広島市佐伯区の40代女性は2月、中学校であったPTAの役員決めの場ではっとした。会長から、新年度はPTAに加入しないこともできると説明されたからだ。「役員に選ばれても辞退できます」とまで言われた。
本音では、入りたくない。役員になると負担だ。それだけではない。新年度予算に「保護者のスポーツ活動費」など、一見子どもに関係がなさそうな項目があったのも気になった。ただ、「子どもが学校で安心して過ごせるだろうか」と思い直し、「退会届」は出していない。
PTAに入らなかったら、不利益が生じるのだろうか。「どんな場面でも不利益はない」。西区の天満小PTAの宮原千晶会長(46)は言い切る。4年前から「入退会自由」を明言し、オンラインでも退会を受け付ける。実際に退会する家庭は年10件ほどある。
同小PTAは「会費は学校の教育活動全体を支えるもの」という考えだ。非加入家庭の子どもにも、1人1台配備されるタブレット端末のタッチペンなどを配る。「会員が減ってPTAの資金が少なくなれば、支援対象を絞るのではなく、支援内容をグレードダウンすればいい」と話す。
3月に初めて意思確認をした東区の牛田小PTAも、子どもは不利益を被らないと明言する。大中幹夫会長(48)は「子どもは平等が原則」と強調する。非加入家庭の児童にも、卒業証書入れなどは配る方針だ。
一方で、加入か非加入かで区別しているPTAが尾道市にある。2年前に意思確認を始めた高須小だ。規約に「非会員の児童は、会員の児童と同等の福利厚生的恩恵を必ずしもすべて受けられるものではない」と明記する。非加入家庭の子どもに対し、会費で購入した図書などの利用やPTA行事の参加は認めるが、入学卒業時の記念品などは実費負担を求める。
工藤孝之会長(45)は「全て同じにすると、非加入が増え活動が成り立たなくなってしまう。ただ、児童には最大限の配慮はしている」と理解を求める。
保護者はどうすべきなのか。PTAに関する著書が多数あるライター大塚玲子さん(52)=千葉県=は「みんな入会しているから」「あの人が退会しているから」という理由で決めるのではなく、「自分がやりたいかどうか」を判断の軸にした方が良いという。
近年はPTA改革が進み、かつてほどの負担はない場合もある。イメージや人の話にとらわれず「今のPTA」「自分の学校のPTA」を知ろうとする姿勢が大事と説く。会員減少を心配するPTAには「本当にやる気のある人が出てくる。組織を活性化するチャンス」と、逆転の発想を呼びかける。