羨ましい!と思いきや…「親がタワマンを持っている人」に待ち受ける“2030年以降”の悲劇【マンショントレンド評論家が警告】

(※写真はイメージです/PIXTA)

富裕層やパワーカップルといった実需に加えて、国内外の投資家の影響もあり価格高騰が続く都心のタワーマンション(タワマン)。タワマン人気は衰えませんが、『60歳からのマンション学』(講談社)の著者でマンショントレンド評論家の日下部理絵氏は、近い将来「高齢の親がタワマンを持っている人」に待ち受ける“恐ろしい未来”について警告します。詳しくみていきましょう。

投資家、高齢者…高騰しすぎな首都圏のマンションを“いま”買う人

不動産経済研究所によると、2023年に発売された首都圏の新築マンションの平均価格は8,101万円。東京23区に限れば前年比39.4%上昇の1億1,483万円と、初めて1億円を超えた。

歴史的な低金利と供給不足を背景に、1億円を超える「億ション」の発売が相次ぎ、バブル期のピーク6,123万円をも上回る。勢いはほかの大都市や中古物件にも広がっている。

一方で、国税庁の2023年9月発表「民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は458万円。世帯の平均年収は1995年をピークに下がったままで回復していない。いったいどうやって家を買えばよいのか。いま高騰している首都圏のマンションを誰が買っているのか気になるのではないか。主に次の層が購入しているとされる。

1.国内外の投資家による「投資」

転売業者を含めた国内外の投資家。なかには転売規制がある物件もあるが、転売目的で業者がまとめて買って、何年か後に転売。例えば都市部のタワマンやHARUMI FLAG(晴海フラッグ)などがターゲットにあげられる。

2.パワーカップルの「実需」

世帯年収1000万円を超えるような、いわゆるパワーカップル。より高騰しているため、夫婦ともに上場企業に勤めるような、世帯年収で1,500万円とか2,000万円の超パワーカップルが実需で購入。

3.地方の富裕層の「資産」

地方の富裕層が資産として購入。東京に資産が欲しいと思った時、東京都中央区のアドレスでありながら、ある程度まとまった物件数を手に入れられるHARUMI FLAGなどは、地方の富裕層も、関心が高いとされる。

4.高齢者の「相続対策」

高齢者の富裕層が増えており、相続対策として購入。昔はアパートだったが、いわゆる「タワマン節税」狙い(マンションの時価と評価額の差額を利用して節税する)で人気を博していた。しかし、2024年1月1日以降の相続、贈与よりマンションの相続税評価額があがり、節税効果が小さくなったといわれる。

一世を風靡した「タワマン節税」とは

タワマン節税とは、相続税評価額と購入価額(時価)の開きがあることが多く、この開差を利用した節税方法。

被相続人(亡くなった人)の財産の価格は、国税庁が定める評価基準(財産評価基本通達)によって決められ、この金額を相続税評価額と呼ぶ。この評価額が高いほど相続税が高くなり、評価額が低いと税額は低くなる。

そのため、相続税を低くしたいなら、あらかじめ持っている財産の評価額を低くしておくといい。この評価額を低くするための方法として、タワマンが購入されていたというわけだ。

10年ほど前にブームになり、税制改正で高層階になるほど固定資産税率が上がるようになったが、それでも節税効果はあったため、節税を目的に買われていた。

マンション購入目的の主流は「投資・転売・節税」

見切りをつけられたタワマンは、一気に「腐動産」コースへ

このように、タワマンは実需というよりは、投資・転売・節税の標的になりやすい。価格は需要と供給に左右されるが、特に国内外の投資家のうち、海外投資家は見切りを付けたら一斉にあっという間に市場から引いてしまう。買い替えなどこれから売却を検討している人は、為替相場などにも注視していただきたい。

また、タワマンを投資目的で買った人と、永住目的で買った人では、意識に大きな違いがある。資産価値を維持するには今後大きな課題となっていく。

親が組んだ高額ローンが返せない…「タワマン相続難民」が溢れる未来

日本の不動産マーケットを支える「富裕高齢層」

いま高騰している歪な日本の不動産マーケットを、投資・転売目的以外で支えているのは、日本の富裕層である。日本の富裕層は、高齢者がほとんどで相続税対策としてマンションやアパートを所有している。

しかし、これから大きな問題が起きそうなのである。

それは、相続人に相続されたあとも借入金は残っているため、借金であるローンをきちんと返せる運用ができるかどうか。

相続したマンションやアパートを、上手に運用したり、売却して高く売り抜けたりできたらセーフだが、資産価値が下がってしまうとローンすら返せなくなってしまう。親が節税のために良かれと思ってやったことが、相続人である子供が、親が組んだ高額ローンの返済に困ってしまう。

つまり、資産価値が保たれ、出口(エグジット)で借入金が返せるということが大前提なため、このシナリオが崩れると、次の世代で借金が返せず破産なんてことも考えられるわけだ。

皮肉な言い方をすると、親は相続を考えるほどの高齢なので、そう遠くない先に亡くなる。いま金融資産の多くが高齢者に偏っており、税金対策が盛んだが、人口のボリュームが多い団塊の世代が所有する不動産などが一斉に売りに出る可能性が高い。

そうなると、需要と供給のバランスが崩れ資産価値が下がってしまう。せめて借金返済分だけでも賃料が取れればいいが、いま日本の不動産マーケットは、投資・転売・節税目的も多く必ずしも実需で成り立っていないので、賃料も下がる可能性がある。

そのため、2030年以降は相続難民が溢れる可能性があるのだ。

要注意!絶対に避けたい「金食いタワマン」の特徴5つ

羨望のまなざしが向けられるほど人気のタワマンだが、次の特徴があるタワマンはやめておいたほうが無難だ。。

・細長いなど戸数が少ないタワマン

・デザイン性が高いなど歪な形状をしている

・戸数の割に維持費がかかるスパやプール、カラオケ施設などがある

・タワー式などの機械式駐車場があり、しかも空きが多い

・24時間有人管理でスタッフ数が多い

これらは「金食いタワマン」である。このように、タワマンと一言でいってもいろいろある。親世代がこのような特徴のタワマンを所有しているなら、早めの対策を講じたい。

老後に“ババタワマン”を引くと老後破産しかねないため、注意したいものである。

日下部 理絵
マンショントレンド評論家
オフィス・日下部 代表

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