のため、毎年1回、クリスマスから新年まで約3週間滞在していた。アニメ好きが高じて、日本に限定グッズを買うために来日するようになった。何度も日本旅行に訪れるリピーターだ。2023年は仕事と旅行で合わせて4回来日。日本の同人イベントにも定期的に参加している。

呪術廻戦を巡るかなりディープな旅に挑戦したことを教えてくれた。「私は日本の仲間と『宿儺関連の聖地巡礼』を2日間行いました。場所は岐阜県です」。両面宿儺にゆかりがあるとされているスポットを含めて10か所だ。その中で、「『日龍峯寺(にちりゅうぶじ)』と『千光寺』には両面宿儺の像があり、また日龍峯寺では毎年11月の第3日曜日にご開帳が行われ、限定の御朱印が配布されます。千光寺には円空仏寺宝館があります。私たちは御朱印、御朱印帳、御守などを購入しました。呪術廻戦の制作サイドは両面宿儺の原型参考についてどの寺院なのかを特に指摘していませんが、自分で実際に訪れ、“参考になったかもしれない場所”を発見することは非常に面白いプロセスでした。また、ホテルで呪術廻戦の第41話を一緒に観賞し、仲間と交流できることは素晴らしいことでした」と、充実の思い出を振り返る。

世界的にも有名な秋葉原といった超有名スポットにはあまり足を運ばないという。意外な理由を聞くと、「世界中からファンが『聖地巡礼』をしたがるため、秋葉原やコミックマーケットなどにオタクが集まると、かなり恐ろしい状況になります(笑)。新商品を買おうとしても、一斉に売り切れてしまいます」とのことだ。

気になる予算規模は。「購入した商品の総額を計算することはできませんが、旅行費(航空券、宿泊費を含む)は1回の旅行で約5万~7万台湾ドル(約23万円~約33万円)程度に抑えるよう努めています」。それなりの費用をかけているが、日本に来ると財布のひもが緩んでしまうようで、「ついつい買い過ぎて荷物の重量制限に悩まされることがよくあります」。おちゃめな側面も明かした。

4月3日に台湾で大地震が発生。女性は無事で、現在は落ち着いているという。女性は以前からこんな日本旅行の計画を練っている。大型同人誌即売会に参加し、飛行機の国内線で熊本、名古屋、大阪、静岡など各地の(ホビー商品チェーン)駿河屋やポケモンセンターを回り、北海道にも赴き、『ゴールデンカムイ』の撮影地を見に行くという、日本のアニメ・コンテンツ満喫プランだ。台湾の震災復興とともに、女性の夢の実現を願ってやまない。

女性はさらに学びの思いを深めており、「私の日本語力はまだ不十分です。今年、日本語能力試験を受ける予定です。もともとは日本語にあまり興味がなかった私が、アニメのおかげで日本語を学び始めたことは想像もしていませんでした」と自分にもびっくりだ。

日本のアニメをここまで愛する理由とは。

「それはとても面白いからです。アニメを通して、日本のさまざまな世代の心情を見ることができます。日本のアニメ業界に憧れていて、尊敬しています。もっともっといい作品を作っていただければ」とメッセージを寄せた。吉原知也

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