【アナログで聴きたい名盤】「ソウル女王」の声量と歌唱力に絶句しかない

アレサ・フランクリン/貴方だけを愛して(1967)

【アレサ・フランクリン/貴方だけを愛して(1967)】
ソウルの女王、アレサのアトランティック移籍第1弾。コロンビアでポップスを歌っていたアレサが、同社の幹部で名プロデューサー、ジェリー・ウェクスラーに引き抜かれソウルシンガーに転じた歴史的作品だ。

表題曲はアラバマのサザンソウルの“聖地”フェイム・スタジオで録音された。声量と歌唱力、迫力は絶句するしかない。声量が当時の簡素な機材のリミッターを超えて音割れを起こしているのだ。針を溝に落としスピーカーから音が出てくるというほとんど生に近い作業だけに、同じ空間の目前でアレサが叫んでいるような生々しい音に思わず息をのんでしまう。

様々な問題があって他の多くの曲はニューヨークで録音されるのだが、表題曲の録音時のスタジオの張り詰めた緊張感と臨場感は、ウェクスラーの自伝「私はリズム&ブルースを創った~ソウルのゴッドファーザー自伝」に生々しく記されている。こちらも好著である。

同曲はビルボードのR&Bチャート1位。アルバムは全米2位となった。オーティス・レディングの名曲をカバーした冒頭を飾る「リスペクト」は全米1位を獲得。「レディ・ソウル」の幕開けとなった歴史的な1枚だった。フォーマットに関係なくとにかく聴いてほしい。ここからアリサは大傑作を次々に生み出して「ソウルの女王」になっていく。

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